《理論》〈電子理論〉[H21:問8]演算増幅器を用いた増幅回路に関する計算問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,図に示す演算増幅器を用いた増幅回路に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる数値を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

図の増幅回路において,\( \ V_{1} \ \)が\( \ 0.1 \ \mathrm {[V]} \ \)のときの出力直流電圧\( \ V_{2} \ \)を求める。まず,演算増幅器の性質から\( \ V_{3} \ \)は\( \ \fbox {  (1)  } \ \mathrm {[V]} \ \)であり,反転入力端子には電流は流れ込まない。このことから\( \ I_{a} \ \)は\( \ \fbox {  (2)  } \ \mathrm {[mA]} \ \)となる。したがって,\( \ V_{4} \ \)は\( \ \fbox {  (3)  } \ \mathrm {[V]} \ \)であり,\( \ I_{b} \ \)が\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {[mA]} \ \)であることがわかる。\( \ I_{a} \ \)と\( \ I_{b} \ \)の和が抵抗\( \ R_{c} \ \)に流れるので\( \ V_{2} \ \)は\( \ \fbox {  (5)  } \ \mathrm {[V]} \ \)となる。

〔問8の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 2     &(ロ)& 10     &(ハ)& 0.5 \\[ 5pt ] &(ニ)& 0.1     &(ホ)& -1     &(ヘ)& 1 \\[ 5pt ] &(ト)& -5     &(チ)& -4     &(リ)& 5 \\[ 5pt ] &(ヌ)& -0.1     &(ル)& 0     &(ヲ)& -0.5 \\[ 5pt ] &(ワ)& 0.2     &(カ)& -10     &(ヨ)& -0.2 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

演算増幅器を含む電子回路の計算問題です。
演算増幅器の問題は選択問題で出題されることがほとんどなので,必須の知識ではありませんが,パターンが決まっているものが多く計算量も少なめの問題が多いため,優先して選択しても良いかと思います。
本問も,演算増幅器の特性以外はキルヒホッフの法則で解ける問題です。

1.理想的な演算増幅器の特徴
 1.電圧増幅率が無限大である。したがって,無限大でない有限数が出力される時,入力端子間の電圧は\( \ 0 \ \mathrm {V} \ \)(バーチャルショート)となる。
 2.入力インピーダンスが無限大である。したがって入力端子に電流は流れない。
 3.出力インピーダンスがゼロである。

【解答】

(1)解答:ル
ワンポイント解説「1.理想的な演算増幅器の特徴」の通り,演算増幅器の非反転入力端子(+端子)が接地されているので,反転入力端子(-端子)の電位も\( \ 0 \ \mathrm {V} \ \)となり,\( \ V_{3}=0 \ \mathrm {[V]} \ \)と求められる。

(2)解答:ニ
ワンポイント解説「1.理想的な演算増幅器の特徴」の通り,演算増幅器の入力には電流が流れないので,\( \ I_{a} \ \)は抵抗\( \ R_{1} \ \)に流れる電流と等しく,
\[
\begin{eqnarray}
I_{a}&=&\frac {V_{1}-V_{3}}{R_{1}} \\[ 5pt ] &=&\frac {0.1-0}{1\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &=&0.1\times 10^{-3} \ \mathrm {[A]} → 0.1 \ \mathrm {[mA]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ホ
\( \ V_{4} \ \)はキルヒホッフの法則より,
\[
\begin{eqnarray}
V_{4}&=&V_{3}-R_{a}I_{a} \\[ 5pt ] &=&0-10\times 10^{3}\times 0.1\times 10^{-3} \\[ 5pt ] &=&-1 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:ハ
\( \ I_{b} \ \)はキルヒホッフの法則より,電流の向きに注意すると,
\[
\begin{eqnarray}
I_{b}&=&\frac {-V_{4}}{R_{b}} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{2\times 10^{3}} \\[ 5pt ] &=&0.5\times 10^{-3} \ \mathrm {[A]} → 0.5 \ \mathrm {[mA]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:チ
(2)及び(4)解答式より,抵抗\( \ R_{c} \ \)に流れる電流\( \ I_{c} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{c}&=&I_{a}+I_{b} \\[ 5pt ] &=&0.1\times 10^{-3}+0.5\times 10^{-3} \\[ 5pt ] &=&0.6\times 10^{-3} \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,求める電圧\( \ V_{2} \ \)はキルヒホッフの法則より,
\[
\begin{eqnarray}
V_{2}&=&V_{4}-R_{c}I_{c} \\[ 5pt ] &=&-1-5\times 10^{3}\times 0.6\times 10^{-3} \\[ 5pt ] &=&-4 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



記事下のシェアタイトル