《電力》〈新エネルギー発電〉[R2:問5]太陽光発電設備の構成及び特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,太陽光発電に関する記述である。

太陽光発電は,太陽電池の光電効果を利用して太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する。地球に降り注ぐ太陽光エネルギーは,\( \ 1 \ \mathrm {m^{2}} \ \)当たり\( \ 1 \ \)秒間に約\( \ \fbox {  (ア)  } \ \mathrm {kJ} \ \)に相当する。太陽電池の基本単位はセルと呼ばれ,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \mathrm {V} \ \)程度の直流電圧が発生するため,これを直列に接続して電圧を高めている。太陽電池を系統に接続する際は,\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)により交流の電力に変換する。

一部に地域では太陽光発電の普及によって\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)に電力の余剰が発生しており,余剰電力は揚水発電の揚水に使われているほか,大容量蓄電池への電力貯蔵に活用されている。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  10  &  1  &  逆流防止ダイオード  &  日中  \\
\hline
(2) &  10  &  10  &  パワーコンディショナ  &  夜間  \\
\hline
(3) &  1  &  1  &  パワーコンディショナ  &  日中  \\
\hline
(4) &  10  &  1  &  パワーコンディショナ  &  日中  \\
\hline
(5) &  1  &  10  &  逆流防止ダイオード  &  夜間  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

近年の太陽光発電の普及に伴い,太陽光発電は毎年のように出題される重要分野となってきました。
今後の電気主任技術者としては,太陽光発電の知識はほぼ必須となってくると考えられるので,その特徴をしっかりと理解しておいて下さい。

1.太陽光発電の特徴
・太陽から注がれるエネルギーを利用するため,エネルギーが無尽蔵にある
・発電時に温室効果ガスである二酸化炭素\( \ \mathrm {CO_{2}} \ \)を発生しない。
・日射量が昼間に多いため,需要ピークと重なる昼間に多く発電する。
・発電量や出力が日照量,気温等の気象条件に大きく左右され,安定的に発電しない。
・半導体の特性を利用する発電なので,出力が直流となり,インバータで交流に変換する必要がある。
・太陽光の光エネルギーを電気エネルギーにするエネルギー変換効率が\( \ 15~20 \ \mathrm {%} \ \)程度と低い。

2.パワーコンディショナ
太陽光発電で発電した直流を交流に変換するインバータをはじめとする,以下の機器で構成されています。
①昇圧チョッパ
 日照の変化により変動する太陽電池の電圧を一定に昇圧します。
②インバータ
 直流電力を交流に変換します。
 電力は太陽電池の出力変動に応じて,最大電力を得られるようにする最大電力追従制御(\( \ \mathrm {MPPT} \ \)制御)を行います。
③絶縁変圧器
 事故時等に太陽電池の直流が配電線に流出しないようにします。
④連系用リアクトル
 出力の電流の大きさを制御します。
⑤系統連系保護装置
 単独運転,周波数,電圧等の異常を検出して,系統から切り離します。

3.太陽電池の単位
太陽電池の単位は小さいものからセル→モジュール→ストリング→アレイとなっています。ストリング以外は良く使う言葉なので覚えておいた方が良いですね。

①セル
 太陽電池の最小単位で,一辺約\( \ 10 \ \mathrm {cm} \ \)程度の四角形の部分となります。街中で太陽電池システムを見ると分かると思いますが,モジュールの中のさらに分けられている部分です。出力電圧は\( \ 0.5~0.6 \ \mathrm {V} \ \)程度となっています。(本問では\( \ 1 \ \mathrm {V} \ \)となっていますが,オーダーで覚えておくと良いでしょう。)

②モジュール
 セルを直並列に接続したもので,製品としてパネルとなって売られている単位となります。現在出力が\( \ 250~270 \ \mathrm {W} \ \)程度のものが主流であると思いますが,年々出力は上がっており,価格も下がっています。

③ストリング
 モジュールを直列接続したものを言います。

④アレイ
 ストリングを並列接続したもので,屋根等の家庭用の太陽光発電システムであればアレイを乗せた状態,産業用の太陽光発電システムであればアレイを複数接続したものになります。

【解答】

解答:(3)
(ア)
太陽光が地球に降り注ぐ光エネルギーのエネルギー密度は,\( \ 1 \ \mathrm {m^{2}} \ \)当たり約\( \ 1 \ \mathrm {kW}\left( = 1 \ \mathrm {kJ/s}\right) \ \)程度です。

(イ)
ワンポイント解説「3.太陽電池の単位」の通り,太陽電池のセルは晴天時でも約\( \ 1 \ \mathrm {V} \ \)程度の直流電圧が発生しか発生しないので,太陽光発電ではセルを直列につないで使用します。

(ウ)
ワンポイント解説「2.パワーコンディショナ」の通り,直流の電力を交流に変換するのはパワーコンディショナとなります。

(エ)
ワンポイント解説「1.太陽光発電の特徴」の通り,太陽光発電の発電量は日中が多く,特に春から夏にかけて気温があまり高くなく,かつ日射量の多い日の日中に電力の余剰が発生している場所もあります。