《電力》〈新エネルギー発電〉[R05:問2]太陽光発電の電池の特性と系統連系に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,太陽光発電の系統連系に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

太陽電池はシリコン系と非シリコン系(化合物系)に大別される。非シリコン系は変換効率が極めて高いものの,高コストなので特殊な用途に適用されている。シリコン系の太陽電池にも複数の種類があるが,住宅用で最も広く普及しているものは\( \ \fbox {  (1)  } \ \)であり,製造が容易で安価な特徴を有している。

多数の太陽電池を組み合わせた太陽電池アレイは,接続箱を介して昇圧チョッパに接続される。昇圧チョッパは太陽電池アレイの電圧を適切に昇圧してインバータの直流リンク回路に入力すると同時に,太陽電池アレイの電圧を変えて\( \ \fbox {  (2)  } \ \)制御を行う。インバータは直流を交流に変換する役割を担い,現在稼働している太陽光発電の系統連系用途としては,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)が半導体スイッチとして最も多く用いられている。インバータの制御に際しては,電力系統との連系点における有効・無効電力がそれぞれ目標値となるように交流側電圧が生成されている。例えば無効電力出力は,インバータ出力点と連系点の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の差に大きく依存する。

今後,供給力に占める太陽光発電の比率が一層増加すると\( \ \fbox {  (5)  } \ \)するため,電力系統における過渡安定性の対策が求められる。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 高調波含有率が増加       &(ロ)& 薄膜系     &(ハ)& 電圧の大きさ \\[ 5pt ] &(ニ)& 電圧の位相     &(ホ)& \mathrm {MOSFET}     &(ヘ)& \mathrm {SiC} \ 半導体 \\[ 5pt ] &(ト)& \mathrm {PWM}     &(チ)& 電流     &(リ)& \mathrm {MPPT} \\[ 5pt ] &(ヌ)& \mathrm {FRT}     &(ル)& 単結晶     &(ヲ)& 多結晶 \\[ 5pt ] &(ワ)& \mathrm {IGBT}     &(カ)& 三相不平衡率が増加       &(ヨ)& 同期化力が低下 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

太陽光発電の特徴と系統連系上の留意点に関する問題です。
太陽光発電は現在日本でも非常に普及している発電方式ですが,発電量や出力が日照量,気温等の気象条件に大きく左右され,安定的に発電しないため,電力系統における過渡安定性に対する対策も必要となります。

1.太陽電池の種類
太陽電池はシリコン系と化合物系(非シリコン系)に大別され,以下の種類に区分されます。

①単結晶シリコン
 シリコンの原子が規則正しく整列されている太陽電池で,変換効率が太陽電池の中で最も高いですが,その分価格も他の種類に比べて高いという特徴があります。
 スペースに限りがあり,その中でより発電量を増やしたい場合に採用されます。

②多結晶シリコン
 小さめのシリコンの結晶を集めて太陽電池としたもので,変換効率が単結晶に比べて低いですが,価格が安価であるため,家庭用等では最も多く普及しています。

③アモルファスシリコン
 規則正しい配列を持たない(アモルファス)太陽電池で,変換効率が\( \ 10 \ % \ \)未満と低いですが,曲げ加工が可能であり,曲面にも使用できる特長があります。

化合物系(非シリコン系)
 半導体材料にシリコンではなく,化合物を使用する太陽電池で,銅\( \ \left( \mathrm {Cu}\right) \ \),インジウム\( \ \left( \mathrm {In}\right) \ \),セレン\( \ \left( \mathrm {Se}\right) \ \)を原料とした\( \ \mathrm {CIS} \ \)系やこれにガリウム\( \ \left( \mathrm {Ga}\right) \ \)を加えた\( \ \mathrm {CIGS} \ \)系等があります。変換効率は比較的高いものもありますが,価格とのバランスで現在はシリコン系が主流となっています。

2.最大電力点追従\( \ \left( \mathrm {MPPT}\right) \ \)制御
一般に太陽電池の電圧と電流の関係は図1のような関係があり,出力(電圧×電流)は一定ではなく図2のように変化します。
したがって,太陽光発電では太陽電池アレイの電圧を調整して,最大電力が得られるように制御し,これを最大電力点追従\( \ \left( \mathrm {MPPT}\right) \ \)制御といいます。

3.パワーコンディショナの主な構成設備
①インバータ
太陽電池で発電された直流電力を交流電力に変換します。現在の太陽光発電の連系設備としては\( \ \mathrm {IGBT} \ \)素子を利用したものが広く採用されています。

②制御回路
太陽光パネルの出力制御(\( \ \mathrm {MPPT} \ \)制御)をし最大出力を得る制御,また無効電力の制御を行い受電点の電圧上昇を防ぐ制御を行います。

③系統連系保護装置
電力会社からの電力供給がなく太陽光発電設備が単独運転となってしまった際に,安全のため系統から解列します。


出典:電験戦士教本「原子力・その他発電」 P.88
URL:https://denkenia-archives.stores.jp/

【解答】

(1)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ロ)薄膜系,(ヘ)\( \ \mathrm {SiC} \ \)半導体,(ル)単結晶,(ヲ)多結晶,等になると思います。
ワンポイント解説「1.太陽電池の種類」の通り,住宅用で最も広く普及しているものは製造が容易で安価な特徴を持つ多結晶となります。

(2)解答:リ
題意より解答候補は,(ト)\( \ \mathrm {PWM} \ \),(チ)電流,(リ)\( \ \mathrm {MPPT} \ \),等になると思います。
ワンポイント解説「2.最大電力点追従\( \ \left( \mathrm {MPPT}\right) \ \)制御」の通り,太陽電池アレイの電圧を変えて最大電力が得られるようにする制御を\( \ \mathrm {MPPT} \ \)制御といいます。

(3)解答:ワ
題意より解答候補は,(ホ)\( \ \mathrm {MOSFET} \ \),(ワ)\( \ \mathrm {IGBT} \ \),等になると思います。
ワンポイント解説「3.パワーコンディショナの主な構成設備」の通り,太陽光発電の系統連系用途として最も用いられる半導体スイッチは\( \ \mathrm {IGBT} \ \)となります。

(4)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)電圧の大きさ,(ニ)電圧の位相,等になると思います。
無効電力の大きさはインバータ出力点と連系点の電圧の大きさの差に大きく依存します。系統事故時に無効電力が変化し電圧が変動するのと同じです。インバータ出力点と連系点の電圧の位相は基本的に同じとなります。

(5)解答:ヨ
題意より解答候補は,(イ)高調波含有率が増加,(カ)三相不平衡率が増加,(ヨ)同期化力が低下,になると思います。
太陽光発電の比率が増加すると,高調波含有率及び三相不平衡率の増加の可能性もありますが,電力系統の過渡安定性に関連しているのは同期化力の低下となります。



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