《機械》〈回転機〉[H29:問1] 同期機の運転特性に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,同期機の運転特性に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

同期電動機は,定常運転時において,負荷の大小にかかわらず,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)と\( \ \fbox {  (2)  } \ \)とで定まる同期速度で回転する交流機であり,一般に定速度電動機として用いられる。同期電動機が一定の負荷にて定速運転を行っているとき,界磁電流を増加させると電機子電流の位相は界磁電流増加前よりも\( \ \fbox {  (3)  } \ \)方向に変化し,減少させると逆方向に変化する。これにより,運転力率を任意に調整することができる。
同期電動機を原動機で駆動すれば,同期発電機として動作させることができる。電機子電流及び端子電圧の大きさ並びに回転速度及び回転方向は電動機運転時と変えず,同期発電機として遅れ力率で運転する場合の界磁電流は,遅れ力率で運転していた同期電動機の界磁電流\( \ \fbox {  (4)  } \ \)。
同期電動機は,インバータ電源などを用いて\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を制御することによって可変速運転を行うことができる。一般に,誘導起電力は回転速度に比例して増減する。したがって,回転速度を定格速度より低くする場合,電源電圧と\( \ \fbox {  (2)  } \ \)との比を一定に維持するように制御を行えば,磁束をほぼ一定に保つことができる。
永久磁石同期電動機で速度制御を行う場合,高速領域で誘導起電力が電源電圧より高くなり,そのままでは回転速度を上げることができなくなるときがある。このような場合に,電機子電流の位相を進み方向に制御し,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)によって磁束を弱めるようにすれば,運転領域を高速側に拡大することができる。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 並列回路数     &(ロ)& 自己励磁作用     &(ハ)& より大きい \\[ 5pt ] &(ニ)& 後退     &(ホ)& 進み     &(ヘ)& と同じである \\[ 5pt ] &(ト)& 電機子反作用     &(チ)& 相数     &(リ)& 極数 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 電源周波数     &(ル)& 遅れ     &(ヲ)& 巻線数 \\[ 5pt ] &(ワ)& 界磁電圧     &(カ)& より小さい     &(ヨ)& 電機子漏れ磁束
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

同期機の運転特性を出題した問題です。幅広い知識を要求する問題で,設問内容も重要な内容が多く,良問と言えるでしょう。本問を解くためには以下の公式及び同期機の特性を理解しておく必要があります。

1.同期電動機の回転速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)
\[
\begin{eqnarray}
&&N_{\mathrm {s}}=\frac {120f}{p} \\[ 5pt ] &&f:電源周波数 p:極数 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

2.同期機の誘導起電力
同期機の誘導起電力(1相分)は以下の公式があります。
\[
\begin{eqnarray}
E=4.44KfN\phi \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \( \ E \ \):誘導起電力(相電圧) \( \ K \ \):巻線係数 \( \ f \ \):周波数 \( \ N \ \):1相あたりの電機子巻数 \( \ \phi \ \):磁束
電圧\( \ E \ \)と周波数\( \ f \ \)の比を一定とすれば,磁束\( \ \phi \ \)をほぼ一定に保つことができます。

3.同期機の\( \ \mathrm {V} \ \)曲線
同期機の\( \ \mathrm {V} \ \)曲線は図1の通りとなります。図の通り界磁電流を増加させると電機子電流は力率1を最下点として\( \ \mathrm {V} \ \)字に上昇していくという特性があります。発電機と電動機では遅れと進みが逆になります。

4.同期機の電機子反作用
電機子反作用は原理を説明している参考書もありますが,電験を受験する上では下表を暗記しておく方が効率的であると思います。

       表 1 同期機の電機子反作用
\[
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
&  電機子電流遅れ  &  電機子電流進み  \\
\hline
 発電機  & 減磁作用 & 増磁作用 \\
\hline
電動機 & 増磁作用 & 減磁作用 \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(1)解答:リ
(2)解答:ヌ
ワンポイント解説「1.同期電動機の回転速度」の\(\displaystyle N_{\mathrm {s}}=\frac {120f}{p}\)を理解していれば,自ずと解答は絞れます。また後半でインバータ電源の内容を説明しているので,(1)が(リ)極数,(2)が(ヌ)電源周波数となります。

(3)解答:ホ
図1のV曲線より,電動機においては界磁電流を増加させると,電機子電流の位相は進み方向に変化します。

(4)解答:ハ
図1のV曲線の通り,同じ電機子電流で運転する場合は,発電機の遅れ力率運転の方が,電動機の遅れ力率運転よりも界磁電流は大きくなります。

(5)解答:ト
ワンポイント解説の「4.同期機の電機子反作用」の通り,電機子反作用の増磁作用や減磁作用を利用して磁束を調整することが可能です。



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