《電力》〈送電〉[H22:問11]地中電力ケーブルの送電容量増大対策に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

地中電力ケーブルの送電容量を増大させる現実的な方法に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。

(1) 耐熱性を高めた絶縁材料を採用する。

(2) 地中ケーブル線路に沿って布設した水冷管に冷却水を循環させ,ケーブルを間接的に冷却する。

(3) \( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルの絶縁油を循環・冷却させる。

(4) \( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁体中に冷却水を循環させる。

(5) 導体サイズを大きくする。

【ワンポイント解説】

地中ケーブルの特徴に関する問題です。
ケーブルの送電容量は主に絶縁材料の温度により決まります。送電容量を高めるためには温度を上げないようにする対策が最も効果的です。

1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの特徴
\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの特徴のうち,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルと比較した特徴は以下の通りとなります。

①絶縁体に架橋ポリエチレンを使用し,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルのように絶縁油を使用しないため,給油設備を必要とせず,火災のリスクも少ない。

②連続使用時の最高許容温度が\( \ 90 \ \)℃と高いので,許容電流が大きくなり,送電容量が大きくなる。

③誘電正接\( \ \mathrm {tan} \delta \ \)(誘電正接)や比誘電率が小さいため誘電体損失や充電電流が小さくなる。

④絶縁体自体を薄くでき軽量であるため,取り回しが良い。

⑤耐薬品性,耐摩耗性,耐衝撃性に優れる。

⑥水分が含まれると水トリーと呼ばれる樹枝状に絶縁劣化する現象が発生する。

2.ケーブルの送電容量増大対策
ケーブルの送電容量はケーブルの温度により決まるので,以下の対策等が有効となります。
・発生熱の低減
 導体サイズを大きくして導体による抵抗損を低減する,誘電損の小さい絶縁材料を選定する,等があります。
・冷却水による強制冷却
 ケーブルの管路に冷却水を通水する(直接冷却方式),ケーブルの線路に沿って水冷管を敷設し冷却水を通水する(間接冷却方式),ケーブル内部に冷却媒体を循環させる(内部冷却方式),等があります。
・耐熱性の高い絶縁材料の選定
 耐熱性の高い架橋ポリエチレン等の絶縁体を採用します。

【解答】

解答:(4)
(1):正しい
ワンポイント解説「2.ケーブルの送電容量増大対策」の通り,ケーブルの送電容量は一般的に絶縁材料の温度により決まるので,耐熱性を高めた絶縁材料を採用することは送電容量を増大させる方法として有効です。

(2):正しい
ワンポイント解説「2.ケーブルの送電容量増大対策」の通り,地中ケーブル線路に沿って布設した水冷管に冷却水を循環させることは送電容量を増大させる効果があります。

(3):正しい
ワンポイント解説「2.ケーブルの送電容量増大対策」の通り,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルの絶縁油を循環し冷却することは送電容量を増大させる効果があります。

(4):誤り
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの特徴」の通り,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの絶縁体中に冷却水を循環させると水トリー現象が発生してしまう可能性がありますので,冷却水の循環は採用できません。

(5):正しい
ワンポイント解説「2.ケーブルの送電容量増大対策」の通り,導体サイズを大きくすることで,抵抗損が低減し送電容量を増大することが可能となります。