《理論》〈電子理論〉[R01:問7]磁界中の電子の運動に関する計算問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,磁界中の電子の運動に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

図のように,磁束密度\( \ B\left( >0\right) \ \)の一様な磁界に直角に速度\( \ v_{0}\left( >0\right) \ \)で電子(質量\( \ m \ \),電荷\( \ -e \ \),\( \ e>0 \ \))が運動している。このとき電子は磁界からローレンツ力を受ける。その力の向きは電子の進行方向に直角で\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の方向であり,その大きさは\( \ F= \ \fbox {  (2)  } \ \)である。電子はこの力を向心力として半径\( \ r \ \)の円運動をすることから,\( \ r= \ \fbox {  (3)  } \ \)となる。また,電子が回転する角周波数は\( \ \omega = \ \fbox {  (4)  } \ \)である。ここに角周波数が\( \ \omega \ \)と等しい振動電界を外部から印加することにより,電子を効率よく加速したり減速したりすることができる。電子が加速された場合には,電子の速度\( \ v_{0} \ \)が増大することから,円運動の半径は増大する。このとき,電子の円運動の角周波数\( \ \omega \ \)の大きさは\( \ \fbox {  (5)  } \ \)。この現象はサイクロトロン共鳴と呼ばれ,高密度プラズマの生成や,固体の有効質量の測定などに応用されている。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \frac {eB}{m}   &(ロ)& 増大する   &(ハ)& \frac {mv_{0}^{2}}{eB} \\[ 5pt ] &(ニ)& 減少する   &(ホ)& \frac {mv_{0}}{eB}   &(ヘ)& \frac {eB}{v_{0}} \\[ 5pt ] &(ト)& \frac {m}{eB}   &(チ)& ev_{0}^{2}B   &(リ)& 紙面表から裏へ \\[ 5pt ] &(ヌ)& 紙面裏から表へ   &(ル)& \frac {ev_{0}B}{m}   &(ヲ)& 変わらない \\[ 5pt ] &(ワ)& ev_{0}B   &(カ)& 磁界 \ B \ と逆向き   &(ヨ)& \frac {eB}{2\pi m} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

磁界中の電子の運動に関する問題で,1種~3種まで非常に出題されやすい頻出項目となっています。

1.フレミングの左手の法則
中指を流の向き,人差し指を界の向きに合わせると,親指の方向にが働くという法則で,頭文字を取って「電磁力」と覚えます。
磁束密度の大きさ\( \ B \ \),電流の大きさ\( \ I \ \),直線状導体の長さを\( \ l \ \)とすると,導体に発生する電磁力\( \ F \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&BIl \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。
また,電荷\( \ -e \ \)の電子が速度\( \ v \ \)で動いている時,電子に働く力\( \ F \ \)の大きさは,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&evB \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

(1)解答:ヌ
電子の動く向きは電流の向きと逆になるので,それに注意すると,ワンポイント解説「1.フレミングの左手の法則」より,電子の動く向きは図1のようになる。したがって,電子に働く力は紙面裏から表に向かう方向となる。

(2)解答:ワ
ワンポイント解説「1.フレミングの左手の法則」より電子に働くローレンツ力\( \ F \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&ev_{0}B \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ホ
円運動の向心力は\( \ \displaystyle F=\frac {mv_{0}^{2}}{r} \ \)であり,それがローレンツ力\( \ F \ \)と等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {mv_{0}^{2}}{r} &=&ev_{0}B \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {mv_{0}}{r} &=&eB \\[ 5pt ] r&=&\frac {mv_{0}}{eB} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:イ
角周波数\( \ \omega \ \)は,\( \ \displaystyle \frac {v_{0}}{r} \ \)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
\omega &=&\frac {v_{0}}{r} \\[ 5pt ] &=&v_{0}\times \frac {eB}{mv_{0}} \\[ 5pt ] &=&\frac {eB}{m} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ヲ
(4)解答式より,角周波数\( \ \omega \ \)は\( \ v_{0} \ \)に依存しないので,角周波数の大きさは変わらない。



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