《法規》〈電気施設管理〉[H21:問7]揚水発電所の運用とその役割に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,揚水発電所の電力系統における運用とその役割に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

揚水発電所は,上池と下池の二つの貯水池をもち,通常電力系統の負荷が小さくなる夜間の時間帯に,原子力発電や火力発電を使用して下池の貯水を上池へ揚水して貯え,電力系統の負荷が大きくなる時間帯に発電を行う\( \ \fbox {  (1)  } \ \)供給力として運用される。上池の自流分を除いた揚水発電所の総合効率は約\( \ 70 \ \mathrm {[%]} \ \)程度である。

停止中の揚水発電所は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)程度で起動して電力を供給することができるため,電力系統の負荷変動時あるいは事故時にも安定して電力供給を継続するために必要な供給予備力のうちの\( \ \fbox {  (3)  } \ \)予備力という役割を担っている。この予備力は,電力系統の負荷の\( \ 3 ~ 5 \ \mathrm {[%]} \ \)程度である。

また,揚水運転中の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)揚水発電設備は,系統に並列している発電機の運転台数が少ない場合に,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)に活用されている。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 高落差     &(ロ)& 数十分     &(ハ)& 周波数調整 \\[ 5pt ] &(ニ)& ミドル     &(ホ)& 数 秒     &(ヘ)& 数 分 \\[ 5pt ] &(ト)& 待 機     &(チ)& 運 転     &(リ)& ピーク \\[ 5pt ] &(ヌ)& 高調波抑制       &(ル)& 定 速     &(ヲ)& 瞬 動 \\[ 5pt ] &(ワ)& 可変速     &(カ)& 経済負荷配分       &(ヨ)& ベース \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

揚水発電所の役割とその運用方法に関する問題です。
平成21年に比べると近年は太陽光発電の割合が大幅に増えたため,揚水発電は夜間休日のみでなく,昼間に実施することも増えてきていますので,問題文に記載の内容も一部変わってきていることに注意して下さい。

1.近年の電力需給カーブと電源構成
近年は太陽光発電をはじめとした自然エネルギーの普及に伴い電力需給のバランスが変化してきており,特に下図に示すように気候が比較的穏やかで日照量も多い5月等は日中の発電量が電力需要を上回り,太陽光発電の出力制限をかける事例も発生してきています。
一方\( \ \mathrm {NAS} \ \)電池をはじめとした,電力貯蔵用の大型の蓄電池の技術も向上し,こちらは負荷平準化に貢献しています。
自然エネルギー普及前から使用されている電源はベース供給力(原子力,石炭火力,流れ込み式水力等),ミドル供給力(天然ガス等),ピーク供給力(石油火力,揚水式水力)に分けられていましたが,これに自然エネルギーの要素が加わり,より高度な需給調整が必要になってきたと言えるでしょう。

出典:自然エネルギー庁 広報パンフレット 日本のエネルギー
URL:https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2022.pdf

2.供給予備力の種類
日々刻々と変化する電力需要に対する供給予備力は,その変動量や応答時間等により以下の\( \ 3 \ \)種類に分けられています。

① 待機予備力
 主に火力発電所,特に石油火力発電所等で,発電機を停止して,数時間後に立ち上げられるような状態にしておくものを言います。
 電源系統や送電系統の不具合等により計画的に停止しなければならない場合等に立ち上げることがあります。

② 運転予備力
 部分負荷運転中の火力発電,ダム式や揚水式水力等数分後に供給力を上げることができる発電設備の割合です。
 不具合等で電源を即時停止しなければならない場合等に立ち上げることがあります。

③ 瞬動予備力
 ガバナフリー運転時の余力等があり,\( \ 10 \ \)秒以内に急速に出力を上昇して,部分負荷運転中の火力発電が出力上昇するまで,系統周波数を許容範囲内に維持する予備力となります。
 
3.可変速揚水発電システム
可変速揚水発電システムは下図のようなシステムで,二次励磁装置により固定子と回転子の差の周波数(回転数)をコントロールし,系統の周波数を調整します。
これはこれまで石油火力や天然ガス火力で調整していた系統周波数の調整を揚水発電所で行おうとするもので,発電運転している時のみでなく揚水運転している夜間も行うことができます。
これにより,火力発電所の燃料費を抑え,全体として経済的な運用を行うことができます。

【解答】

(1)解答:リ
題意より解答候補は,(ニ)ミドル,(リ)ピーク,(ヨ)ベース,等になると思います。
ワンポイント解説「1.近年の電力需給カーブと電源構成」の通り,揚水発電所はピーク供給力として運用されていましたが,近年は太陽光発電の発電見合いで昼間にも揚水発電を行うことがあります。

(2)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ロ)数十分,(ホ)数秒,(ヘ)数分,等になると思います。
ワンポイント解説「2.供給予備力の種類」の通り,揚水発電所は数分程度で起動できるので,急激な負荷変動時や事故時等でも速やかに対応することが可能です。

(3)解答:チ
題意より解答候補は,(ト)待機,(チ)運転,(ヲ)瞬動,等になると思います。
ワンポイント解説「2.供給予備力の種類」の通り,揚水発電所は運転予備力の役割を担っています。名称ですので覚えておきましょう。

(4)解答:ワ
題意より解答候補は,(イ)高落差,(ル)定速,(ワ)可変速,等になると思います。
ワンポイント解説「3.可変速揚水発電システム」の通り,可変速揚水発電システムにより,揚水時にも周波数調整を行うことができます。

(5)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)周波数調整,(ヌ)高調波抑制,(カ)経済負荷配分,等になると思います。
ワンポイント解説「3.可変速揚水発電システム」の通り,可変速揚水発電システムは,発電時のみでなく揚水時にも周波数調整を行うことができます。



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