《電力・管理》〈送電〉[H29:問3]送電線の電圧変動率に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

図のような一次側が 154 kV ,二次側が 77 kV の変圧器3台で連系された変電所がある。この変電所の 77 kV 側母線に接続された 30 MVA の電力用コンデンサを投入したとき,次の問に答えよ。なお,各変圧器のインピーダンスはリアクタンスのみとし,その値は自己容量基準で図に示すとおりである。

(1)  77 kV 母線の短絡容量 PS [MVA] を求めよ。なお,単位法における基準容量は 100 MVA として計算せよ。

(2) 電力用コンデンサを投入したときの 77 kV 側母線の基準電圧に対する電圧変動率 ΔV77 [] を求めよ。

(3) 電力用コンデンサを投入したときの 154 kV 側母線の基準電圧に対する電圧変動率 ΔV154 [] を求めよ。

【ワンポイント解説】

単位法では基準容量を揃え,インピーダンスマップの等価回路を作成することが重要です。単位法は頻出問題なので,下記の単位法の定義式はよく理解しておきましょう。

1.百分率インピーダンスの定義
基準容量 Pn ,基準電圧 Vn ,基準電流 In とすると,インピーダンス Z [Ω] の百分率インピーダンス Z [] 
Z=ZInVn3×100=3ZInVn×100 で定義されます。 Pn=3VnIn の関係を用いて,定義式を整理すると,
Z=3ZVnInV2n×100=ZPnV2n×100 となります。

2.短絡容量 PS 
三相短絡事故が発生した際の短絡容量 PS は,その時の公称電圧 VB ,その時流れる三相短絡電流を IS とすると,
PS=3VBIS となります。

【解答】

(1) 77 kV 母線の短絡容量 PS [MVA] 
図1のように各インピーダンスを Z1Z5 とおくと,それぞれの 100 MVA ベースの百分率インピーダンスは,
Z1=100MVA10MVA×0.2=2 []Z2=Z4=100MVA200MVA×16=8 []Z5=100MVA10MVA×2=20 [] となり,図1の等価回路は図2のように書くことができる。 Z2  Z3  Z4 の並列合成インピーダンス ZT は,
ZT=11Z2+1Z3+1Z4=118+114+183.1111 [] となる。よって, Z1  ZT  Z5 を合成した短絡インピーダンス ZS は,
ZS=11Z5+1Z1+ZT=1120+12+3.11114.0708 [] となる。したがって, 77 kV 母線の短絡容量 PS は,
PS=100ZS×PB=1004.0708×1002456.5  2460 [MVA] と求められる。

(2)電力用コンデンサを投入したときの 77 kV 側母線の基準電圧に対する電圧変動率 ΔV77 [] 
基準電圧 VB ,電圧変化量を v とすると,電圧変動率 ΔV77 は,
ΔV77=vVB3×100=3vVB×100 となる。ここで,コンデンサ投入時に流れる電流を IC  77 kV 母線から電源側を見たインピーダンスを Z とすると,
v=ZIC となるから,
ΔV77=3ZICVB×100=3ZVBICV2B×100 と変形できる。ここで,コンデンサの容量 Q とすると, Q=3VBIC となり,短絡容量 PS は,
PS=3VBIS=3VBVB3Z=V2BZ となるから,
ΔV77=QPS×100 となり,各値を代入すると,
ΔV77=302456.5×100=1.2212  1.22 [] と求められる。

(3)電力用コンデンサを投入したときの 154 kV 側母線の基準電圧に対する電圧変動率 ΔV154 [] 
 154 kV 母線の電圧変動率 ΔV154 [] は図3のAでの電圧変動率となる。したがって,電圧変動率は Z1  ZT より,
ΔV154=Z1Z1+ZTΔV77=22+3.1111×1.22120.47786  0.478 [] と求められる。

【本問に関する質疑応答】

  4つの質問
  電圧変動値と電圧変動率の話
  電圧変動率と電圧降下率



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