《法規》〈電気施設管理〉[R03:問6]電力系統に発生する瞬時電圧低下のメカニズムとその影響に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,瞬時電圧低下に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

瞬時電圧低下は,電力系統に発生する事故等が原因で瞬間的に電圧が低下する現象を言い,略して「瞬低(しゅんてい)」と呼ばれることがある。事故は落雷や風雪害など自然現象によるものが多く,電圧低下の継続時間は\( \ \fbox {  (1)  } \ \)ミリ秒から数百ミリ秒が大半だが,最も長い場合では数秒程度に及ぶ場合がある。なお,電圧低下レベルは,事故点(落雷地点等)との近接度合いによって異なり,定格電圧に対する残存電圧の割合が\( \ 0 \ % \ ~ \ 20 \ % \ \)は短時間停電とみなす場合がある。

落雷による瞬低の例では,①「雷の発生」→②「送電線への落雷」→③「送電線に\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が発生」,その結果,瞬低が生じ需要家負荷機器等に影響が発生するという過程をたどる。これに伴って,電力系統では,次の④以降のような動作が自動的に行われる。

①→②→③→④「保護リレーが\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を検出」→⑤「送電線両側の遮断器を開放し事故箇所を除去」→⑥「\( \ \fbox {  (2)  } \ \)解消後に送電線を\( \ \fbox {  (3)  } \ \)」。

したがって,③から\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の間が瞬低の継続時間となる。

瞬低による負荷機器への影響については,誤操作や停止などの影響を受ける例としてコンピュータが知られており,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)などのバックアップ電源に必要性が指摘されている。また,パワーエレクトロニクス装置の停止による工場生産設備の停止等も影響の大きい事例である。

送電設備における雷対策の代表例は,架空地線の設置である。電力線よりも上部に架空地線を張って\( \ \fbox {  (6)  } \ \)することで,電力線への雷の直撃を防いでいる。通常,架空地線に落ちた雷撃電流は,鉄塔の塔脚接地抵抗を経て大地に流出し電力線へ影響を与えることはほとんどないが,まれに大きな雷撃電流が流れた場合は,架空地線や鉄塔の電位が上昇し,そこから電力線に向けて\( \ \fbox {  (7)  } \ \)が起きることがある。ひとたび通電経路が形成されると,雷撃終了後も\( \ \fbox {  (8)  } \ \)から故障電流が流れ続ける場合があるので,送電線の両端の遮断器を開放する必要がある。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 逆フラッシオーバ     &(ロ)& ⑥     &(ハ)& 遮へい \\[ 5pt ] &(ニ)& 隠ぺい     &(ホ)& フラッシバック      &(ヘ)& 雷雲 \\[ 5pt ] &(ト)& \mathrm {SVC}(無効電力補償装置)        &(チ)& 露出     &(リ)& 数十 \\[ 5pt ] &(ヌ)& バフェッティング     &(ル)& 数     &(ヲ)& 電源 \\[ 5pt ] &(ワ)& \mathrm {UPS}(無停電電源装置)     &(カ)& 地絡     &(ヨ)& ④ \\[ 5pt ] &(タ)& 切り替え     &(レ)& 大地     &(ソ)& ⑤ \\[ 5pt ] &(ツ)& \mathrm {AVR}(自動電圧調整器)     &(ネ)& 再閉路     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

送電線の瞬時電圧低下に関する問題です。
電気施設管理というよりは電力科目寄りの問題ですが,電気施設管理においても本問のように電力科目の内容が出題されることがあります。
難易度はそれほど高くない内容ですので,二次試験に出題されても答えられるよう準備しておきましょう。

1.瞬時電圧低下
瞬時電圧低下とは,落雷などにより電力系統に事故が発生した際に事故点を中心に電圧が低下して事故点を電力系統から切り離すまでの間,電圧低下が発生することを言います。
具体的には,落雷などで一線地絡事故が生じた際に保護リレーが動作し当該送電線の遮断器を開放して事故除去するまでの約数十~数百\( \ \mathrm {ms} \ \)程度の時間を指し,事故点に近いほど電圧降下が大きくなります。
瞬時電圧低下の影響のある機器は,コンピュータ(\( \ \mathrm {UPS} \ \)(無停電電源装置)のない場合),サイリスタ式可変速電動機,高圧放電ランプ,リレー(整定時間が短い場合)等があります。

2.架空地線
<架空地線の役割>
架空地線は電線の上部、主に鉄塔の一番上に設ける裸電線で,以下のような役割があります。
①送電線への直撃雷を防止する。
②誘導雷(雷雲の電荷により反対の電荷が電線に現れ,落雷により雷雲の電荷がなくなるために電線で大きな電荷の移動が起こる現象)を軽減する。
③通信線への電磁誘導障害を軽減する。

<架空地線落雷時の対策>
架空地線や鉄塔に落雷した際の逆フラッシオーバに対する対策として,以下のような対策が取られます。
①埋設地線で鉄塔と大地の接地抵抗を小さくする。
②アークホーンでがいしの損傷を防止する。(逆フラッシオーバ自体の対策ではありません。)
③2回線送電線におけるがいしの連結個数に差をつけて,両回線同時事故を防ぐ。

【解答】

(1)解答:リ
題意より解答候補は,(リ)数十,(ル)数,になると思います。
ワンポイント解説「1.瞬時電圧低下」の通り,瞬低の継続時間はリレーが動作し遮断器を動作させる時間までの時間なので数十ミリ秒から数百ミリ秒程度となります。

(2)解答:カ
題意より解答候補は,(イ)逆フラッシオーバ,(ホ)フラッシバック,(ヌ)バフェッティング,(カ)地絡,等になると思います。
ワンポイント解説「1.瞬時電圧低下」の通り,最も適当なのは地絡となります。仮にフラッシオーバという選択肢があればそれも正答になり得ますが,逆フラッシオーバやフラッシバックは正答とはなりません。

(3)解答:ネ
題意より解答候補は,(タ)切り替え,(ネ)再閉路,等になると思います。
落雷による地絡は一過性のものであるため,地絡解消後に再閉路することで問題なく送電できる場合がほとんどとなります。

(4)解答:ソ
題意より解答候補は,(ロ)⑥,(ヨ)④,(ソ)⑤,になると思います。
ワンポイント解説「1.瞬時電圧低下」の通り,瞬時電圧低下は事故点を中心に電圧が低下して事故点を電力系統から切り離すまでの間に発生する現象なので,瞬低の継続時間は③からの間となります。

(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(ト)\( \ \mathrm {SVC} \ \)(無効電力補償装置),(ワ)\( \ \mathrm {UPS} \ \)(無停電電源装置),(ツ)\( \ \mathrm {AVR} \ \)(自動電圧調整器),等になると思います。
瞬時電圧低下を防止するために設置する物は\( \ \mathrm {UPS} \ \)(無停電電源装置)です。本問ではいずれも日本語名が記載されていますが,日本語名なしでも答えられるようにしておきましょう。

(6)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)遮へい,(ニ)隠ぺい,(チ)露出,等になると思います。
ワンポイント解説「2.架空地線」図1の通り,用語として最も適当なのは遮へいで架空地線と電力線を結んだ線と鉛直線とのなす角を遮へい角といいます。

(7)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)逆フラッシオーバ,(ホ)フラッシバック,(ヌ)バフェッティング,(カ)地絡,等になると思います。
ワンポイント解説「2.架空地線」の通り,架空地線や鉄塔から電力線に過電圧が進入する現象を逆フラッシオーバといいます。

(8)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)雷雲,(ヲ)電源,(レ)大地,等になると思います。
一旦通電経路が形成されると,故障点はとても電流が流れやすい環境が形成されているので,雷撃が終了しても電源からの電流が流れ続ける場合があります。したがって,遮断器を一旦開放することが必要となります。



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