《電力・管理》〈電気施設管理〉[R01:問6]発電用風力設備に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

事業用電気工作物としての発電用風力設備に関して,次の問に答えよ。

(1) 発電用風力設備は,公衆安全と電気保安の確保のために,設置時のみならず,巡視・点検等継続的に保守管理を行うことにより,運用中も「発電用風力設備に関する技術基準を定める省令」に適合するよう維持しなければならない。発電用風力設備において維持すべき重要な技術要件を二つ答えよ。

(2) 風車が構造上安全であるために設計上考慮すべき風圧荷重を二つ答えよ。

(3) 避雷塔や避雷針を施設する方法以外に,雷撃からブレードを保護する措置を答えよ。

(4) 風力発電設備内部を雷撃から保護するために等電位ボンディングという方法が採用されている。この保護の方法について答えよ。

【ワンポイント解説】

発電用風力設備の技術基準に関する問題です。近年は電気施設管理の内容として,1種で法令の内容を問う問題が増えている印象がありましたが,2種にも出題されるようになったと言えると思います。完全解答を目指すのではなく,いろいろな知識を複合してある程度の部分点を狙っていく問題と言えると思います。

【解答】

(1)発電用風力設備において維持すべき重要な技術要件を二つ
(ポイント)
・発電用風力設備に関する技術基準を定める省令の第3条~第7条に記載があるのような内容を記述する。

(試験センター解答)
下記の内容から,二つの技術要件が記載されていればよい。
・危険表示や接近する恐れがないような措置など取扱者以外の者に対する危険防止措置を維持する。
・風車のハブ・ナセルの落下,ブレードの飛散などが発生しないように風車の構造上の安全を維持する。
・タワーの倒壊などが発生しないように風車を支持する工作物の構造上の安全を維持する。
・過回転時や制御機能喪失時の自動停止等により風車の安全な状態を確保する。
・雷撃防止措置等により風車の安全な状態を確保する。
・圧油装置等の危険の防止を図る。
など

(2)風車が構造上安全であるために設計上考慮すべき風圧荷重を二つ
(ポイント)
・発電用風力設備の技術基準の解釈第4条に記載があるような内容を記述する。

(試験センター解答)
・突風や台風等の強風による風圧荷重のうち最大のもの
・風速及び風向の時間的変化により生じる変動荷重

(3)避雷器や避雷針を施設する方法以外に,雷撃からブレードを保護する措置
(ポイント)
・発電用風力設備の技術基準の解釈第7条に記載があるような内容を記述する。

(試験センター解答)
設置場所の落雷条件を考慮して,レセプターを風車へ取り付ける及び雷撃によって生じる電流を風車に損傷を与えることなく安全に地中に流すことができる引下げ導体等を施設する。

(4)等電位ボンディングの説明
(ポイント)
・等電位ボンディングは接地極間を繋ぎあわせることで落雷が発生した時の電位差をなくし,機器を保護させる仕組み。
・等電位ボンディングをしていないと,落雷が発生した際雷電流が特定の接地極のみを流れ,他の接地極と大きな電位差が発生し、接地極を通じて大きな電流が流れて建物内の機器を破損させる。

(試験センター解答)
風力発電設備内部の離れた導電性部分間を直接導体又はサージ保護装置で電気的に接続することで,その部分間に雷電流により発生する電位差を低減させて保護する。

<発電用風力設備に関する技術基準を定める省令(抜粋)>
(取扱者以外の者に対する危険防止措置)
第三条 風力発電所を施設するに当たっては、取扱者以外の者に見やすい箇所に風車が危険である旨を表示するとともに、当該者が容易に接近するおそれがないように適切な措置を講じなければならない。

2 発電用風力設備が一般用電気工作物である場合には、前項の規定は、同項中「風力発電所」とあるのは「発電用風力設備」と、「当該者が容易に」とあるのは「当該者が容易に風車に」と読み替えて適用するものとする。

(風車)
第四条 風車は、次の各号により施設しなければならない。

一 負荷を遮断したときの最大速度に対し、構造上安全であること。

二 風圧に対して構造上安全であること。

三 運転中に風車に損傷を与えるような振動がないように施設すること。

四 通常想定される最大風速においても取扱者の意図に反して風車が起動することのないように施設すること。

五 運転中に他の工作物、植物等に接触しないように施設すること。

(風車の安全な状態の確保)
第五条 風車は、次の各号の場合に安全かつ自動的に停止するような措置を講じなければならない。

一 回転速度が著しく上昇した場合

二 風車の制御装置の機能が著しく低下した場合

2 発電用風力設備が一般用電気工作物である場合には、前項の規定は、同項中「安全かつ自動的に停止するような措置」とあるのは「安全な状態を確保するような措置」と読み替えて適用するものとする。

3 最高部の地表からの高さが二十メートルを超える発電用風力設備には、雷撃から風車を保護するような措置を講じなければならない。ただし、周囲の状況によって雷撃が風車を損傷するおそれがない場合においては、この限りでない。

(圧油装置及び圧縮空気装置の危険の防止)
第六条 発電用風力設備として使用する圧油装置及び圧縮空気装置は、次の各号により施設しなければならない。

一 圧油タンク及び空気タンクの材料及び構造は、最高使用圧力に対して十分に耐え、かつ、安全なものであること。

二 圧油タンク及び空気タンクは、耐食性を有するものであること。

三 圧力が上昇する場合において、当該圧力が最高使用圧力に到達する以前に当該圧力を低下させる機能を有すること。

四 圧油タンクの油圧又は空気タンクの空気圧が低下した場合に圧力を自動的に回復させる機能を有すること。

五 異常な圧力を早期に検知できる機能を有すること。

(風車を支持する工作物)
第七条 風車を支持する工作物は、自重、積載荷重、積雪及び風圧並びに地震その他の振動及び衝撃に対して構造上安全でなければならない。

2 発電用風力設備が一般用電気工作物である場合には、風車を支持する工作物に取扱者以外の者が容易に登ることができないように適切な措置を講じること。

<発電用風力設備の技術基準の解釈第4条>
省令第4条第二号に規定する「風圧」とは、発電用風力設備を設置する場所の風車ハブ高さにおける現地風条件(極値風及び乱流を含む。)による風圧が考慮されたものであって、次に掲げるものを含むものをいう。

(2)一 風車の受風面の垂直投影面積が最大の状態における最大風圧

(2)二 風速及び風向の時間的変化による風圧

2 省令第4条第二号に規定する「構造上安全」とは、風車が前項に規定する風圧に対して安全であることを含むものをいう。

3 発電用風力設備が一般用電気工作物である場合には、省令第4条第二号に規定する「風圧」とは、風車の制御の方法に応じて風車の受風面の垂直投影面積が最大となる状態において、風車が受ける最大風圧を含むものをいい、第1項の規定は適用しない。

<発電用風力設備の技術基準の解釈第7条(抜粋)>
(3)6 省令第5条第3項に規定する「雷撃から風車を保護するような措置」とは、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう。

一 発電用風力設備を設置する場所の落雷条件を考慮し、レセプターの風車への取付け及び雷撃によって生ずる電流を風車に損傷を与えることなく安全に地中に流すことができる引下げ導体等を施設すること。

二 風車を支持する工作物(船舶安全法(昭和8年法律第11号)第2条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)の高さが 20 メートルを超える部分を雷撃から保護するように、次に掲げる要件の全てを満たす避雷設備を設けること。

イ 雷撃によって生ずる電流を風車を支持する工作物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備として、日本工業規格A4201(建築物等の雷保護)―2003に規定する外部雷保護システムに適合する構造であること。

ロ 避雷設備の雨水等により腐食のおそれのある部分にあっては、腐食しにくい材料を用いるか、又は有効な腐食防止のための措置を講じたものであること。

7 省令第5条第3項に規定する「周囲の状況によって雷撃が風車を損傷するおそれがない場合」とは、当該風車を保護するように避雷塔、避雷針その他の避雷設備が施設されている場合を含むものをいう。



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