《電力》〈送電〉[H27:問4]送電線の自然災害に対する設計に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,送電線の自然災害に対する設計に関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

送電鉄塔の荷重設計で支配的なのは,通常は強風又は着氷雪荷重であり,一般的な建築物が地震荷重である点と異なる。これは鉄塔がトラス構造物で建築物に比べて軽いことに加えて架渉線を有していることによる。

風荷重の基本となる設計風速は,10分間平均風速を用いる場合と\(\fbox {  (1)  }\)を用いる場合がある。前者の値は夏から秋にかけての台風を想定した高温季では\(\fbox {  (2)  } \ \mathrm {m/s}\),冬から春にかけての季節風を想定した低温季では,氷雪の付着を考慮し,高温季の荷重の\(\displaystyle \frac {1}{2}\)となる風速値としている。

着氷雪荷重には,風荷重と重畳する\(\fbox {  (3)  }\)を対象とした着雪荷重,標高の高い山岳地で発生する着氷荷重,降雪が多い地域で対策が必要な積雪荷重があり,それぞれ過去の観測記録や設計実績に基づいて適切な値を設定する。

また,電線においては,電線に付着した氷雪が羽根状となって風を受けて電線が自励振動する\(\fbox {  (4)  }\)や,電線に付着した氷雪が脱落して電線が跳ね上がる\(\fbox {  (5)  }\)があり,相関短絡などの電気事故が発生しないように対策が取られている。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ギャロッピング     &(ロ)& ねじれ振動   &(ハ)& サブスパン振動 \\[ 5pt ] &(ニ)& 40   &(ホ)& 最大風速   &(ヘ)& 乾形着雪 \\[ 5pt ] &(ト)& コロナ振動   &(チ)& 微風振動    &(リ)& 60 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 湿形着雪   &(ル)& 27   &(ヲ)& 中間風速 \\[ 5pt ] &(ワ)& 瞬間風速   &(カ)& スリートジャンプ     &(ヨ)& 50
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

送電線の風荷重や着氷雪に関する電気事故の問題は非常によく出題される最頻出問題の一つです。(2),(4),(5)は確実に理解しておきたい内容です。

1.風圧荷重の種類
①甲種風圧荷重(高温季)
 風速を\( \ 40 \ \mathrm {m/s} \ \)とした場合に生じる荷重
②乙種風圧荷重(低温季)
 電線に着氷雪がある状態で甲種風圧荷重の\(\displaystyle \frac {1}{2}\)の風圧がかかる時の荷重(風速約\(27 \ \mathrm {m/s}\))
③丙種風圧荷重(人家が多く連なる場所での高低圧の支持物や架渉線等)
 甲種風圧荷重の\(\displaystyle \frac {1}{2}\)の風圧がかかる時の荷重

2.微風振動
風速\( \ 5 \ \mathrm {m/s} \ \)以下の比較的緩やかな風が電線と垂直方向に吹くと電線の風下側にカルマン渦が生じ,上下に振動する現象です。繰り返し疲労が蓄積すると,素線切れや断線を引き起こす可能性があります。
特徴
 ①電線の固有振動数と一致すると発生するため,径間の長い場合や,重量の軽い場合に発生しやすい。
 ②風速が緩やかでかつ一定の時発生しやすいため,山間部よりも平野部に発生しやすい。
 ③気流が安定している早朝あるいは日没に発生しやすい。
対策
 ①ダンパを取付け振動のエネルギーを吸収し,減衰を早める。
 ②アーマロッドを使用して,電線を補強し振動のエネルギーを吸収する。

3.ギャロッピング
電線に非対称な氷雪が付着し肥大化し風が電線と垂直方向に吹くと,電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象です。
特徴
 ①スペーサのために電線が回転できない多導体方式の方が発生しやすい。
 ②風圧を受けるエネルギーが大きいため,径間によって振幅が10m以上になる場合もあり,相関短絡を起こしやすい。
対策
 ①難着雪リングを取り付け,着雪を防止する。
 ②相関スペーサを取り付け,短絡事故を防止する。
 ③ルート選定で風の主方向と直角に当たりやすくなるところ,冬季風が直接さらされる尾根上などを避けるようにする。

4.サブスパン振動
電線のスペーサとスペーサの間(サブスパン)で生じる振動。原理はギャロッピングと同じく電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象です。
特徴
 ①振動周波数が1~2Hzで,振幅が最大50cm程度となる。
対策
 ①スペーサの間隔を適正に配置する。
 ②防振装置を採用する。
 ③ルート選定で風の主方向と直角に当たりやすくなるところを避けるようにする。

5.コロナ振動
電線下面にある水滴が滴下する際,コロナ放電により電線を蹴るとその反動で揚力を生じ,電線の固有振動数と一致するとコロナ振動を生じます。
特徴
 ①降雨量が多く(5mm/h以上)で,無風の時発生しやすい。
 ②振幅は10cm程度である。
対策
 ①多導体方式を採用する。
 ②がいし連結数を見直す等で重量を調整し,電線の固有振動数を調整する。

6.スリートジャンプ
氷雪が着氷し落下した際の跳ね上がりによる振動。一時的なもので,減衰性があるが,相関短絡を引き起こす可能性がある。
特徴
 ①跳ね上がりが大きいと相関短絡を引き起こす。
 ②風の影響ではないため,持続性はない。
対策
 ①難着雪リングを取り付け,着雪を防止する。
 ②相関スペーサを取り付け,短絡事故を防止する。
 ③電線同士の水平方向に間隔を設け(オフセット),電線の真上に電線がないようにする。

【解答】

(1)解答:ワ
題意より,解答候補は(ホ)最大風速,(ヲ)中間風速,(ワ)瞬間風速になると思います。電気設備技術基準で規定されているのは10分間平均風速ですが,JECで規定されているのは瞬間風速です。

(2)解答:ニ
ワンポイント解説「1.風圧荷重の種類」の通り,高温季に使用される甲種風圧荷重は40m/sを想定した風圧荷重です。

(3)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ヘ)乾形着雪,(ヌ)湿形着雪となると思いますが,乾形着雪の場合風により着雪が離れるため考慮に入れる必要がなく,湿形着雪の場合,風により着雪は離れないため,風荷重に重畳する必要があります。

(4)解答:イ
ワンポイント解説「3.ギャロッピング」の通り,電線に非対称に付着した氷雪が自励振動するのは,ギャロッピングです。

(5)解答:カ
ワンポイント解説「6.スリートジャンプ」の通り,電線に付着した氷雪が脱落して電線が跳ね上がるのは,スリートジャンプです。



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