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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,電力系統の周波数の調整に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
a) 周波数の変動は,次のような問題が発生する恐れがあるため,周波数を一定の範囲内に調整する必要があり,電気事業法においても周波数の維持について\( \ \fbox { (1) } \ \)の努力義務が規定されている。
① 電気使用者側の問題の例
・工場の精密機械の誤動作
・高速度電動機を使用する紡績・製紙工場等での製品品質の低下
・周波数低下による電動機の\( \ \fbox { (2) } \ \)
・電気時計の誤差の増大
② 電力系統管理側の問題の例
・火力発電設備のタービンの振動
・発電機補機の出力減退
・電力会社間連系線の\( \ \fbox { (3) } \ \)の制御の困難化
b) 電力系統の周波数は需給バランスの影響を受け,負荷が発電を上回る場合には周波数は\( \ \fbox { (4) } \ \)する。
周波数変動に応じて出力調整を行う発電所を周波数制御用発電所という。我が国では,\( \ \fbox { (5) } \ \),貯水池式又は調整池式水力発電所と火力発電所の一部が周波数制御用発電所として利用されている。
〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 損失の減少 &(ロ)& 効率の低下 &(ハ)& 揚水発電所 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 低下 &(ホ)& 一般送配電事業者 &(ヘ)& 小売電気事業者 \\[ 5pt ]
&(ト)& 太陽電池発電所 &(チ)& 潮流 &(リ)& 原子力発電所 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 力率 &(ル)& 上昇 &(ヲ)& 不規則に変化 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 漏洩電流の増大 &(カ)& 電圧 &(ヨ)& 発電事業者 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
周波数の維持は電気事業法第26条及び電気事業法施行規則第38条に「標準周波数に等しい値」に維持するように規定されており,周波数が上昇及び低下すると,本問に示すような種々の問題が発生することになります。
有効電力のアンバランス≒周波数の変動,無効電力のアンバランス≒電圧の変動,と覚えておきましょう。
1.周波数変動による影響
①電力系統管理側
・火力発電設備のタービン(特に低圧タービン最終段翼)の振動
・ボイラ燃焼制御,給水制御の不安定化
・発電機補機の出力減退
・発電機電圧の不安定
・変圧器の過励磁
・電力会社間連系線の潮流制御の困難化
②電気使用者側
・工場の精密機械の誤動作
・電動機の回転数が変化することによる製品の悪化(特に紡績工場や製紙工場ではその影響が大きい)
・周波数低下による電動機の運転効率低下
・周波数積分偏差値の影響による電気時計の誤差の増大
2.周波数変動に対する対策
①平常時
主に水力発電所や火力発電所等の運転予備力を利用して,電力の需給バランスを調整します。
夜間の軽負荷時には,揚水発電所の揚水運転時にも周波数調整を行うことがあります。
②異常時
周波数の変動は,電源の脱落(周波数低下)や大容量の負荷の脱落(周波数の上昇)等で起こりますが,発電機の出力調整で収まらない場合は電力会社間同士での需給調整,発電所の緊急電源遮断や需要家の緊急負荷遮断を行います。
【解答】
(1)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)一般送配電事業者,(ヘ)小売電気事業者,(ヨ)発電事業者,等になると思います。
電気事業法第26条第1項に規定されている通り,周波数の値を維持する努力義務があるのは一般送配電事業者となります。
(2)解答:ロ
題意より,解答候補は(イ)損失の減少,(ロ)効率の低下,(ワ)漏洩電流の増大,になると思います。
ワンポイント解説「1.周波数変動による影響」の通り,最も適当なのは効率の低下となります。
(3)解答:チ
題意より,解答候補は(チ)潮流,(ヌ)力率,(カ)電圧,になると思います。
ワンポイント解説「1.周波数変動による影響」の通り,周波数の変動は有効電力に関連性が大きいので,最も適当なのは潮流となります。
(4)解答:ニ
題意より,解答候補は(ニ)低下,(ル)上昇,(ヲ)不規則に変化,になると思います。
有効電力の需給バランスが崩れ,負荷が発電を上回る場合は周波数は低下します。
イメージとしては,自転車の上り坂でペダルが重くなるイメージで良いと思います。
(5)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)揚水発電所,(ト)太陽電池発電所,(リ)原子力発電所,になると思います。
ワンポイント解説「2.周波数変動に対する対策」の通り,日本で周波数制御用発電所として利用されているのは揚水発電所となります。ただし,火力発電所を減らし原子力発電所の割合を増やすため,原子力発電所でも周波数調整が必要と言われていた時代もあったため,今後変化する可能性があることも覚えておきましょう。
<電気事業法第26条>
1 (1)一般送配電事業者は、その供給する電気の電圧及び周波数の値を経済産業省令で定める値に維持するように努めなければならない。
2 経済産業大臣は、一般送配電事業者の供給する電気の電圧又は周波数の値が前項の経済産業省令で定める値に維持されていないため、電気の使用者の利益を阻害していると認めるときは、一般送配電事業者に対し、その値を維持するため電気工作物の修理又は改造、電気工作物の運用の方法の改善その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
3 一般送配電事業者は、経済産業省令で定めるところにより、その供給する電気の電圧及び周波数を測定し、その結果を記録し、これを保存しなければならない。
<電気事業法施行規則第38条>
法第二十六条第一項(法第二十七条の二十六第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の経済産業省令で定める電圧の値は、その電気を供給する場所において次の表の上欄に掲げる標準電圧に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。
\[
\begin{array}{|c|c|}
\hline
標準電圧 & 維持すべき値 \\
\hline
100 \ \mathrm {V} & 101 \ \mathrm {V} \ の上下 \ 6 \ \mathrm {V} \ を超えない値 \\
\hline
200 \ \mathrm {V} & 202 \ \mathrm {V} \ の上下 \ 20 \ \mathrm {V} \ を超えない値 \\
\hline
\end{array}
\]
2 法第二十六条第一項の経済産業省令で定める周波数の値は、その者が供給する電気の標準周波数に等しい値とする。