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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,\( \ \mathrm {LNG} \ \)を燃料としたコンバインドサイクル発電(排熱回収方式)がミドル・ベース電源としても採用されている理由について,\( \ (1) \ \)運用特性,\( \ (2) \ \)経済特性,\( \ (3) \ \)環境特性からみた特徴を述べたものである。\( \ \mathrm {A} \ \)から\( \ \mathrm {E} \ \)の記号を付した空欄に記入すべき事項又は語句を,次の解答方法に従って答案用紙に記入しなさい。
解答方法
\( \ \mathrm {A} \ \),\( \ \mathrm {D} \ \)及び\( \ \mathrm {E} \ \):適切な語句を記入すること。
\( \ \mathrm {B} \ \):負荷変動特性に関して記入すること。
\( \ \mathrm {C} \ \):起動停止特性に関して記入すること。
\( \ (1) \ \)運用特性
一般の汽力発電では,系統負荷の増加・減少に対応した運用のための負荷上昇・下降速度及び細かい負荷変化に対応して応動するための追随性(変化幅と変化速度)は,高温部の熱応力及び燃料系統・蒸気系統などの速応性・安定性から制約を受ける。
\( \ \mathrm {LNG} \ \)コンバインドサイクル発電では,燃焼ガスが持っているエネルギーの高温領域に\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {A}$ $\hskip 1em $} \ \)を利用し,その排熱を熱源とする蒸気タービンの組み合わせで構成されていることから,
\[
\fbox{$ \mathrm {B} \hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}
\]
また,一般の汽力発電では,温度・圧力などが所定の条件に達するまで時間がかかること,ボイラやタービンにかかる熱応力が過大とならないよう制御しつつ,出力を変化させる必要があるなどの理由から起動停止に相当の時間を要する。
一方,\( \ \mathrm {LNG} \ \)コンバインドサイクル発電では,\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {A}$ $\hskip 1em $} \ \)を使用した単機出力の小さい設備で構成されているため,一般の汽力発電に比べて,
\[
\fbox{$ \mathrm {C} \hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}
\]
\( \ (2) \ \)経済特性
発電設備の構成は,単機出力の小さい設備で構成されており,系統負荷に応じて出力の増減を\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {D}$ $\hskip 1em $} \ \)の増減で行うようにしていることから,広い出力範囲にわたり熱効率の低下が小さく,単機の定格出力と同等の高い熱効率が得られるため,ベース領域のみならずミドル領域での経済性に優位性を有している。
\( \ (3) \ \)環境特性
\( \ \mathrm {LNG} \ \)コンバインドサイクル発電は,従来の火力発電に比べて熱効率が高く,キロワット時当たりの燃料消費量が少ないので,燃焼時に\( \ \fbox {$\hskip 1em $ $\mathrm {E}$ $\hskip 1em $} \ \)の原因となる\( \ \mathrm {CO_{2}} \ \)排出量が少ない。また,酸性雨の原因となる硫黄酸化物を排出しない。
【ワンポイント解説】
コンバインドサイクル発電の運用方法に関する問題です。
現在は再生可能エネルギーの割合が多くなり,各発電所の役割は少しずつ変化してきていますが,\( \ 2025 \ \)年現在においてもコンバインドサイクル発電は負荷調整の中心となる重要な電源です。
特性等は現在も変わっていませんので,本問の内容は必ず理解しておくようにして下さい。
1.コンバインドサイクル発電
コンバインドサイクル発電は,ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた方式の発電であり,ガスタービンの高温排熱を排熱回収ボイラで回収し蒸気を発生させ,蒸気タービンで発電します。
熱効率が従来の汽力発電(約\( \ 40 \ \mathrm {%} \ \))に比べ格段に高く,近年は耐熱材料の採用によるガスタービンの高温化により,約\( \ 60 \ \mathrm {%} \ \)程度まで上昇しています。

2.コンバインドサイクル発電の特徴
コンバインドサイクル発電は同容量の汽力発電に比べ,以下の特徴があります。
・ガスタービンの排熱を利用するため,熱効率が高い
・蒸気タービンの使用水量が少ないので保有水量が少なく,起動停止時間が短い
・保有水量が少ないため,負荷追従性が高い
・蒸気タービンの使用水量が少ないので,復水器の冷却水量が少ない
・単位ユニット毎の運転台数の調整が可能なため,部分負荷時の熱効率の低下が少ない
・通風機や環境対策設備等の大形所内補機が少なく,所内率が小さい
・一般的な排熱回収方式では,気温が上がり空気が膨張するとガスタービン入口の空気密度が下がるため,最大出力が低下する
・ガスタービンは圧縮空気で駆動するため,単位出力あたりの排ガス量が多い
3.\( \ \mathrm {LNG} \ \)の特徴及び性質
\( \ \mathrm {LNG} \ \)は\( \ \mathrm {Liquefied \ Natural \ Gas} \ \)の略で,日本語名では液化天然ガスとなります。主成分は約\( \ 90 \ % \ \)がメタンです。
天然ガスを\( \ -162 \ \)℃まで冷やし,液化することで体積を約\( \ \displaystyle \frac {1}{600} \ \)まで減少させることで,船舶での運搬や貯蔵をしやすくなります。
液化する過程で硫黄分や窒素分等の不純物を除去できるので,フューエル\( \ \mathrm {NO_{x}} \ \)や\( \ \mathrm {SO_{x}} \ \)の発生はほとんどなくなり,化石燃料としてはクリーンなエネルギーとなります。
また,石炭や石油に比べ引火点が低く,燃焼制御がしやすいという特徴もあります。
参考:\( \ \mathrm {LNG} \ \)の性状例
① 外観 :無色透明
② 臭い :無臭
③ 沸点、初留点及び沸騰範囲 :\( \ -161 \ \)℃(メタン)
④ 引火点 :\( \ -187.78 \ \)℃(メタン)
⑤ 燃焼又は爆発範囲の上限、下限 :\( \ 5~15 \ \mathrm {vol%} \ \)(メタン)
⑥ 蒸気圧 :\( \ 4.250 \ \mathrm {MPa} \ \)(\( \ -83 \ \)℃/メタン)
⑦ 比重(相対密度) :\( \ 0.62 \ \)程度
⑧ 自然発火温度 :\( \ 537 \ \)℃(メタン)
⑨ 総発熱量 :\( \ 43.7 \ \mathrm {MJ / Nm^{3}} \ \)程度出典:安全データシート(SDS)
【解答】
\( \ \mathrm {A} \ \):ガスタービン
\( \ \mathrm {B} \ \):一般の汽力発電の熱効率向上を目指した高温化に伴う熱的制約を克服し,大幅な出力調整が可能となり,電力需要の変動にも迅速に対応することができる。
\( \ \mathrm {C} \ \):短時間での起動停止が可能で機動性が高い。
\( \ \mathrm {D} \ \):運転台数
\( \ \mathrm {E} \ \):地球温暖化