《機械》〈直流機〉[H20:問1]直流電動機の電機子反作用に関する空欄穴埋問題

Contents

1 【問題】
2 【ワンポイント解説】
3 【解答】

【問題】

【難易度】★★☆☆☆（やや易しい）

次の文章は，直流電動機の電機子反作用に関する記述である。文中の$ \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ $に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び，その記号をマークシートに記入しなさい。

直流電動機の界磁巻線に電流を流せば，その起磁力により主磁束が発生し，負荷の増加により電機子に電流が流れると，電機子磁束が生じる。電機子磁束は主磁束に合成され，種々の現象を引き起こす。これを電機子反作用という。直流機に電機子電流が流れると界磁磁束が磁極片の片側に偏り，図のような電動機では，回転方向に対して磁極片の磁束密度は$ \ \fbox {　（１）　} \ $なる。鉄心に飽和現象がなければ磁束が偏っても$ \ 1 \ $極当たりの有効磁束は変化しない。しかし，実際には鉄心に飽和現象があるので，有効磁束は$ \ \fbox {　（２）　} \ $。このため，励磁電流が一定であれば，電機子電流の増加に伴い，回転速度は上昇する傾向がある。

電機子電流に起因する$ \ \fbox {　（３）　} \ $作用の影響により，電気的中性点は幾何学的中性点を離れて，電動機では$ \ \fbox {　（４）　} \ $方向に移動する。その結果，ブラシで短絡されるコイルは，磁束を切るため起電力を誘導し，過大な短絡電流が流れてブラシと整流子の間に火花を生じる。

また，電機子反作用による偏磁作用のためにギャップの磁束分布の偏りが大きくなると，磁束密度の高い部分にあるコイルの誘導起電力が大きくなる。この値がある限度を超えると，整流子片間にアーク短絡が生じ，次第に拡大して，ついに正負ブラシ間をアークで短絡するに至る。これを$ \ \fbox {　（５）　} \ $という。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&（イ）&　磁極前端が小さく，磁極後端が大きく \\[ 5pt ] &（ロ）&　磁極中央が大きく，磁極前端と後端は同じに \\[ 5pt ] &（ハ）&　磁極前端が大きく，磁極後端が小さく \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
&（ニ）&　プラッギング　　　　　　　&（ホ）&　減少する　　　　　&（ヘ）&　増　磁 \\[ 5pt ] &（ト）&　増加する　　　　　&（チ）&　フラッシオーバ　　　　　　　&（リ）&　交差磁化 \\[ 5pt ] &（ヌ）&　回　転　　　　　&（ル）&　ブラシレス　　　　　&（ヲ）&　磁気ひずみ \\[ 5pt ] &（ワ）&　変わらない　　　　　&（カ）&　軸　　　　　&（ヨ）&　反回転 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

直流機の電機子反作用に関する問題です。
$ \ 2 \ $種ではそもそも直流機に関する出題は少ない傾向にありますが，出題された場合には本問のように$ \ 3 \ $種より少し突っ込んだ問題になります。
合格点を目指す上では$ \ 3 \ $種の知識で十分なので，勉強効率を考えるならば$ \ 3 \ $種のテキストの復習，高得点を狙うならばさらに踏み込んだ学習が有効です。

1.直流機の電機子反作用
直流機は，図1に示すように，界磁電流により作られる界磁磁束に電機子電流により発生する磁束が合成され，磁束が強め合う部分と磁束が弱め合う部分が発生します。これにより，界磁磁束に乱れが生じ，これを電機子反作用と言います。電機子反作用は発電機と電動機では電機子巻線に流れる電流の向きが逆となるため，発電機では磁極出口側が大きく，電動機では磁極入口側が大きくなります。電機子反作用により以下の現象が発生します。
①主磁束の減少
　強め合う部分では磁気飽和により磁束はそれほど強くならず，弱め合う部分では磁束が弱くなるという交差磁化作用が発生するため，全体として磁束が減少します。
②電気的中性軸の移動
　磁束分布が乱れることで，電気的中性軸が発電機では回転方向と同方向，電動機では逆方向に移動します。
③整流子片での火花の発生
　磁束分布が乱れ，整流子片に起電力が生じ，整流子片間にアークが生じやすくなります。アークが大きい場合はさらに隣の整流子片間のアークと連なっていき，最悪の場合には正負の磁極間が短絡するフラッシオーバが発生します。

2.直流機の電機子反作用の対策
直流機の電機子反作用の対策として，補償巻線と補極があります。
①補償巻線
電機子電流に流れる電流の近くに逆方向の電流を流すことで，電機子巻線が作る磁束を打ち消します。具体的には，磁極片に巻線を施し，電機子巻線と直列に接続する方法がとられます。一般に構造が複雑なので，大形機で採用されます。

②補極
主磁極とは別に，幾何学的中性軸上に磁極を設けます。これにより幾何学的中性軸上の磁束を打ち消し，整流時のリアクタンス電圧も打ち消します。一般に構造が簡単なため，小形機で採用されます。

【解答】

(1)解答：ハ
題意より解答候補は，（イ）磁極前端が小さく，磁極後端が大きく，（ロ）磁極中央が大きく，磁極前端と後端は同じに，（ハ）磁極前端が大きく，磁極後端が小さく，になると思います。
ワンポイント解説「1.直流機の電機子反作用」の通り，直流電動機の電機子反作用においては磁極前端が大きく，磁極後端が小さくなります。

(2)解答：ホ
題意より解答候補は，（ホ）減少する，（ト）増加する，（ワ）変わらない，になると思います。
ワンポイント解説「1.直流機の電機子反作用」の通り，電機子反作用により磁束の強め合う部分と弱め合う部分がありますが，磁気飽和により有効磁束は全体として減少する方向となります。

(3)解答：リ
題意より解答候補は，（ヘ）増磁，（リ）交差磁化，等になると思います。
電機子反作用により磁束が強め合う部分と弱め合う部分ができることを交差磁化作用といいます。

(4)解答：ヨ
題意より解答候補は，（ヌ）回転，（カ）軸，（ヨ）反回転，になると思います。
ワンポイント解説「1.直流機の電機子反作用」の通り，電動機においては電気的中性点は反回転方向に移動します。

(5)解答：チ
題意より解答候補は，（ニ）プラッギング，（チ）フラッシオーバ，（ル）ブラシレス，（ヲ）磁気ひずみ，になると思います。
ワンポイント解説「1.直流機の電機子反作用」の通り，整流子片間にアーク短絡が生じ，次第に拡大して，ついに正負ブラシ間をアークで短絡する現象をフラッシオーバといいます。