《機械》〈回転機〉[H30:問4]誘導電動機の始動方法に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

三相誘導電動機の始動においては,十分な始動トルクを確保し,始動電流は抑制し,かつ定常運転時の特性を損なわないように適切な方法を選定することが必要である。次の文章はその選定のために一般に考慮される特徴の幾つかを述べたものである。誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 全電圧始動法は,直入れ始動法とも呼ばれ,かご形誘導電動機において電動機の出力が電源系統の容量に対して十分小さい場合に用いられる。始動電流は定格電流の数倍程度の値となる。

(2) 二重かご形誘導電動機は,回転子に二重のかご形導体を設けたものであり,始動時には電流が外側導体に偏り始動特性が改善されるので,普通かご形誘導電動機と比較して大きな容量まで全電圧始動法を用いることができる。

(3) \(\mathrm {Y}-\Delta \)始動法は,一次巻線を始動時のみ\(\mathrm{Y}\)結線することにより始動電流を抑制する方法であり,定格出力が\( \ 5~15 \ \mathrm {kW} \ \)程度のかご形誘導電動機に用いられる。始動トルクは\(\Delta \)結線における始動時の\(\displaystyle \frac {1}{\sqrt {3}}\)倍となる。

(4) 始動補償器法は,三相単巻変圧器を用い,使用する変圧器のタップを切り換えることによって低電圧で始動し運転時には全電圧を加える方法であり,定格出力が\( \ 15 \ \mathrm {kW} \ \)程度より大きなかご形誘導電動機に用いられる。

(5) 巻線形誘導電動機の始動においては,始動抵抗器を用いて始動時に二次抵抗を大きくすることにより始動電流を抑制しながらも始動トルクを増大させる方法がある。これは誘導電動機のトルクの比例推移を利用したものである。

【ワンポイント解説】

誘導電動機に始動方法に関する出題です。誘導電動機はそのままだと始動電流が定格電流の\(5\)倍以上となってしまうため,様々な工夫をして始動電流を抑える方法が取られています。最初はよくわからないかもしれませんが,いろいろな問題を何度も解いていくとだんだん内容がわかるようになっていきますので,継続して勉強するようにしましょう。

1.全電圧始動法
電動機に始動装置を設けずに全電圧を印加して始動する方法です。始動電流が大きいため\( \ 3.7 \ \mathrm {kW} \ \)以下の小容量の電動機の場合にしか用いられません。

2.\(\mathrm {Y}-\Delta \)始動法
始動時は\(\mathrm {Y}\)巻線,定格時には\(\Delta \)巻線で運転する方法です。\(\mathrm {Y}\)巻線は\(\Delta \)巻線と比較して電圧が\(\displaystyle \frac {1}{\sqrt {3}}\)倍となるので,それぞれの始動電流の大きさの比は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {Y}} &=&\frac {\frac {V}{\sqrt {3}}}{Z} \\[ 5pt ] &=&\frac {V}{\sqrt {3}Z} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {\Delta }} &=&\frac {\sqrt {3}V}{Z} \\[ 5pt ] \frac {I_{\mathrm {Y}}}{I_{\mathrm {\Delta }}}&=&\frac {\frac {V}{\sqrt {3}Z}}{\frac {\sqrt {3}V}{Z}} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{3} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,始動トルクの比は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {T_{\mathrm {Y}}}{T_{\Delta }} &=&\frac {\left( \frac {V}{\sqrt {3}}\right) ^{2}}{V^{2}} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{3} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

3.補償器始動法
始動時のみ,三相単巻変圧器を用いて,変圧器のタップを切り替えることによって始動する方法です。電圧を\(\displaystyle \frac {1}{n}\)倍にすると,始動電流と始動トルクをともに\(\displaystyle \frac {1}{n^{2}}\)倍にすることができます。

4.リアクトル始動法
始動時のみ,電動機と直列にリアクトルを接続して始動する方法で,始動時の端子電圧を\(\displaystyle \frac {1}{n}\)倍にすると,始動電流を\(\displaystyle \frac {1}{n}\)倍,始動トルクを\(\displaystyle \frac {1}{n^{2}}\)倍にすることができます。

5.巻線形誘導電動機の始動法(二次抵抗法)
二次巻線にスリップリングを介し,外部可変抵抗を接続して始動する方法で,比例推移の原理を利用して,始動電流を抑制します。

6.特殊かご形電動機
始動電流を抑制するため回転子側の形状を工夫した電動機で,これまで説明した方法と切り口を変えた対策を講じた方法です。

①深溝かご形電動機
深溝かご形回転子の概要を図1に示します。図1に示すように深溝かご形回転子は回転子に深いスロットを設け,そこに導体を入れたような構造となっています。始動時回転子内の漏れ磁束は外側ほど小さくなり,始動時ほとんどの電流が導体の外側を流れ,抵抗が大きくなります。その後回転数が上がると,電流は一様に分布するようになり,抵抗が小さくなります。

②二重かご形電動機
二重かご形回転子の概要を図2に示します。図に示すように,二重かご形回転子は,内側と外側に二つの導体を入れ,外側の方を小さく,すなわち高抵抗となるようにします。始動時,深溝かご形回転子と同様に,外側ほど漏れ磁束が小さいので,ほとんどの電流が外側を流れます。その後,回転数が大きくなると,低抵抗である内側の導体を流れるようになります。

【解答】

解答:(3)
(1):正しい
問題文の通りです。始動電流は定格電流の\(5\)~\(7\)倍程度になります。

(2):正しい
問題文の通りです。ワンポイント解説「6.特殊かご形電動機」の通り,二重かご形誘導電動機は,回転子に二重のかご形導体を設け,始動時の始動電流を抑制するものです。

(3):誤り
問題文の通り,\(\mathrm {Y}-\Delta \)始動法は,一次巻線を始動時のみ\(\mathrm{Y}\)結線することにより始動電流を抑制する方法ですが,始動トルクは\(\displaystyle \color {red}{\frac {1}{3}}\)倍となります。

(4):正しい
問題文の通りです。ワンポイント解説「3.補償器始動法」の通り,始動補償器法は始動時のみ,三相単巻変圧器を用いて,変圧器のタップを切り替えることによって始動する方法です。

(5):正しい
問題文の通りです。ワンポイント解説「5.巻線形誘導電動機の始動法(二次抵抗法)」の通り,外部可変抵抗を接続して始動する方法で,比例推移の原理を利用して始動電流を抑制します。