《電力・管理》〈配電〉[H29:問5]高圧配電系統に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

我が国の高圧配電系統に関して,次の問に答えよ。

(1) 現在,我が国の大部分の配電系統は\( \ 6.6 \ \mathrm {kV} \ \)三相3線式中性点非接地方式となっているが,我が国が従来から非接地方式を主体に発展してきた理由を次の観点から簡潔に説明せよ。
 a 誘導障害の観点
 b 保安の観点

(2) 近年,配電線に電力ケーブルが適用される場合が増加しているが,これが原因となって生じるおそれがある配電系統側の問題点について次の観点から簡潔に説明せよ。
 c 地絡保護リレーの動作
 d 異常電圧の発生

(3) 上記(2)のcとdの問題点に対し,両方に効果がある方法として,配電線の送り出し変電所側の対策を一つ挙げ簡潔に説明せよ。

【ワンポイント解説】

一次試験の電力科目でも頻出の中性点接地方式と電力ケーブルの内容です。配電線路では,通信線が併設されたり,民家が近くにある等の特徴があるので電磁誘導障害の小さく,地絡電流が小さい非接地方式を採用しています。また,電力ケーブルは都市部の用地不足や景観対策等で地中送電線路で使用されることが増えたものです。目的を理解してから,内容を理解すると頭に入りやすいと思います。

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【解答】

(1)配電系統で従来から非接地方式を主体に発展してきた理由
(ポイント)
・配電系統では,通信線が併設されていることが多く,大きな地絡電流が流れると,通信線の影響が大きくなります。
・大きな地絡電流が流れると感電事故や火災が発生する可能性が高くなります。
(試験センター解答例)
a \( \ 6.6 \ \mathrm {kV} \ \)配電線は通信線とともに架空線で同一電柱に施設されることが多く,大地帰路電流の大きい接地方式を採用すると通信線に対する電磁誘導障害が問題となってくる。このため,地絡電流の小さい非接地方式が採用された。
b 非接地方式によって地絡電流を小さく抑えると,高低圧混触時に低圧線の電位上昇を低く抑えることができ,感電や火災の危険性の低減につながり,保安の観点で有利であった。

(2)配電線に電力ケーブルを適用することによって生じるおそれがある配電系統側の問題点
(ポイント)
・電力ケーブルは絶縁物として\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルでは絶縁紙と絶縁油,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルでは架橋ポリエチレンを使用しているため,空気よりも比誘電率が大きく,静電容量が大きくなります。
・\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルを使用すると,ポリエチレンの熱分解等によりガスが発生し\( \ 1 \ \)線地絡と復帰を繰り返す間欠アーク地絡が発生しやすくなります。
・非接地方式では間欠アーク地絡が発生すると,電位上昇が他の接地方式よりも大きく,異常電圧が発生しやすくなります。
(試験センター解答例)
c 電力ケーブルの増加によって線路の対地静電容量が大きくなると,地絡発生時の零相電圧が小さくなり,また零相電流は非接地系で小さいことから,地絡保護リレーの動作において,所要の地絡検出感度を得るのに困難な場合がある。
d 非接地方式の配電系統では,間欠アーク地絡が発生すると,配電系統に異常電圧が発生するおそれがある。この場合,配電系統に電力ケーブルが多く適用され,対地静電容量が大きいほど異常電圧の発生のおそれが高まる。

(3)c,dに対する配電線の送り出し変電所側の対策
(ポイント)
・対地静電容量に対する対策として,送電線路にリアクトルを挿入することもしくは充電電流を補償する方法として配電用変圧器を増設すること等があります。今回の問題は送り出し変電所側の対策なので,変圧器の増設が適切かと思います。
(試験センター解答例)
\( \ 1 \ \)台の配電用変圧器が受け持つ配電系統の負荷容量や対地静電容量が過大になった場合,配電用変圧器を新たに増設して受け持つ配電系統を分割する。



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