《法規》〈電気施設管理〉[R02:問4]変電所の保守の動向に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,変電所の保守の動向に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

変電所の保守の目的は,変電所の電気工作物が常に法令で定める技術基準に適合するように,その性能を維持し,事故の未然防止を図ることである。そのため,変電所の設置者は,機器の構造や性能を熟知し,巡視・点検などの実施により,機器の性能維持及び回復を図り,不良箇所の早期発見に努めている。

機器の保守は,かつては主に,事故が発生した場合に対応するという\( \ \fbox {  (1)  } \ \)保全の考え方がとられてきたが,現在は,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)ごとに巡視・点検,部品交換,補修などを実施し,突発事故を防ぐ保守・点検(\( \ \mathrm {Time \ Based \ Maintenance \ : \ TBM} \ \))が取り入れられ,機器の信頼性維持に寄与してきている。

さらに最近の動向として,
a) 設備量の増加に対し,限られた保守要員で設備保全をするため,保守業務の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)や省力化が図られ,また,高信頼度で長寿命の機器が採用される傾向にある。
b) 品質管理の向上,技術革新などに伴う設備の高信頼度化及び保守技術の進歩により,事故や故障が減少し,また寿命が長くなっているため,機器の信頼度に即した点検周期の採用,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の評価方法の開発が進められている。
c) 機器の密閉化やブラックボックス化に対応し,センサー技術の進展なども取り入れ,故障個所を早期に発見して除去し,さらに設備の劣化度を\( \ \fbox {  (5)  } \ \)するための技術向上への取り組みが進められている。

これらにより,機器の状態や将来起こりうる事態を予測し,必要に応じてメンテナンスを実施する保守・点検(\( \ \mathrm {Condition \ Based \ Maintenance \ : \ CBM} \ \))が取り入れられるようになってきている。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 運転効率       &(ロ)& 予定     &(ハ)& 診断 \\[ 5pt ] &(ニ)& 設置環境     &(ホ)& 事後     &(ヘ)& 予防 \\[ 5pt ] &(ト)& 余寿命     &(チ)& 自由化     &(リ)& 簡略化 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 保守費用     &(ル)& 効率化       &(ヲ)& 負荷設備 \\[ 5pt ] &(ワ)& 一定期間     &(カ)& 解消     &(ヨ)& 維持 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

変電所の保守の方法に関する問題です。
保守業務に関しては,かつてはマンパワーを投じて行っていました。問題文にもある通り,機器の性能向上や自動化・電子化等も合わさり,近年は保守要員をできるだけ削減し,コストダウンが図られるようになってきた印象があります。
\( \ \mathrm {2} \ \)種ではありますが,平成29年平成26年に点検に関する問題が二次試験で出題されているので合わせて見ておくと良いと思います。
今後\( \ \mathrm {AI} \ \)の技術が進展しさらなる省力化が図られ,本問の知識も過去のものとなってしまう可能性がある(高い)ので,時代の変化は常に注視していく必要があるかと思います。

1.各保全方式の概要
①\( \ \ \mathrm {BM} \left( \mathrm {Breakdown \ Maintenance }\right) \ \)
 機器に故障が発生した場合に保全・補修対応をする方式です。
②\( \ \ \mathrm {TBM} \left( \mathrm {Time \ Based \ Maintenance }\right) \ \)
 一定期間毎に巡視・点検,部品交換,補修などを実施し,突発事故を防ぐ方式です。変電所では決められた期間毎に定期点検を行っていますが,主に外部から点検を行う普通点検と機器を分解して点検を行う精密点検があります。
③\( \ \ \mathrm {CBM} \left( \mathrm {Condition \ Based \ Maintenance }\right) \ \)
 機器の劣化状況を監視して,機器故障に至る最適なタイミングで保全・補修を行う方式です。センサーや\( \ \ \mathrm {IoT} \ \)の技術により,今後益々発展していく可能性がある方式であると思います。

【解答】

(1)解答:ホ
題意より,解答候補は,(ロ)予定,(ホ)事後,(ヘ)予防,等になると思います。
問題文に「事故が発生した場合に対応する」となっているので,ワンポイント解説「1.各保全方式の概要」の通り事後保全となります。文脈からもある程度類推可能かと思います。

(2)解答:ワ
題意より,解答候補は,(ニ)設置環境,(ヌ)保守費用,(ヲ)負荷設備,(ワ)一定期間,等になると思います。
負荷の状態や設置環境等確かに個別に検討する必要はあるかもしれませんが,問題文に「\( \ \mathrm {Time \ Based \ Maintenance \ : \ TBM} \ \)」と記載があるので,ワンポイント解説「1.各保全方式の概要」の通り一定期間が適当となります。この選択肢も文脈から類推可能かと思います。

(3)解答:ル
題意より,解答候補は,(チ)自由化,(リ)簡略化,(ル)効率化,になると思います。
設備量の増加に対し限られた保守要員で同レベルの巡視・点検を行う必要があるので,最も適切なのは効率化となります。簡略化だと,巡視・点検のレベルを下げる意味合いになってしまうかと思います。

(4)解答:ト
題意より,解答候補は,(イ)運転効率,(ト)余寿命,(ヌ)保守費用,等になると思います。
現実的には運転効率や保守費用の最適化等を検討する必要はあるとは思いますが,問題文の文章や保守の観点からすれば余寿命が最も適切かと思います。設備を扱う方であれば,余寿命診断等はよく使用する用語かと思います。

(5)解答:ハ
題意より,解答候補は,(ハ)診断,(カ)解消,(ヨ)維持,等になると思います。
いずれも重要な内容ではありますが,劣化を解消することは現実的に難しく,通常使用していても経年劣化は進行していくと考えられるので,最も適当なのは劣化度を診断するための技術向上が適切かと思います。



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