《電力》〈送電〉[H25:問10]地中電線における各損失に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

地中電線の損失に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 誘電体損は,ケーブルの絶縁体に交流電圧が印加されたとき,その絶縁体に流れる電流のうち,電圧に対して位相が90[°]進んだ電流成分により発生する。

(2) シース損は,ケーブルの金属シースに誘導される電流による発生損失である。

(3) 抵抗損は,ケーブルの導体に電流が流れることにより発生する損失であり,単位長当たりの抵抗値が同じ場合,導体電流の\( \ 2 \ \)乗に比例して大きくなる。

(4) シース損を低減させる方法として,クロスボンド接地方式の採用が効果的である。

(5) 絶縁体が劣化している場合には,一般に誘電体損が大きくなる傾向がある。

【ワンポイント解説】

地中送電線ではケーブルを使用しますが,ケーブルを使用することで特有の損失が発生します。架空送電線との比較としてよく出題されますので,理解しておくようにしておきましょう。

1.ケーブルに発生する損失
①抵抗損
導体の抵抗により発生する損失で,導体電流の\( \ 2 \ \)乗に比例します。

②誘電体損
ケーブルの絶縁体部に流れる電流のうち,抵抗成分に流れる電流による損失です。ケーブルは図1の断面図を見ると分かると思いますが,コンデンサを巻いたような形状となっています。この誘電体部が劣化してくると抵抗分が大きくなる傾向があり,損失が増加します。

③シース損
ケーブルの絶縁体部の外側に巻く金属(シース)を流れる循環電流と渦電流による損失です。ケーブル導体を流れる電流から発生する磁束により電圧が誘起され発生します。

2.クロスボンド接地方式
亘長の長い単心ケーブルで使用される方式で,ケーブルのシース部を絶縁接続して,図2のような回路を構成することで,各相のリアクタンスのバランスを取り,各相に流れるシース電流のベクトル和をほぼ零にしようとする方式です。送電線のねん架と似たような対策と言えます。

【解答】

解答:(1)
(1)誤り
電圧に対して位相が90[°]進んだ電流成分はコンデンサ成分となるので,損失とはならず,電圧に対して同相の抵抗成分が損失となります。

(2)正しい
問題文の通り,ケーブルの金属シースに誘導される電流による発生損失です。

(3)正しい
問題文の通り,ケーブルの導体に電流が流れることにより発生する損失であり,導体電流の\( \ 2 \ \)乗に比例します。

(4)正しい
ワンポイント解説「2.クロスボンド接地方式」の通り,クロスボンド接地方式の採用により,各相に流れるシース電流のベクトル和が小さくなるため,シース損が低減されます。

(5)正しい
問題文の通り,絶縁体が劣化すると,抵抗分が増加し誘電体損は大きくなります。