《電力》〈送電〉[H20:問11]地中電線路の絶縁劣化診断方法に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

地中電線路の絶縁劣化診断方法として,関係ないものは次のうちどれか。

(1) 直流漏れ電流法

(2) 誘電正接法

(3) 絶縁抵抗法

(4) マーレーループ法

(5) 絶縁油中ガス分析法

【ワンポイント解説】

地中電線路の絶縁劣化診断方法に関する問題です。
内容としては\( \ 2 \ \)種以上のレベルの問題と思いますが,故障点位置標定の内容が頭に入っていれば正答は選択可能かと思います。
劣化診断方法自体の出題は少ないので,内容は参考程度に見ておいて下さい。

1.地中電線路の絶縁劣化診断方法
①絶縁抵抗法
絶縁抵抗計を用いて,ケーブルの導体とシース間の絶縁抵抗を測定する方法です。簡易的に絶縁不良を測定できる方法ですが絶縁抵抗のみで良否は判断せず,異常があった場合には他の診断方法で良否を判断します。

②誘電正接法
交流ブリッジ回路を利用して,ケーブルに流れる電圧から\( \ 90° \ \)進んだ電流成分\( \ I_{\mathrm {C}} \ \)と電圧と同相の成分\( \ I_{\mathrm {R}} \ \)の比である誘電正接\( \ \displaystyle \tan \delta =\frac {I_{\mathrm {R}}}{I_{\mathrm {C}}} \ \)を測定する方法です。ケーブルが劣化すると\( \ \tan \delta \ \)が増加します。

③損失電流法
\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルにおいて,ケーブルに交流電圧を印加し,ケーブル絶縁体に流れる充電電流から\( \ 90° \ \)進み位相の成分を除去することで印加電圧と同相の電流成分(損失電流)を抽出し,その中に含まれる高調波電流(主に第\( \ 3 \ \)高調波電流)をフーリエ解析することにより得ることで劣化状況を診断します。

④直流漏れ電流測定
ケーブルに直流電圧を印加し,漏れ電流の大きさや時間変化・三相不平衡などを確認します。直流であるため計測装置が比較的小形で容量も小さくて済みます。

⑤残留電荷法
\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルにおいて,まずケーブルに直流電圧を印加して絶縁体中に空間電荷を蓄積させ,その後接地することで水トリー発生場所以外の電荷を放出させます。その後さらに交流電圧を印加すると,水トリー発生場所からも電荷が放出され,この電荷を測定することで水トリーでの絶縁劣化を診断します。

⑥耐電圧法
\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルにおいて,通常使用する電圧よりも高い試験電圧をケーブルに印加し,試験結果から水トリー劣化の進行度を判断しケーブルの余寿命を診断します。劣化レベルに応じて試験電圧の大きさや周波数を選定します。

⑦油中ガス分析
\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルにおいて,絶縁油中に溶解した分解生成ガスを組成と量を分析することで絶縁の劣化を診断します。

⑧絶縁油の特性試験
\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルにおいて,絶縁油中の全酸価,体積抵抗率,誘電正接,水分量,絶縁破壊電圧等を測定し,絶縁特性を診断します。

2.マーレーループ法
ホイートストンブリッジの原理を利用して,地絡事故点までの距離を測定する方法です。図1のように健全相と事故相があり,健全相側の抵抗を\( \ R_{1} \ \),事故相側の抵抗を\( \ R_{2} \ \)とすると,事故点までの距離\( \ l \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {R_{1}}{2L-l}&=&\frac {R_{2}}{l} \\[ 5pt ] R_{1}l&=&R_{2}\left( 2L-l\right) \\[ 5pt ] l&=&\frac {2R_{2}}{R_{1}+R_{2}}L \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.地中電線路の絶縁劣化診断方法」の通り,直流漏れ電流法はケーブルの絶縁劣化診断方法の一つです。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.地中電線路の絶縁劣化診断方法」の通り,誘電正接法はケーブルの絶縁劣化診断方法の一つです。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.地中電線路の絶縁劣化診断方法」の通り,絶縁抵抗法はケーブルの絶縁劣化診断方法の一つです。

(4)誤り
ワンポイント解説「2.マーレーループ法」の通り,マーレーループ法は故障点位置標定法の一つで,絶縁劣化診断法ではありません。

(5)正しい
ワンポイント解説「1.地中電線路の絶縁劣化診断方法」の通り,絶縁油中ガス分析法はケーブルの絶縁劣化診断方法の一つです。