《法規》〈電気施設管理〉[H30:問6]配電系統の電圧管理に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,配電系統の電圧管理に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

配電系統における電気の品質確保の一環として,電圧を適正に管理する必要がある。管理の対称としては,以下に示す電圧の値,フリッカ,高調波などが挙げられる。

a 供給電圧の値は,需要家で使用する機器の性能に大きな影響を与えるため,電気事業法施行規則で供給地点での電圧を次のように定めている。

・標準電圧\( \ 100 \ \mathrm {V} \ \)の場合:\( \ 101±6 \ \mathrm {V} \ \)
・標準電圧\( \ 200 \ \mathrm {V} \ \)の場合:\( \ 202±\fbox {  (1)  } \ \mathrm {V} \ \)

 全ての需要家に対しこの範囲で供給するための対策として,変電所の送り出し電圧の調整や,配電線途中での\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の設置などが挙げられる。

b 配電線に\( \ \fbox {  (3)  } \ \),溶接機,太陽光発電用パワーコンディショナ( \ \(\mathrm {PCS} \ \))などが接続されると,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)時や運転中の負荷変動時,\( \ \mathrm {PCS} \ \)の単独運転検出機能動作時などに線路電圧が変動し,照明の明るさにちらつき(フリッカ)が生じることがある。この抑制対策は基本的に発生源である機器側で行われるが,系統側での対策としては,電圧降下を低減するような電線サイズの設定,変圧器・配電線の専用化などが考えられる。

c 整流器,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)などの,非線形特性をもった負荷に電力を供給した場合,それらの機器から高調波が発生し,通信線への誘導障害,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)への過電流,電気機器の誤作動などが発生するおそれがある。これらを防止するために,我が国では,系統電圧の場合ひずみ率が高調波環境目標レベル(\( \ 6.6 \ \mathrm {kV} \ \)配電系統で\( \ 5 \ \mathrm {%} \ \),特別高圧系統で\( \ 3 \ \mathrm {%} \ \))を超えないよう,「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」によって,発生源である機器側における高調波電流の限度値が定められている。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 定格運転     &(ロ)& 10     &(ハ)& 区分開閉器 \\[ 5pt ] &(ニ)& 30     &(ホ)& コンデンサ     &(ヘ)& 分路リアクトル \\[ 5pt ] &(ト)& 20     &(チ)& 電線     &(リ)& 小型モータ \\[ 5pt ] &(ヌ)& 高圧水銀灯     &(ル)& 線路電圧調整器      &(ヲ)& 抵抗 \\[ 5pt ] &(ワ)& 作業停止     &(カ)& 起動     &(ヨ)& アーク炉 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

本問の内容は電力科目や二次の電力管理科目にも出題され,出題頻度も高い非常に重要な問題となります。二次試験対策を考えても,「配電系統の電圧管理に関して簡潔に述べよ。」と出題されて,ある程度答えられるレベルにしておきましょう。

1.フリッカ
電圧変動現象の一つで,系統電圧が規則的または不規則的に変動し,照明やテレビにちらつき(フリッカ)が生じる現象です。原因はアーク炉の起動や溶接機,コンプレッサなどが挙げられます。

2.高調波
正弦波で供給された電流が各機器を通過することにより,波形が乱れた状態になることを言います。原因は整流回路や変圧器の磁気飽和,家電製品等があります。高調波の種類としては奇数次の高調波が大きいですが,第三調波は\(\Delta \)結線で還流されることもあり,第五調波が最も大きくなります。高調波が発生すると,通信線への誘導障害,リレーの誤動作,配電用遮断器の誤動作,変圧器の過熱,進相コンデンサの過熱等が発生します。

【解答】

(1)解答:ト
電気事業法施行規則第38条表に規定されている通り,\( \ 20 \ \mathrm {V} \ \)となります。

(2)解答:ル
電圧を調整する装置としては,(ホ)コンデンサ,(ヘ)分路リアクトル,(ル)線路電圧調整器,がありますが,(電力用)コンデンサ,分路リアクトルは電圧を上げるもしくは下げるのどちらかしかできず,電圧調整には向きません。したがって,線路電圧調整器が最も適切となります。

(3)解答:ヨ
題意より,解答候補は(リ)小型モータ,(ヌ)高圧水銀灯,(ヨ)アーク炉,となると思います。ワンポイント解説「1.フリッカ」の通りフリッカの原因となるのはアーク炉となります。

(4)解答:カ
題意より,解答候補は(イ)定格運転,(ワ)作業停止,(カ)起動,となると思います。フリッカが生じるのは負荷の急激な変化が発生した時になるので,起動となります。

(5)解答:ホ
題意より,解答候補は(ハ)区分開閉器,(ホ)コンデンサ,(ヘ)分路リアクトル,(リ)小型モータ,(ヌ)高圧水銀灯,(ヲ)抵抗,等が挙げられると思いますが,コンデンサは周波数に反比例してインピーダンスが下がるので,高調波により影響があるのは,コンデンサへの過電流による過熱となります。

【コンデンサのインピーダンス】
\[
\begin{eqnarray}
Z&=&\frac {1}{\mathrm {j}\omega C} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{\mathrm {j}2\pi f C} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

<電気事業法施行規則第38条>
法第二十六条第一項(法第二十七条の二十六第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の経済産業省令で定める電圧の値は、その電気を供給する場所において次の表の上欄に掲げる標準電圧に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。
\[
\begin{array}{|l|l|}
\hline
標準電圧 & 維持すべき値 \\
\hline
百ボルト & 百一ボルトの上下六ボルトを超えない値 \\
\hline
二百ボルト & 二百二ボルトの上下\color{red}{ \underline {(1)二十ボルト   } }を超えない値 \\
\hline
\end{array}
\]

2 法第二十六条第一項の経済産業省令で定める周波数の値は、その者が供給する電気の標準周波数に等しい値とする。



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