《電力》〈送電〉[H23:問3]ケーブルの絶縁診断方法と特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,ケーブルの絶縁診断に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

油浸絶縁ケーブルの絶縁低下は,主にシースの腐食・外傷などによる絶縁体の吸湿,浸水やケーブルの熱伸縮などによる\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の発生,長年月の使用による絶縁体の変質などの単独あるいは組み合わせにより発生する。また,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁低下は主に\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の進展により発生する。

主な絶縁診断方法は次のとおりである。

a.直流\( \ \fbox {  (3)  } \ \)測定
 ケーブルの導体とシース間に一定の直流電圧を印加し,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の大きさ・変化・三相不平衡などを時間で整理し,その形状や値から絶縁状態を調べる。

b.\( \ \fbox {  (4)  } \ \)測定
 交流又は直流課電時の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を測定し,一定時間内に発生する一定量を超えるパルス数などを電圧や時間などで整理し,その特徴を調べる。この方法では\( \ \fbox {  (4)  } \ \)発生位置も測定しうる利点もある。

c.油浸絶縁ケーブルの\( \ \fbox {  (5)  } \ \)調査
 \( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブル,\( \ \mathrm {POF} \ \)ケーブルの\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を採取して,誘電特性,ガス含有量などの測定を行い,劣化の程度を調べる。

d.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁診断
 \( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの\( \ \fbox {  (2)  } \ \)による劣化に対する絶縁診断手法の主なものは,絶縁体中への空間電荷の蓄積現象を利用した残留電荷法,電流-電圧特性の非線形性を利用した交流損失電流法などがあげられる。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& スラッジ        &(ロ)& ガ ス       &(ハ)& ひずみ \\[ 5pt ] &(ニ)& コア移動     &(ホ)& 部分放電        &(ヘ)& 誘電正接 \\[ 5pt ] &(ト)& 漏れ電流     &(チ)& 局部過熱     &(リ)& 絶縁抵抗 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 水トリー     &(ル)& 水 分     &(ヲ)& 熱抵抗 \\[ 5pt ] &(ワ)& 絶縁油     &(カ)& 空げき     &(ヨ)& 充電電流 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

ケーブルの劣化診断に関する問題です。
二次試験にも出題される可能性がある問題なので,名称や概要は説明できるようにしておきましょう。

1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁劣化診断方法
①絶縁抵抗測定
絶縁抵抗計を使用して,ケーブルに直流電圧を印加し,その抵抗値(漏れ電流値)から絶縁抵抗を測定します。簡易的な測定で一般に絶縁抵抗測定のみで異常を確定することはしません。

②直流漏れ電流測定
ケーブルに直流電圧を印加し,漏れ電流の大きさや時間変化・三相不平衡などを確認します。直流であるため計測装置が比較的小形で容量も小さくて済みます。

③部分放電測定
交流又は直流高電圧をケーブルにかけ,ケーブルの空げき(ボイド)やクラックに発生する部分放電を印加電圧の時間変化やパルス数等で特定します。局部的な絶縁劣化を生じたときには場所の測定も可能で適していますが,全体的な劣化の診断には適していません。

④誘電正接測定
ケーブルに交流電圧を印加し,\( \ \tan \delta \ \)計等を用いて誘電正接の特性を測定します。部分放電測定が局部的な絶縁劣化の測定に適しているのに対し,誘電正接測定は全体的な劣化の診断に向いています。

⑤残留電荷法
まずケーブルに直流電圧を印加して絶縁体中に空間電荷を蓄積させ,その後接地することで水トリー発生場所以外の電荷を放出させます。その後さらに交流電圧を印加すると,水トリー発生場所からも電荷が放出され,この電荷を測定することで水トリーでの絶縁劣化を診断します。

2.\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルの絶縁劣化診断方法
①油中ガス分析
絶縁油中に溶解した分解生成ガスを組成と量を分析することで絶縁の劣化を診断します。

②絶縁油の特性試験
絶縁油中の全酸価,体積抵抗率,誘電正接,水分量,絶縁破壊電圧等を測定し,絶縁特性を診断します。

③コアずれ測定
放射線によりケーブルを撮影してコアのずれを確認し,異常を診断します。

④部分放電測定
発生する部分放電の印加電圧の時間変化やパルス数等を測定します。油中ガス分析では検出できない部分放電を検出可能で,停電できない電線路の測定も可能です。

【解答】

(1)解答:カ
題意より解答候補は,(イ)スラッジ,(ロ)ガス,(ハ)ひずみ,(ニ)コア移動,(ホ)部分放電,(ト)漏れ電流,(チ)局部過熱,(ヌ)水トリー,(カ)空げき,等になると思います。
油浸絶縁ケーブル(\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブル)の絶縁低下で,浸水やケーブルの熱伸縮などにより発生しとなっていることから適切なのは空げきとなります。他にも入りそうな用語はありますが,空げきがより適当と考えることができると良いと思います。

(2)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)スラッジ,(ロ)ガス,(ハ)ひずみ,(ニ)コア移動,(ホ)部分放電,(ト)漏れ電流,(チ)局部過熱,(ヌ)水トリー,(カ)空げき,等になると思います。
\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブル特有の現象として,ケーブル絶縁体中に含まれる水分に電界がかかると樹枝状(トリー状)に劣化する水トリー劣化と呼ばれるものがあります。

(3)解答:ト
題意より解答候補は,(ホ)部分放電,(ヘ)誘電正接,(ト)漏れ電流,(リ)絶縁抵抗,(ヨ)充電電流,等になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁劣化診断方法」の通り,漏れ電流の大きさ・変化・三相不平衡などを時間で整理し,絶縁状態を調べるのは直流漏れ電流測定となります。

(4)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)部分放電,(ヘ)誘電正接,(ト)漏れ電流,(リ)絶縁抵抗,(ヲ)熱抵抗,(ヨ)充電電流,等になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁劣化診断方法」の通り,パルス数や発生位置が測定可能となっていることから,部分放電測定であることがわかります。

(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(イ)スラッジ,(ロ)ガス,(ル)水分,(ワ)絶縁油,等になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁劣化診断方法」の通り,誘電特性,ガス含有量などの測定を行うことから油中ガス分析であることがわかり,絶縁油が適切であることがわかります。



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