《電力・管理》〈配電〉[H25:問3]高圧配電系統に同期発電機の連携する場合の保護リレーに関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

高圧配電系統に同期発電機を連系する場合に,同期発電機を設置する構内の保護リレーについて,次の問に答えよ。

(1) 構内の地絡故障保護には,受電点近くに設置した地絡過電流リレー(OCGR)などを用いるが,同期発電機を連系する場合の高圧配電系統の地絡故障保護には,地絡過電圧リレー(OVGR)を用いる理由を説明せよ。

(2) 構内の短絡故障保護には,受電点近くに設置した過電流リレー(OCR)などを用いるが,同期発電機を連系する場合の高圧配電系統側の短絡故障保護には,短絡方向リレー(DSR)を用いる理由を説明せよ。

(3) 地絡過電圧リレー(OVGR)と短絡方向リレー(DSR)は配電用変電所の保護装置と時限協調を図って保護する理由を説明せよ。

【ワンポイント解説】

3種や2種の一次試験では出題されにくい内容で,二次試験らしい問題と言えると思います。保護リレーに関する問題はかなりの頻度で出題されるので,勉強をしておくと良いと思います。(3)は何か書いておくと部分点が貰いやすい問題であると思います。

1.中性点接地方式
中性点接地方式の分類は電圧階級により下表のように区分されます。配電線のように電圧が低く,地絡発生時の電圧上昇が大きくなってもさほど問題にならない場合は,非接地方式が採用されます。
\[
\begin{array}{|c||c|c|c|c|}
\hline
& 非接地 & 消弧リアクトル接地 & 抵抗接地 & 直接接地 \\
\hline
\hline
電圧階級 & \mathrm {6.6kV} & \mathrm {22~77kV} & \mathrm {22~154kV} & \mathrm {187kV}以上   \\
\hline
健全相電位上昇 & 大 & 大 & 中 & 小 \\
\hline
一線地絡電流 & 小 & 最小 & 中 & 大 \\
\hline
価格 & 0 & 高 & 中 & 安 \\
\hline
\end{array}
\]

【関連する「電気の神髄」記事】

  中性点接地方式の種類と特徴

【解答】

(1)高圧配電系統の地絡故障保護に地絡過電流リレー(OCGR)ではなく,地絡過電圧リレー(OVGR)を用いる理由
(ポイント)
・ワンポイント解説「中性点接地方式」の通り,高圧配電系統は主に非接地方式が採用されるので,地絡電流が流れにくいという特徴があります。

(試験センター解答例)
配電線の地絡故障時には,地絡電流が配電用変電所側と発電機側との両方から地絡故障点へ供給されるが,高圧配電系統は非接地系統であり,同期発電機からの地絡電流は極めて小さいことから,地絡過電圧リレー(OVGR)を用いて地絡電圧を検出し保護する。

(2)高圧配電系統側の短絡故障保護に過電流リレー(OCR)でなく,短絡方向リレー(DSR)を用いる理由
(ポイント)
・過電流リレーでは電流値が小さすぎて感知できないというのがポイントになると思います。

(試験センター解答例)
配電線の短絡故障時には,短絡電流が配電用変電所側と発電機側との両方から短絡故障点へ供給されるが,同期発電機からの短絡電流が比較的小さいため過電流リレー(OCR)の整定感度では検出できない場合があり,逆にOCRの感度を高くすると負荷電流などにより誤作動の原因となる。このため,同期発電機の場合は電流の方向も判断材料となる短絡方向リレー(DSR)を用いて保護する。

(3)地絡過電圧リレー(OVGR)と短絡方向リレー(DSR)は配電用変電所の保護装置と時限協調を図って保護する理由
(ポイント)
・保護リレーの目的は事故の早期検出と極小化となります。その内容とズレていなければ部分点は得点できると思います。

(試験センター解答例)
地絡過電圧リレー(OVGR)と短絡方向リレー(DSR)は連系する配電線以外の配電線事故で動作しないようにする必要がある。そのため,事故配電線の遮断後に地絡過電圧リレー(OVGR)と短絡方向リレー(DSR)が動作するように時限協調を図る必要がある。



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