《電力》〈水力〉[H27:問1]水力の理論出力と各単位に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

水力発電所の理論水力\(P\)は位置エネルギーの式から\(P=\rho g QH\)と表される。ここで\(H \ \mathrm {[m]}\)は有効落差,\(Q \ \mathrm {[m^{3}/s]}\)は流量,\(g\)は重力加速度\( \ =9.8 \ \mathrm {m/s^{2}}\),\(\rho \)は水の密度\( \ =1000 \ \mathrm {kg/m^{3}}\)である。以下に理論水力\(P\)の単位を検証することとする。なお,\(\mathrm {Pa}\)は「パスカル」,\(\mathrm {N}\)は「ニュートン」,\(\mathrm {W}\)は「ワット」,\(\mathrm {J}\)は「ジュール」である。

\(P=\rho gQH\)の単位は,\(\rho \),\(g\),\(Q\),\(H\)の単位の積であるから,\(\mathrm{kg/m^{3}\cdot m/s^{2}\cdot m^{3}/s\cdot m}\)となる。これを変形すると,\(\fbox {  (ア)  }\cdot \mathrm{m/s}\)となるが,\(\fbox {  (ア)  }\)は力の単位\(\fbox {  (イ)  }\)と等しい。すなわち\(P=\rho g QH\)の単位は\(\fbox {  (イ)  }\cdot \mathrm{m/s}\)となる。ここで,\(\fbox {  (イ)  }\cdot \mathrm {m}\)は仕事(エネルギー)の単位である\(\fbox {  (ウ)  }\)と等しいことから\(P=\rho g QH\)の単位は\(\fbox {  (ウ)  }/ \mathrm{s} \)と表せ,これは仕事率(動力)の単位である\(\fbox {  (エ)  }\)と等しい。ゆえに、理論水力\(P=\rho g QH\)の単位は\(\fbox {  (エ)  }\)となるが,重力加速度\(g=9.8 \ \mathrm {m/s^{2}}\)と水の密度\(\rho =1000 \ \mathrm {kg/m^{3}}\)の数値\(9.8\)と\(1000\)を考慮すると,\(P=9.8QH \ [\fbox {  (オ)  }]\)と表せる。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\[ 5pt ] \hline
(1) & \mathrm {kg\cdot m} & \mathrm {Pa} & \mathrm {W} & \mathrm {J} & \mathrm {kJ} \\[ 5pt ] \hline
(2) & \mathrm {kg\cdot m / s^{2}} & \mathrm {Pa} & \mathrm {J} & \mathrm {W} & \mathrm {kW} \\[ 5pt ] \hline
(3) & \mathrm {kg\cdot m} & \mathrm {N} & \mathrm {J} & \mathrm {W} & \mathrm {kW} \\[ 5pt ] \hline
(4) & \mathrm {kg\cdot m / s^{2}} & \mathrm {N} & \mathrm {W} & \mathrm {J} & \mathrm {kJ} \\[ 5pt ] \hline
(5) & \mathrm {kg\cdot m / s^{2}} & \mathrm {N} & \mathrm {J} & \mathrm {W} & \mathrm {kW} \\[ 5pt ] \hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

様々な組立単位(\(\mathrm {N}\),\(\mathrm {J}\),\(\mathrm {W}\)等)を基本単位(\(\mathrm {kg}\),\(\mathrm {m}\),\(\mathrm {s}\),\(\mathrm {A}\)等)で表すことは,公式の定着にも繋がりとてもいい学習です。公式の丸暗記は良くない(ただし,必要な場合もあります。)ので,なぜその公式になるのかを理解しながら勉強すると良いと思います。

1.単位の変換
①力\(F \ \mathrm {[N]}\)
\[
F \ \mathrm {[N]}=m \ \mathrm {[kg]} \ a \ \mathrm {[m/s^{2}]}
\] より,
\[
\mathrm {[N]}=\mathrm {[kg\cdot m/s^{2}]}
\] となります。

②仕事\(W \ \mathrm {[J]}\)
\[
W \ \mathrm {[J]}=F \ \mathrm {[N]} \ l \ \mathrm {[m]}
\] より,
\[
\mathrm {[J]}=\mathrm {[N\cdot m]}=\mathrm {[kg\cdot m^{2}/s^{2}]}
\] となります。

③仕事率あるいは電力\(P \ \mathrm {[W]}\)
\[
P \ \mathrm {[W]}=\frac {W \ \mathrm {[J]}}{t \ \mathrm {[s]}}
\] より,
\[
\mathrm {[W]}=\mathrm {[J/s]}=\mathrm {[kg\cdot m^{2}/s^{3}]}
\] となります。

【解答】

解答:(5)
(ア)
\(P\)の単位は,
\[
\mathrm{kg/m^{3}\cdot m/s^{2}\cdot m^{3}/s\cdot m}=\mathrm{kg\cdot m^{2}/s^{3}}
\] となるが,題意に沿って変形すると,
\[
\mathrm{kg\cdot m^{2}/s^{3}}=\mathrm{kg\cdot m/s^{2}\cdot m/s}
\] となる。

(イ)
ワンポイント解説「1.単位の変換」の通り,\(\mathrm{kg\cdot m/s^{2}=N}\)となる。

(ウ)
ワンポイント解説「1.単位の変換」の通り,\(\mathrm{N\cdot m =J}\)となる。

(エ)
ワンポイント解説「1.単位の変換」の通り,\(\mathrm{J/s =W}\)となる。

(オ)
\(P=\rho gQH\)に\(g=9.8 \ \mathrm {m/s^{2}}\)と\(\rho =1000 \ \mathrm {kg/m^{3}}\)を代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
P&=&1000\times 9.8 QH \ \mathrm {[W]}\\[ 5pt ] &=&9.8 QH \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。