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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
火力発電所のタービン発電機は,一般に遅れ力率で運転されることが多いが,必要に応じて進み力率で運転する「進相運転」を実施する場合もある。進相運転を実施する目的,進相運転時の留意点,その留意点に対する発電所における対策について述べよ。
【ワンポイント解説】
火力発電所のタービン発電機の進相運転に関する問題です。
夜間軽負荷時に進み力率になる原因及びフェランチ効果は電験でも頻出の内容で,それに対する火力発電所のタービン発電機の対応となります。
1.送配電系統の電圧上昇と対策
①電圧上昇発生原因
送配電系統での静電容量の大きいケーブルの採用や需要家側に設置された力率改善用コンデンサの常時投入などにより,深夜軽負荷帯などに進み無効電力が過剰になるためです。
②電圧上昇対策
分路リアクトルの投入,変圧器タップ位置の調整,発電機の進相運転(低励磁運転)があります。
2.タービン発電機進相運転時の留意点
①固定子鉄心端部の過熱
固定子鉄心端部には電機子反作用による漏れ磁束が存在しますが,進相運転により界磁電流が減少し界磁磁束が減少すると漏れ磁束が通りやすくなり渦電流が増え,渦電流損やヒステリシス損が発生し温度上昇させます。
②定態安定度の低下
進相運転により界磁電流を減少すると,発電機内部起電力の減少,内部相差角の増大により,同期化力が低下し定態安定度が低下します。
③所内電圧の低下
発電機端子電圧の低下により,所内機器の電圧が低下します。電圧低下により大型電動機のトルク不足が発生する可能性があります。
【解答】
(ポイント)
・ワンポイント解説の通りです。
・対策としては安定度に対する対策である速応励磁と電圧低下に対する対策を記載していれば良いです。
(試験センター解答)
1.進相運転の目的
電力系統は,超高圧送電線路や地中ケーブル送電線による線路充電容量の増大及び需要家の力率改善用コンデンサの普及などによって,深夜の軽負荷時等には無効電力が余剰となり,系統電圧が上昇する傾向となる。このため,分路リアクトルや同期調相機を設置したり,軽負荷送電線を停止するなどして,無効電力を吸収する対策をとっているが,これらには限界があるため,系統に並列されているタービン発電機を低励磁で進相運転することにより,無効電力を吸収し,系統電圧上昇を抑制することを目的とする。
2.進相運転時の留意点と対策
(1)留意点
① 系統安定度の低下
タービン発電機内部誘導起電力が低くなることによって,タービン発電機の同期化力が減少し,定態安定度が低下する。
② 発電機固定子鉄心端部の過熱
進相運転時には,発電機固定子鉄心端部の漏れ磁束の量が著しく増大し,鉄心端部に大きな渦電流が流れ,その部分が過熱する。
③ 所内電圧の低下
進相運転による発電機端子電圧低下に伴い,タービン発電機の出力から直接電源の供給を受ける所内補機については,電源電圧が低下する。
(2)対策
① 定態安定度を向上させるために\( \ \mathrm {PSS} \ \)付きの超速応励磁制御装置(頂上電圧が高く応答の速い高性能励磁装置)を設置する。
② 不足電圧励磁制限装置を使用し,上記留意点が発生しないように励磁電圧の下限値を設定する。