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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
地中送電線の絶縁劣化診断法と事故点測定法について,次の問に答えよ。
(1) 表1は,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁劣化である水トリーに関する絶縁劣化診断法についての記述である。表中の\( \ \left( \mathrm {A}\right) \ \)~\( \ \left( \mathrm {D}\right) \ \)に当てはまる適切な語句についてそれぞれ答えよ。
(2) 表2は,地中送電線の事故点測定法である「マーレーループ法」と「パルスレーダ法(送信形パルス法)」の原理並びにそれぞれの長所及び短所についての記述である。表中の\( \ \left( \mathrm {E}\right) \ \)~\( \ \left( \mathrm {I}\right) \ \)に当てはまる適切な語句についてそれぞれ答えよ。
表 1
\[
\begin{array}{|c|l|}
\hline
絶縁劣化診断法 & 原理 \\
\hline
損失電流法 & 水トリー劣化ケーブルの充電電流の中に,課電電圧と同 \\
& 位相の損失電流成分が含まれることから,この損失分を測 \\
& 定し劣化の状況を把握する手法である。劣化したケーブル \\
& の測定波形には \ \boxed {~~~~ \mathrm {A} ~~~~~} \ 歪みが観測される。 \\
\hline
\ \boxed {~~~~ \mathrm {B} ~~~~~} \ 電荷法 & 最初に \ \boxed {~~~~ \mathrm {C} ~~~~~} \ 課電によって水トリー部に電荷を蓄積 \\
& させ,次に \ \boxed {~~~~ \mathrm {D} ~~~~~} \ 課電で蓄積した電荷を放出させる, \\
& \ \boxed {~~~~ \mathrm {C} ~~~~~} \ 課電と \ \boxed {~~~~ \mathrm {D} ~~~~~} \ 課電を組み合わせた手法であ \\
& る。検出された電荷の量は,水トリーの数や長さによって \\
& 変化するため水トリーの発生状況を検知することが出来る。 \\
\hline
\end{array}
\]
表 2
\[
\begin{array}{|l|l|}
\hline
{\displaystyle \ 事故点}\atop {\displaystyle \ 測定法} & \ 原理 & \ 長所 & \ 短所 \\
\hline
マーレー & \ \boxed {~~~~ \mathrm {E} ~~~~~} \ の原理に & ・導体抵抗を利用した & ・ \ \boxed {~~~~ \mathrm {G} ~~~~~} \ 事故に \\
ループ法 & より,事故点までの & \boxed {~~~~ \mathrm {E} ~~~~~} \ 法のため, & 適用できない。 \\
& 抵抗値を高精度に測 & 測定精度が高く,誤 & ・ \ \boxed {~~~~ \mathrm {H} ~~~~~} \ 同時地 \\
& 定する方法である。 & 差は \ 1 \ %程度以下で & 絡事故のように並 \\
& & ある。 & 行健全相がない場 \\
& & ・ケーブル事故の多く & 合,測定は困難で \\
& & が \ \boxed {~~~~ \mathrm {F} ~~~~~} \ 地絡で & ある。 \\
& & あるため,適用範囲, & \\
& & 使用実績が最も多い。 & \\
\hline
パ \ ル \ ス & 事故ケーブルにパル & ・並行健全相が不要で & ・測定操作,パルス \\
レーダー & ス電圧を加え,健全 & あるので, \ \boxed {~~~~ \mathrm {H} ~~~~~} \ & 波形の判読に熟練 \\
法(送信 & 相と異なるサージイ & 同時地絡事故の測定 & を必要とする。 \\
形パルス & ンピーダンスをもつ & に適している。 & ・測定精度が若干低 \\
法) & 事故点からの & ・線路こう長がはっき & い。(誤差は一般 \\
& \ \boxed {~~~~ \mathrm {I} ~~~~~} \ パルスを & りしていない場合 & 的に \ 2~5 \ %) \\
& 検知して,パルスの & でも測定できる。 & \\
& 伝搬時間を測定し, & & \\
& 事故点までの距離を & & \\
& 求める方法である。 & & \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
ケーブルの絶縁診断と事故点測定法に関する問題です。
本問のような空欄穴埋の問題は,部分点がもらえる可能性がほぼないため,私個人的には余程の自信がない限り優先的に選択することをオススメしません。
ただし,解ける場合には最も時間が不要となるパターンの問題となりますので,試験本番でも一読してから判断すると良いかと思います。
1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの水トリー劣化診断方法
①損失電流法
ケーブルに交流電圧を印加し,ケーブル絶縁体に流れる充電電流から\( \ 90°\ \)進み位相の成分を除去することで印加電圧と同相の電流成分(損失電流)を抽出し,その中に含まれる高調波電流(主に第\( \ 3 \ \)高調波電流)をフーリエ解析することにより得ることで劣化状況を診断します。
②直流漏れ電流測定
ケーブルに直流電圧を印加し,漏れ電流の大きさや時間変化・三相不平衡などを確認します。直流であるため計測装置が比較的小形で容量も小さくて済みます。
③残留電荷法
まずケーブルに直流電圧を印加して絶縁体中に空間電荷を蓄積させ,その後接地することで水トリー発生場所以外の電荷を放出させます。その後さらに交流電圧を印加すると,水トリー発生場所からも電荷が放出され,この電荷を測定することで水トリーでの絶縁劣化を診断します。
④耐電圧法
通常使用する電圧よりも高い試験電圧をケーブルに印加し,試験結果から水トリー劣化の進行度を判断しケーブルの余寿命を診断します。劣化レベルに応じて試験電圧の大きさや周波数を選定します。
2.マーレーループ法
ホイートストンブリッジの原理を利用して,地絡事故点までの距離を測定する方法です。図1のように健全相と事故相があり,健全相側の抵抗を\( \ R_{1} \ \),事故相側の抵抗を\( \ R_{2} \ \)とすると,事故点までの距離\( \ l \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {R_{1}}{2L-l}&=&\frac {R_{2}}{l} \\[ 5pt ]
R_{1}l&=&R_{2}\left( 2L-l\right) \\[ 5pt ]
l&=&\frac {2R_{2}}{R_{1}+R_{2}}L \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められます。
3.パルスレーダ法
パルス法は問題図に描かれている方法で事故点での反射パルスを検知して,事故点までの距離を求める方法です。パルスの伝搬速度を\( \ v \ \)とすると,測定点と事故点までの距離\( \ x \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
x&=&\frac {vt}{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められます。
【解答】
(1)\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁劣化診断方法において\( \ \left( \mathrm {A}\right) \ \)~\( \ \left( \mathrm {D}\right) \ \)に当てはまる語句
(ポイント)
・内容はワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの水トリー劣化診断方法」の通りです。
・\( \ \left( \mathrm {A}\right) \ \)の空欄は第\( \ 3 \ \)高調波,第\( \ 3 \ \)調波等の用語でも得点がもらえると思います。
(試験センター解答)
\( \ \left( \mathrm {A}\right) \ \):高調波
\( \ \left( \mathrm {B}\right) \ \):残留
\( \ \left( \mathrm {C}\right) \ \):直流
\( \ \left( \mathrm {D}\right) \ \):交流
(2)地中送電線の事故点測定法において\( \ \left( \mathrm {E}\right) \ \)~\( \ \left( \mathrm {I}\right) \ \)に当てはまる語句
(ポイント)
・ワンポイント解説「2.マーレーループ法」及び「3.パルスレーダ法」の通りです。
・他にも静電容量法と呼ばれる事故点測定法もありますので,ご興味のある方は調べてみて下さい。
(試験センター解答)
\( \ \left( \mathrm {E}\right) \ \):ホイートストンブリッジ
\( \ \left( \mathrm {F}\right) \ \):\( \ 1 \ \)線
\( \ \left( \mathrm {G}\right) \ \):断線
\( \ \left( \mathrm {H}\right) \ \):三相
\( \ \left( \mathrm {I}\right) \ \):反射