《機械》〈変圧器〉[R05:問2]変圧器の冷却方法の種類や特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,変圧器の冷却に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

変圧器に入力する電力の一部は,変圧器の内部で損失となり熱に変わる。この熱による温度上昇は絶縁物の劣化等につながるため,温度上昇を抑制する観点から冷却は必要である。

変圧器の冷却方式には容量や使用環境によって種々の方式がある。巻線及び鉄心の冷却媒体により方式を大きく分けると,空気(大気)を使用する\( \ \fbox {  (1)  } \ \)式,絶縁油を使用する油入式,及び,不燃性,非爆発性を必要とする場所に設置するための不活性ガスを使用するガス冷却式がある。

油入変圧器では,変圧器本体を絶縁油に浸し,巻線の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を高めるとともに,冷却によって本体の温度上昇を抑制する。絶縁油に必要な条件は,化学的に安定であること,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)点が高いこと,流動性に富み冷却効果が大きいことなどである。

大形の油入変圧器では,負荷変動や外気の温度変化に伴い油の温度が変動し,油が膨張・収縮を繰り返すため,外気が変圧器内部に出入りを繰り返す。これを変圧器の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)作用という。\( \ \fbox {  (4)  } \ \)作用により油が劣化する主な原因は,空気中の水分の混入と,油と空気との接触により生じる酸化作用である。この劣化を防止するため,本体の外部にブリーザや\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を設ける。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 凝固     &(ロ)& 引火     &(ハ)& 三重 \\[ 5pt ] &(ニ)& 乾     &(ホ)& 熱伝導率      &(ヘ)& 圧縮 \\[ 5pt ] &(ト)& ブッシング     &(チ)& 気中     &(リ)& 排気 \\[ 5pt ] &(ヌ)& コンサベータ       &(ル)& 抵抗温度係数       &(ヲ)& 伸縮 \\[ 5pt ] &(ワ)& 絶縁耐力     &(カ)& ベンチレータ     &(ヨ)& 呼吸 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

変圧器の冷却方式とその特徴に関する問題です。
設備自体が安価であることから,油入変圧器は大容量の変圧器にも多く採用されていますので,本問もほぼ油入変圧器の内容を問う問題となっています。ぜひ現場を見る機会があれば各機器を見るようにして下さい。

1.変圧器の冷却方式
変圧器の冷却方式には用いる冷媒により,乾式,油入式,ガス冷却式等があります。

①乾式
絶縁油等の冷却媒体を使用せず,空気で冷却する方式です。
省スペースとなりメンテナンスも容易ですが,冷却効果は小さいため,大容量の変圧器には冷却ファン等の装置が必要となります。

②油入式
絶縁油で冷却する方式です。
高い絶縁性能を持ち,冷却効果も高いため,大容量の変圧器にも採用されています。ただし,絶縁油は引火する危険性があり,経年劣化するため定期的な交換が必要です。また,重量も重くなってしまいます。

③ガス冷却式
不活性ガス(\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガス)を用いて冷却する方式です。
油入式よりも安全性が高く,軽量化が可能という特徴があります。
絶縁油を使用しないことから広義には乾式に分類されることもあります。

2.絶縁油に求められる特性
絶縁油は変圧器やコンデンサ等の電気機器に多用途に使用されるため,高い信頼性と安全性が求められます。石油を精製して作られる鉱物油が主に利用されていますが,近年では可燃性であることや水分や空気等に触れることで経年劣化すること,環境負荷が大きいこと等から,難燃性でより劣化しにくい合成絶縁油や,環境負荷の少ない植物油等も採用されてきています。
 ① 絶縁耐力が大きいこと
 ② 耐熱性に優れていること
 ③ 経年劣化しにくいこと
 ④ 粘度が低く,流動性が良いこと
 ⑤ 放熱性が良いこと
 ⑥ 化学的に安定であること
 ⑦ 引火点や発火点の温度が高いこと
 ⑧ 誘電損(誘電正接)が小さいこと

3.変圧器の呼吸作用
変圧器に使用される絶縁油は温度上昇等により膨張収縮を繰り返すため,圧力の逃がし場所を設ける必要があります。
しかしながら,そのまま外気に触れると絶縁油が酸化劣化してしまうため,変圧器本体とは別にコンサベータという油の膨張室を設けます。
コンサベータ内の油と空気はゴム隔膜で絶縁されているため,直接触れ合うことがなく絶縁油の劣化が防止できます。
また,コンサベータ内の結露を防ぐ目的で,空気の吸気口には吸湿材(シリカゲル)を配置できるブリーザを設けます。

【解答】

(1)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)乾,(チ)気中,(リ)排気,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変圧器の冷却方式」の通り,空気を使用する冷却方式を式といいます。

(2)解答:ワ
題意より解答候補は,(ホ)熱伝導率,(ル)抵抗温度係数,(ワ)絶縁耐力,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変圧器の冷却方式」及び「2.絶縁油に求められる特性」の通り,絶縁油により高めることができるのは絶縁耐力となります。

(3)解答:ロ
題意より解答候補は,(イ)凝固,(ロ)引火,(ハ)三重,等になると思います。
ワンポイント解説「2.絶縁油に求められる特性」の通り,絶縁油に必要な条件は引火点が高いことです。

(4)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヘ)圧縮,(ヲ)伸縮,(ヨ)呼吸,等になると思います。
ワンポイント解説「3.変圧器の呼吸作用」の通り,油の温度が変動することで油が膨張・収縮を繰り返し,外気が変圧器内部に出入りをすることを変圧器の呼吸作用といいます。

(5)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ト)ブッシング,(ヌ)コンサベータ,(カ)ベンチレータ,になると思います。
ワンポイント解説「3.変圧器の呼吸作用」の通り,油の劣化を防止するために本体の外部に設けるものはコンサベータとなります。



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