《電力》〈火力〉[R2:問3]火力発電所で使用される保護装置に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次のa)~e)の文章は,汽力発電所の保護装置に関する記述である。

これらの文章の内容について,適切なものと不適切なものの組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

a) 蒸気タービンの回転速度が定格を超える一定値以上に上昇すると,自動的に蒸気止弁を閉じて,タービンを停止する非常調速機が設置されている。

b) ボイラ水の循環が円滑に行われないとき,水管の焼損事故を防止するため,燃料を遮断してバーナを消火させる燃料遮断装置が設置されている。

c) 負荷の緊急遮断等によって,ボイラ内の蒸気圧力が一定限度を超えたとき,蒸気を放出させて機器の破損を防ぐため,蒸気加減弁が設置されている。

d) 蒸気タービンの軸受油圧が異常低下したとき,タービンを停止させるトリップ装置が設置されている。

e) 発電機固定子巻線の内部短絡を検出・保護するために,比率差動継電器が設置されている。

\[
\begin{array}{cccccc}
& \mathrm {a} & \mathrm {b} & \mathrm {c} & \mathrm {d} & \mathrm {e} \\
\hline
(1) &  適切  &  適切  &  不適切  &  適切  &  適切  \\
\hline
(2) &  不適切  &  不適切  &  不適切  &  不適切  &  適切  \\
\hline
(3) &  適切  &  適切  &  不適切  &  適切  &  不適切  \\
\hline
(4) &  不適切  &  適切  &  適切  &  不適切  &  適切  \\
\hline
(5) &  不適切  &  不適切  &  適切  &  適切  &  不適切  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

火力発電は危険物の燃料や高温高圧の蒸気を使用するため,様々な安全装置が設けられています。これだけ地震をはじめとする天災の多い日本で火力発電の大きな事故が滅多に発生しないのは,技術者のスキルが高いのと本問で触れるような非常に優れた保護機能を有しているからと言えるでしょう。

1.火力発電所の保安装置
火力発電所の安全を確保するため,様々な保安装置が設けられていますが,主なものを以下に紹介します。
①ボイラ保護(燃料遮断)
・炉内圧異常上昇
・給水不良(蒸気ドラムレベル低)
・ボイラ循環ポンプ異常
・燃料供給不安定
・通風機停止
・タービン又は発電機異常停止
・ボイラ蒸気圧力異常上昇(ただし,ボイラ停止ではなく安全弁で放出)

②タービン保護(蒸気遮断)
・タービン回転数異常上昇(非常調速機動作)
・タービン振動大
・タービン軸受油圧低下
・スラスト軸受(タービン軸方向の軸受)摩耗
・復水器真空度異常低下
・復水器排気温度上昇
・ボイラ又は発電機異常停止

③発電機保護(発電機停止)
・過電流継電器動作(短絡もしくは過負荷事故)
・比率差動継電器動作(発電機母線側と中性点側の電流差異常)
・界磁喪失継電器動作(励磁がなくなったとき)
・地絡過電流継電器動作(発電機中性点の電流が異常上昇)

【解答】

解答:(1)
a)適切
蒸気タービンの回転速度がある値を超えると非常調速機が動作し,タービンを停止するため自動的に蒸気止弁を閉じます。

b)適切
ボイラ水の循環が円滑に行われないとボイラが空焚きとなり水管が焼損してしまう可能性があり,水管の焼損事故を防止するため,燃料を遮断してバーナを消火させる燃料遮断装置が設置されています。

(3)不適切
ボイラ内の蒸気圧力が一定限度を超えたとき,蒸気を放出させるために安全弁がボイラ上部に設置されています。

(4)適切
蒸気タービンの軸受油圧が異常低下したときには,タービンを停止させるトリップ装置が設置されています。

(5)適切
発電機固定子巻線の内部短絡が発生すると,発電機の両端の電流(発電機母線側と中性点側の電流)の大きさや向きが一致しないため,比率差動継電器を動作させ発電機を停止させます。