《電力》〈火力〉[H23:問2]火力発電所のボイラ設備の説明に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

火力発電所のボイラ設備の説明として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) ドラムとは,水分と飽和蒸気を分離するほか,蒸発管への送水などをする装置である。

(2) 過熱器とは,ドラムなどで発生した飽和蒸気を乾燥した蒸気にするものである。

(3) 再熱器とは,熱効率の向上のため,一度高圧タービンで仕事をした蒸気をボイラに戻して加熱するためのものである。

(4) 節炭器とは,ボイラで発生した蒸気を利用して,ボイラ給水を加熱し,熱回収することによって,ボイラ全体の熱効率を高めるものである。

(5) 空気予熱器とは,火炉に吹き込む燃焼用空気を,煙道を通る燃焼ガスによって加熱し,ボイラ効率を高めるための熱交換器である。

【ワンポイント解説】

火力発電所のボイラ設備に関する問題です。
それぞれを個別に覚えるのではなく,以下に説明するように全体をまとめて理解すると覚えやすくなると思います。
最終的には図1のような概略フローを描けるようになると理想です。

1.主なボイラ付属設備
ボイラ廻りの給水系統と空気系統の概略フローは図1のようになります。それぞれの役割は以下の通りです。
①蒸気ドラム
 水と飽和蒸気を分離し,水は降水管へ,飽和蒸気は過熱器に送ります。
②過熱器
 蒸気ドラムから発生した湿気を含む飽和蒸気をさらに加熱して乾いた過熱蒸気にします。
③再熱器
 高圧タービンで仕事をした蒸気を再加熱し,中低圧タービンへ送ります。
④降水管
 蒸気ドラムから降りてきた水を蒸発管へ送ります。
⑤蒸発管
 火炉(燃焼室)の空気と熱交換をし,水を蒸気にします。
⑥節炭器
 ボイラの燃焼ガスと給水を熱交換し,給水を加温し熱効率を向上させます。
⑦空気予熱器
 ボイラの燃焼ガスと燃焼用空気を熱交換し,熱効率を向上させます。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
ドラム(蒸気ドラム)は,水分と飽和蒸気を分離し,降水管を経て蒸発管へ送水する装置となります。

(2)正しい
過熱器は,ドラムで発生した湿気を含む飽和蒸気をさらに加熱し,乾燥した過熱蒸気にする装置です。

(3)正しい
再熱器は,過熱器後の高温燃焼ガス利用による熱効率向上及びタービン最下段での蒸気の湿り度上昇を防止しタービン翼の劣化防止,等のために高圧タービンで仕事をした蒸気を再度加熱して中低圧タービンへ送るものです。

(4)誤り
節炭器は,火炉で燃焼した後の燃焼ガスを利用して,ボイラ給水を加熱し,熱効率を高めるものです。

(5)正しい
空気予熱器は,燃焼用空気と燃焼ガスを熱交換し燃焼ガスの熱回収をして熱効率を高めるものです。