【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
図に示すフィードバック制御系について,次の問に答えよ。ただし, R(s) は目標値, Y(s) は制御量, E(s) は制御偏差, Z(s) は積分器の出力であり,時間信号 r(t) , y(t) , e(t) , z(t) をそれぞれラプラス変換したものである。また, K1 , K2 は定数である。
(1) 目標値 R(s) から制御量 Y(s) までの伝達関数 TYR(s) を求めよ。
(2) TYR(s) を二次遅れ要素の標準形で表したときの減衰係数を ζ=0.5 ,固有角周波数を ωn=10 rad/s とするための K1 , K2 の値を求めよ。
(3) 目標値 R(s) から制御偏差 E(s) までの伝達関数 TER(s) を求めよ。このとき,小問(2)の K1 , K2 を用いよ。
(4) 小問(3)の結果を用いて,目標値 R(s) を単位ランプ変化させたときの定常速度偏差 ev をラプラス変換の最終値の定理を適用して求めよ。
(5) 小問(3)の結果を用いて,目標値 R(s) を単位ランプ変化させたときの制御偏差の時間応答 e(t) を計算せよ。その上で, e(∞) を求め,小問(4)で求めた ev と一致することを確かめよ。

【ワンポイント解説】
フィードバック制御系に関する問題です。
伝達関数を導出して,二次遅れ標準形と比較したり,最終値の定理を使用する等 1 種の自動制御の問題としては珍しいオーソドックスな問題でした。
ぜひ本問は完答を目指すようにしましょう。
1.基本的なラプラス変換
f(t) のラプラス変換を F(s) とすると以下のような関係があります。
f(t)F(s)δ(t)単位インパルス関数1u(t)単位ステップ関数1sKKst1s2eat1s−asinωtωs2+ω2 cosωt ss2+ω2
2.減衰係数 ζ と固有角周波数 ωn
二次遅れの伝達関数 W(s) の一般式は,減衰係数 ζ ,固有角周波数 ωn とすると,
W(s)=ω2ns2+2ζωns+ω2n
で表されます。
3.最終値の定理
f(t) のラプラス変換を F(s) とすると, f(t) の定常値は,
limt→∞f(t)=lims→0sF(s)
で求められます。
【解答】
(1)目標値 R(s) から制御量 Y(s) までの伝達関数 TYR(s)
問題図における R(s) , Y(s) , E(s) , Z(s) の関係式は,
R(s)−Y(s)=E(s) ・・・・・・・・・ ①K1sE(s)=Z(s) ・・・・・・・・・ ②{Z(s)−K2Y(s)}1s+1=Y(s) ・・・・・・・・・ ③
となり, ① を ② に代入すると,
K1s{R(s)−Y(s)}=Z(s) ・・・・・・・・・ ②′
となるので, ②′ を ③ に代入して整理すると,
[K1s{R(s)−Y(s)}−K2Y(s)]1s+1=Y(s)K1s{R(s)−Y(s)}−K2Y(s)=(s+1)Y(s)K1{R(s)−Y(s)}−K2sY(s)=s(s+1)Y(s)K1R(s)=s2Y(s)+sY(s)+K1Y(s)+K2sY(s)K1R(s)={s2+(K2+1)s+K1}Y(s)Y(s)R(s)=K1s2+(K2+1)s+K1TYR(s)=K1s2+(K2+1)s+K1
と求められる。
(2)減衰係数を ζ=0.5 ,固有角周波数を ωn=10 rad/s とするための K1 , K2 の値
(1)解答式を二次遅れ標準形と比較すると,ワンポイント解説「2.減衰係数 ζ と固有角周波数 ωn 」の通り,
2ζωn=K2+1=10K2=9ω2n=K1=100
と求められる。
(3)目標値 R(s) から制御偏差 E(s) までの伝達関数 TER(s)
(1)解答式より,
Y(s)=K1s2+(K2+1)s+K1R(s)
であるから,これを ① に代入して整理すると,
R(s)−K1s2+(K2+1)s+K1R(s)=E(s)s2+(K2+1)ss2+(K2+1)s+K1R(s)=E(s)E(s)R(s)=s2+(K2+1)ss2+(K2+1)s+K1TER(s)=s2+(K2+1)ss2+(K2+1)s+K1
となるので,これに K1=100 , K2=9 を代入すれば,
TER(s)=s2+(9+1)ss2+(9+1)s+100=s2+10ss2+10s+100
と求められる。
(4)目標値 R(s) を単位ランプ変化させたときの定常速度偏差 ev
(3)解答式より,
E(s)=s2+10ss2+10s+100R(s)
であり,ワンポイント解説「1.基本的なラプラス変換」の通り,ランプ関数のラプラス変換は 1s2 であるから,
E(s)=s2+10ss2+10s+100⋅1s2=s+10s3+10s2+100s ・・・・・・・・・・・・ ④
となる。これに最終値の定理を適用させ定常速度偏差 ev を求めると,ワンポイント解説「3.最終値の定理」の通り,
limt→∞e(t)=lims→0sE(s)=lims→0(s⋅s+10s3+10s2+100s)=lims→0(s+10s2+10s+100)=0.1
と求められる。
(5)目標値 R(s) を単位ランプ変化させたときの制御偏差の時間応答 e(t) 及び e(∞)
④ について,部分分数分解をするため,
s+10s3+10s2+100s=As+Bs+cs2+10s+100
とおき,右辺を計算していくと,
As+Bs+Cs2+10s+100=A(s2+10s+100)+s(Bs+C)s3+10s2+100s=(A+B)s2+(10A+C)s+100As3+10s2+100s
となるので,係数比較すれば,
A+B=010A+C=1100A=10
であるから, A=0.1 , B=−0.1 , C=0 となる。よって,
E(s)=0.1s−0.1ss2+10s+100=0.1s−0.1s(s+5)2+75=0.1s−0.1(s+5)−0.5(s+5)2+75=0.1s−0.1(s+5)(s+5)2+75+0.5(s+5)2+75=0.1s−0.1(s+5)(s+5)2+(5√3)2+0.1√3⋅5√3(s+5)2+(5√3)2=0.1{1s−s+5(s+5)2+(5√3)2+1√3⋅5√3(s+5)2+(5√3)2}
となるから,逆ラプラス変換すると,ワンポイント解説「1.基本的なラプラス変換」の通り,
e(t)=0.1(1−e−5tcos5√3t+1√3e−5tsin5√3t)
と求められる。また,上式より e(∞) は,
e(∞)=limt→∞{0.1(1−e−5tcos5√3t+1√3e−5tsin5√3t)}=0.1×(1−0+0)=0.1
となり,(4)で求めた ev と一致する。