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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
架空送電線路に関連する設備に関する記述として, 誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 架空送電線を鉄塔などに固定する絶縁体としてがいしが用いられている。アークホーンをがいしと併設することで,雷撃等をきっかけに発生するアーク放電からがいしを保護することができる。
(2) 架空送電線への雷撃を防止するために架空地線が設けられており,遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。
(3) 超高圧の架空送電線では,スペーサを用いた多導体化により,コロナ放電の抑制が図られている。スペーサはギャロッピングの防止にも効果的である。
(4) 電線に一様な微風が吹くと,電線の背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動するサブスパン振動が発生する。振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けることで,この振動による電線の断線防止が図られている。
(5) 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると,鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで,逆フラッシオーバの抑制が図られている。
【ワンポイント解説】
送電線の落雷や振動に関する問題は非常に多く出題され,過去問を勉強すると毎年のように出題されていることがわかります。
少し分量は多いかもしれませんが,すべて重要事項となりますので,必ず試験までにマスターしておきましょう。
本問は令和2年問6の再出題となります。
1.電線の振動
電線の振動は以下に示すような様々な要因で起こります。電線が振動すると隣の電線と接触し,短絡事故が発生したり,振動による応力で,電線の損傷や破断等が発生する可能性があります。
①微風振動
風速\( \ 5 \ \mathrm {m/s} \ \)以下の比較的緩やかな風が電線と垂直方向に吹くと電線の風下側にカルマン渦が生じ,上下に振動する現象です。繰り返し疲労が蓄積すると,素線切れや断線を引き起こす可能性があります。
特徴
①電線の固有振動数と一致すると発生するため,径間の長い場合や,重量の軽い場合に発生しやすい。
②風速が緩やかでかつ一定の時発生しやすいため,山間部よりも平野部に発生しやすい。
③気流が安定している早朝あるいは日没に発生しやすい。
対策
①ダンパを取付け振動のエネルギーを吸収し,減衰を早める。
②アーマロッドを使用して,電線を補強し振動のエネルギーを吸収する。
②ギャロッピング
電線に非対称な氷雪が付着し肥大化すると,微風振動と同様に電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象です。
特徴
①スペーサのために電線が回転できない多導体方式の方が発生しやすい。
②風圧を受けるエネルギーが大きいため,径間によって振幅が\( \ 10 \ \mathrm {m} \ \)以上になる場合もあり,相間短絡を起こしやすい。
対策
①難着雪リングを取り付け,着雪を防止する。
②相間スペーサを取り付け,短絡事故を防止する。
③ルート選定で風の主方向と直角に当たりやすくなるところ,冬季風が直接さらされる尾根上などを避けるようにする。
③サブスパン振動
電線のスペーサとスペーサの間(サブスパン)で生じる振動。原理はギャロッピングと同じく電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象です。
特徴
①振動周波数が\( \ 1~2 \ \mathrm {Hz} \ \)で,振幅が最大\( \ 50 \ \mathrm {cm} \ \)程度となる。
対策
①スペーサの間隔を適正に配置する。
②防振装置を採用する。
③ルート選定で風の主方向と直角に当たりやすくなるところを避けるようにする。
④コロナ振動
電線下面にある水滴が滴下する際,コロナ放電により電線を蹴るとその反動で揚力を生じ,電線の固有振動数と一致するとコロナ振動を生じます。
特徴
①降雨量が多く(\( \ 5 \ \mathrm {mm/h} \ \)以上)で,無風の時発生しやすい。
②振幅は\( \ 10 \ \mathrm {cm} \ \)程度である。
対策
①多導体方式を採用し,コロナ放電が発生しにくいようにする。
②がいし連結数を見直す等で重量を調整し,電線の固有振動数を調整する。
⑤スリートジャンプ
氷雪が着氷し落下した際の跳ね上がりによる振動。一時的なもので,減衰性ですが,相間短絡を引き起こす可能性があります。
特徴
①跳ね上がりが大きいと相間短絡を引き起こす。
②風の影響ではないため,持続性はない。
対策
①難着雪リングを取り付け,着雪を防止する。
②相間スペーサを取り付け,短絡事故を防止する。
③電線同士の水平方向に間隔を設け(オフセット),電線の真上に電線がないようにする。
2.電線の振動対策
①ダンパの設置
ダンパの設置により,振動エネルギーを吸収します。
②アーマロッドによる補強
電線に巻き付ける物で,振動の吸収と電線の補強を行います。下図のダンパの上の電線に巻き付けられている導体がアーマロッドです。
③スペーサの設置
多導体にスペーサを設置し,電線同士の接触を防止します。
④難着雪リングの取付
電線からすべり落ちてきた雪をリング部で落下させることにより,氷雪の付着と成長を防止します。
出典:TDKテクノマガジンHP
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/ninja/099
3.多導体方式の特徴
送電線の\( \ 1 \ \)相あたり\( \ 2 \ \)条以上の電線を用いる方法で,以下の特徴があります。
①コロナ臨界電圧が高くなる。 \( \ ≒ \ \) コロナ(電線表面での放電現象)が発生しにくくなる。
②インダクタンスが減少し,静電容量が増大する。
③同一断面積の単導体と比較すると表皮効果(導体内の電流分布が外側に集中する現象)が小さくなる。
4.架空地線
<架空地線の役割>
架空地線は電線の上部,主に鉄塔の一番上に設ける裸電線で,以下のような役割があります。
①送電線への直撃雷を防止する。(遮へい角が小さい程遮へい効果は高い。)
②誘導雷(雷雲の電荷により反対の電荷が電線に現れ,落雷により雷雲の電荷がなくなるために電線で大きな電荷の移動が起こる現象)を軽減する。
③通信線への電磁誘導障害を軽減する。
<架空地線落雷時の対策>
また,架空地線や鉄塔に落雷した際の逆フラッシオーバに対する対策として,以下のような対策が取られます。
①埋設地線で鉄塔と大地の接地抵抗を小さくする。
②アークホーンでがいしの損傷を防止する。(逆フラッシオーバ自体の対策ではありません。)
③\( \ 2 \ \)回線送電線におけるがいしの連結個数に差をつけて,両回線同時事故を防ぐ。
【解答】
解答:(4)
(1)正しい
がいしは送電線と鉄塔を絶縁するもので,ワンポイント解説「4.架空地線」の通り,アークホーンによりがいしを保護することができます。
(2)正しい
ワンポイント解説「4.架空地線」の通り,空送電線への雷撃を防止するために架空地線が設けられており,図6に示す遮へい角は小さいほど効果が雷撃防止の効果は大きくなります。
(3)正しい
ワンポイント解説「3.多導体方式の特徴」の通り,多導体化により,送電線の等価断面積が大きくなり,電線表面での電界が小さくなるため,コロナ放電の抑制ができます。また,スペーサはギャロッピングの防止にも効果的となります。
(4)誤り
ワンポイント解説「1.電線の振動」の通り,(4)の内容はサブスパン振動ではなく,微風振動に関する内容です。サブスパン振動は多導体方式におけるスペーサ間で発生する振動です。
(5)正しい
ワンポイント解説「4.架空地線」の通り,鉄塔又は架空地線への直撃雷に対する対策として,埋設地線を設置して接地抵抗を小さくすることで,送電線への逆フラッシオーバを防止する対策が取られています。
















愛知県出身 愛称たけちゃん
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