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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
特別高圧\( \ \left[ \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ ~ \ 66 \ \mathrm {[kV]} \ \right] \ \)の地中ケーブルを用いて送電を行うときの設計上の留意点を充電容量,放熱及び地中ケーブルの絶縁の観点から,架空線で同様の送電を行うときと比較して記述すると共に,その対策を述べよ。
【ワンポイント解説】
地中送電の特徴と留意点,そしてその対策に関する問題です。
本問は満点を狙うというよりも,できるだけ知っている知識を引出し高得点を勝ち取れるかが重要となります。試験センター解答の\( \ 7 ~ 8 \ \)割の内容が記載されていれば十分合格できると考えて良いかと思います。
1.地中送電の特徴
【長所】
・自然災害による影響や他接触物による外部事故が少ない。
・都市の景観が保たれる。
・露出充電部が少ないので,感電や火災の危険性が低い。
・通信線への誘導障害が少ない。
【短所】
・工期が長くなり,建設費も高くなる。
・事故箇所の特定が難しく,事故復旧に時間がかかる。
・放熱性が低いため,導体の太さが同じ場合,送電容量が小さくなる。
・ケーブルの場合静電容量が数十倍となり,充電電流が大きい。
2.地中送電の送電容量上昇対策
①熱損失抑制
導体サイズを大きくする,誘電正接の小さい絶縁材料を使用する,等により発生する熱損失自体を小さくします。
②強制冷却
ケーブルに直接冷却媒体を循環させる内部冷却,及び外部冷却としてケーブルの管路に冷却水を通水する直接冷却,ケーブルの管路と並行して布設した冷却水の管路に通水する間接冷却があります。
③耐熱性の高い絶縁材料の使用
許容温度が比較的高い絶縁材料を使用します。
3.フェランチ効果
送電線の受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象で,夜間・休日等軽負荷時,ケーブル等の静電容量が影響して,送電線電流が進み電流となった場合に生じることが多い現象です。
図1のように,通常時であれば,負荷はほぼ遅れ力率であるため,電流は電圧より位相が遅れ,青線のようなベクトル図となります。しかし,電流が進み電流になると,ベクトル図が赤線のような形となり,送電端電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {s}} \ \)が受電端電圧\( \ {\dot V}_{\mathrm {r}} \ \)よりも小さくなる現象が発生することがあります。
【解答】
(ポイント)
・ワンポイント解説の通りです。
・充電容量対策としては,進み位相を解消する分路リアクトルの挿入の他,無効電力補償装置\( \ \left( \mathrm {SVC}\right) \ \)の設置も有効かと思います。
・近年は文字の目安が問題文に記載されることが多いので,それぞれ\( \ 100 \ \)字程度でまとめられると良いでしょう。
(試験センター解答)
1.充電容量
(1) 留意点
地中ケーブルでは架空送電線に比較して作用静電容量が\( \ 20 \ \)倍程度となる。このため,ケーブルが長くなると無効電力が増加し,有効電力の送電に限界が生じる。また,ケーブル両端における軽負荷時の電圧上昇(フェランチ効果)も顕著となる。
(2) 対策
① ケーブルの両端などに必要に応じて分路リアクトルを挿入し,静電容量による無効電力を補償する。
② 絶縁に用いる誘電体に誘電率の小さい物を用いる。
2.放熱
(1) 留意点
地中ケーブルでは地中に設置されることや,導体周囲を絶縁物で覆うこと等の構造上の問題から,周囲の空気が自由に対流できる架空送電線に比べ,放熱が悪くなる。このため,架空送電線に比べ,温度上昇限界による送電量の制限が厳しい。
(2) 対策
① 絶縁物の耐熱性を向上させ,最高許容温度を高くする。
② 放熱性を向上させる。(ケーブル冷却用流体による強制冷却,他)
③ 絶縁物の誘電損による温度上昇を低減させる。
④ 導体の抵抗を減少させる。
3.地中ケーブルの絶縁
(1) 留意点
架空送電線の絶縁が大気により保たれているのに対して,地中ケーブルの絶縁は絶縁物によって保たれている。このため,次のような点に留意する必要がある。
① 地中ケーブルでは絶縁破壊による放電は絶縁物の損傷を伴い,ケーブルの交換を伴う。このため,絶縁破壊による故障箇所の除去に時間がかかる。このことは空気中の放電が送電を停止することで取り除ける架空送電線との大きな違いとなる。このため,より厳密なサージ解析の実施などの厳密な過電圧対策が求められる。また,この際,ケーブルのサージインピーダンスが架空送電線に比較して小さい点を考慮する必要がある。
② 架空送電線の大気は常に入れ替わるが,地中ケーブルの絶縁物はそのようにはならない。このため,絶縁物の劣化に注意する必要がある。
(2) 対策
① 過電圧保護装置(避雷器等)の設置。
② 絶縁協調における考慮。