《電力》〈送電〉[R01:問9]架空送電線の構成部品に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

架空送電線路の構成部品に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 鋼心アルミより線は,アルミ線を使用することで質量を小さくし,これによる強度の不足を,鋼心を用いることで補ったものである。

(2) 電線の微風振動やギャロッピングを抑制するために,電線にダンパを取り付け,振動エネルギーを吸収する方法がとられる。

(3) がいしは,電線と鉄塔などの支持物との間を絶縁するために使用する。雷撃などの異常電圧による絶縁破壊は,がいし内部で起こるように設計されている。

(4) 送電線やがいしを雷撃などの異常電圧から保護するための設備に架空地線がある。架空地線には,光ファイバを内蔵し電力用通信線として使用されるものもある。

(5) 架空送電線におけるねん架とは,送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われるもので,ジャンパ線を用いて電線の配置を入れ替えることができる。

【ワンポイント解説】

この問題では様々な設備が紹介されています。特に出題されやすいと考えられる3項目をワンポイント解説と紹介します。

1.鋼心アルミより線
鋼心アルミより線は,中心に亜鉛めっき鋼より線,その周囲に硬アルミ線をより合わせた電線で,アルミの軽量かつ高い導電性と,鋼の強い引張強さとをもつ代表的な架空送電線です。アルミニウムは,純銅と比較して導電率が\( \ \displaystyle \frac {2}{3} \ \)程度と低いですが,比重が\( \ \displaystyle \frac {1}{3} \ \)程度であるため,電気抵抗と長さが同じ電線の場合,アルミニウム線の質量は銅線のおよそ半分でとなります。

2.微風振動
風速\( \ 5 \ \mathrm {m/s} \ \)以下の比較的緩やかな風が電線と垂直方向に吹くと電線の風下側にカルマン渦が生じ,上下に振動する現象です。繰り返し疲労が蓄積すると,素線切れや断線を引き起こす可能性があります。
特徴
 ①電線の固有振動数と一致すると発生するため,径間の長い場合や,重量の軽い場合に発生しやすい。
 ②風速が緩やかでかつ一定の時発生しやすいため,山間部よりも平野部に発生しやすい。
 ③気流が安定している早朝あるいは日没に発生しやすい。
対策
 ①ダンパを取付け振動のエネルギーを吸収し,減衰を早める。
 ②アーマロッドを使用して,電線を補強し振動のエネルギーを吸収する。

3.ギャロッピング
電線に非対称な氷雪が付着し肥大化すると,微風振動と同様に電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象です。
特徴
 ①スペーサのために電線が回転できない多導体方式の方が発生しやすい。
 ②風圧を受けるエネルギーが大きいため,径間によって振幅が10m以上になる場合もあり,相関短絡を起こしやすい。
対策
 ①難着雪リングを取り付け,着雪を防止する。
 ②相関スペーサを取り付け,短絡事故を防止する。
 ③ルート選定で風の主方向と直角に当たりやすくなるところ,冬季風が直接さらされる尾根上などを避けるようにする。

【解答】

解答:(3)
(1)正しい
問題文の通りです。ワンポイント解説「1.鋼心アルミより線」の通り,アルミ線を使用することで質量を小さくし,これによる強度の不足を,鋼心を用いることで補ったものとなります。

(2)正しい
ワンポイント解説「2.微風振動」「3.ギャロッピング」の通り,ダンパを取付けると,振動のエネルギーを吸収し減衰を早める効果があります。

(3)誤り
がいしは,電線と鉄塔などの支持物との間を絶縁するために使用しますが,図2の通り,雷撃などの異常電圧による絶縁破壊は,がいしの横に設置されているアークホーンで起こるように設計されています。

(4)正しい
送電線やがいしを雷撃などの異常電圧から保護するための設備に架空地線があり,図2のように送電線の上部にあり,雷が送電線ではなく架空地線に落ちるように遮へい角を設計されています。架空地線には,光ファイバを内蔵し電力用通信線として使用されるものもあります。

(5)正しい
問題文の通り,架空送電線におけるねん架とは,送電線各相の作用インダクタンスと作用静電容量を平衡させるために行われます。