《機械》〈回転機〉[R4上:問1]直流電動機の特徴や特性に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,直流電動機の運転に関する記述である。

分巻電動機では始動時の過電流を防止するために始動抵抗が\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)回路に直列に接続されている。

直流電動機の速度制御法には界磁制御法・抵抗制御法・電圧制御法がある。静止レオナード方式は\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)制御法の一種であり,主に他励電動機に用いられ,広範囲の速度制御ができるという利点がある。

直流電動機の回転の向きを変えることを逆転といい,一般的には,応答が速い\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)電流の向きを変える方法が用いられている。

電車が勾配を下るような場合に,電動機を発電機として運転し,電車のもつ運動エネルギーを電源に送り返す方法を\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)制動という。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  界磁  &  抵抗  &  界磁  &  発電  \\
\hline
(2) &  界磁  &  抵抗  &  電機子  &  発電  \\
\hline
(3) &  界磁  &  電圧  &  界磁  &  回生  \\
\hline
(4) &  電機子  &  電圧  &  電機子  &  回生  \\
\hline
(5) &  電機子  &  電圧  &  界磁  &  回生  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

直流電動機の特徴に関する問題です。
始動抵抗や速度制御法,さらには制動法まで含まれる複合問題で,(ウ)の空欄を迷う受験生が多かったのではないかと予想される問題です。
最初の問題で難しい問題から出題されるのは電験ではよくある話で,ここで焦らず落ち着けるかどうかがポイントとなります。

1.直流他励電動機の等価回路
図1に直流他励電動機の等価回路を示します。図1において,\( \ V \ \)は端子電圧,\( \ E \ \)は逆起電力,\( \ V_{\mathrm {f}} \ \)は界磁電圧,\( \ I_{\mathrm {a}} \ \)は電機子電流,\( \ I_{\mathrm {f}} \ \)は界磁電流,\( \ R_{\mathrm {a}} \ \)は電機子抵抗,\( \ R_{\mathrm {f}} \ \)は界磁抵抗となります。
他励式の特徴としては,界磁回路が独立しているので,界磁磁束を独立して制御できるという特徴があります。

また,上記の等価回路にキルヒホッフの法則を適用すると,以下の関係式が導き出せることが分かります。
\[
\begin{eqnarray}
V &=& E+R_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {f}} &=& \frac {E_{\mathrm {f}}}{R_{\mathrm {f}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

2.直流電動機の速度制御法
磁極の数\( \ p \ \),電機子導体数\( \ Z \ \),電機子巻線並列回路数\( \ a \ \),各極の磁束\( \ \phi \ \),回転速度\( \ N \ \)とすると,直流機の誘導起電力(逆起電力)\( \ E \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&\frac {pZ}{60a}\phi N \\[ 5pt ] &=&k_{\mathrm {e}}\phi N \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,磁束\( \ \phi \ \)と回転速度\( \ N \ \)に比例します。また,図1の等価回路より,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&k_{\mathrm {e}}\phi N =V-R_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があるため,\( \ N \ \)について整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
N &=&\frac {V-R_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}}}{k_{\mathrm {e}}\phi } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,界磁\( \ \phi \ \),電機子抵抗\( \ R_{\mathrm {a}} \ \),電源電圧\( \ V \ \)で回転速度\( \ N \ \)を制御することができ,それぞれ界磁制御法,抵抗制御法,電圧制御法と呼ばれます。

3.始動抵抗法
電動機始動時の過電流を防止するため,図2のように,電機子巻線に直列に始動抵抗を接続して,電機子回路に流れる始動電流を減少させます。
回転数が上昇したら,始動抵抗を減少させていきます。

【解答】

解答:(4)
(ア)
ワンポイント解説「3.始動抵抗法」の通り,始動時の過電流を防止するために始動抵抗を電機子回路に直列に接続します。

(イ)
静止レオナード法は直流機の電機子巻線にサイリスタ変換器の直流側を接続した装置で,サイリスタにより直流電圧を制御する電圧制御法の一種となります。電験 1 種ではその中身について出題されたことがありますので,興味のある方は見ておいて下さい。

(ウ)
直流電動機の回転の向きを変えるには,電機子回路及び界磁回路どちらでも良いですが,一般的には応答が速い電機子電流の向きを変える方法が用いられます。両方を変えてしまうと正転となってしまいます。

(エ)
電動機を発電機として運転し,電源に電力を送り返す方法を回生制動と呼びます。過去,代表的な電気的制動法について平成24年問11で問われたことがあるので,確認しておいて下さい。