《電力》〈送電〉[H30:問3]送電線保護リレーに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,送電線保護リレーに関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

\(\fbox {  (1)  }\)は,平行2回線送電線路の保護リレー方式として,\(66~77 \ \mathrm {kV} \ \)級送電線路を主体に広く採用されている。この方式は,保護対象区間の範囲内の\(1\)回線事故の場合に,電源端では事故回線に流れる事故電流が健全回線に流れる事故電流と比べて\(\fbox {  (2)  }\)こと,及び,非電源端では両回線で事故電流の方向が反対になることを利用して事故回線を検出する。

送電線の短絡保護にこの保護リレー方式を適用した,両端が電源端である図の平行\(2\)回線送電線路において,\(\mathrm {A}\)端からの距離の比率が\(a\)の地点(\(\mathrm {A}\)端と\(\mathrm {B}\)端の間の保護範囲内に限る。)で短絡事故が発生し,\(\mathrm {A}\)端,\(\mathrm {B}\)端から短絡電流\(I_{\mathrm {A}}\),\(I_{\mathrm {B}}\)が流入した場合を想定する。また,\(\mathrm {A}\)端における各送電線の電流\(I_{\mathrm {A1}}\),\(I_{\mathrm {A2}}\)に対する変流器の\(2\)次電流を\(i_{\mathrm {A1}}\),\(i_{\mathrm {A2}}\)とすると,\(\mathrm {A}\)端のリレーに流れる\(i_{\mathrm {AR}}\)は,\(i_{\mathrm {AR}}=i_{\mathrm {A1}}-i_{\mathrm {A2}}\)と表されるものとする。ここで,同じ変流比で\(I_{\mathrm {A}}\),\(I_{\mathrm {B}}\)を変換したものを\(i_{\mathrm {A}}\),\(i_{\mathrm {B}}\)と表すとき,\(\mathrm {A}\)端のリレーに流れる電流\(i_{\mathrm {AR}}\)は\(i_{\mathrm {A}}\),\(i_{\mathrm {B}}\)を用いて\(\fbox {  (3)  }\)と表される。事故点が\(\mathrm {A}\)端近傍,\(\mathrm {B}\)端近傍,及び中間付近の場合で\(i_{\mathrm {AR}}\)を比較すると,\(\fbox {  (4)  }\)の場合に\(i_{\mathrm {AR}}\)が最も小さくなり,これがある一定値を下回ると\(\mathrm {A}\)端のリレーは\(\fbox {  (5)  }\)。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \mathrm {B}端近傍   &(ロ)& \left( 1-\frac {a}{2}\right) \times i_{\mathrm {A}}+\frac {1-a}{2}\times i_{\mathrm {B}}   &(ハ)& 方向比較リレー方式 \\[ 5pt ] &(ニ)& 回線選択リレー方式   &(ホ)& 動作しない   &(ヘ)& 大きくなる \\[ 5pt ] &(ト)& \left( 1-a\right) \times \left( i_{\mathrm {A}}+i_{\mathrm {B}}\right)   &(チ)& 電流差動リレー方式   &(リ)& 誤動作する \\[ 5pt ] &(ヌ)& \mathrm {A}端近傍    &(ル)& 小さくなる    &(ヲ)& 動作する \\[ 5pt ] &(ワ)& \frac {a}{2}\times i_{\mathrm {A}}-\frac {1-a}{2}\times i_{\mathrm {B}}   &(カ)& 等しくなる   &(ヨ)& 中間付近 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

送電線の保護リレーに関する内容は,それだけで本が一冊できるぐらいに深い内容です。電験の場合,そこまで細かく勉強することは非効率なので,概要をテキストで理解し,過去問にチャレンジして理解を深めていくのが良いと思います。(3)の導出が電験二種らしい応用力の必要な問題であると思います。

1.回線選択リレー方式
問題図のように平行2回線の送電線において,両回線の変流器二次側を交差接続し,方向継電器と過電流継電器で故障回線を特定し遮断する方式です。

【解答】

(1)解答:ニ
題意より,解答候補は(ハ)方向比較リレー方式,(ニ)回線選択リレー方式,(チ)電流差動リレー方式になると思います。ワンポイント解説「1.回線選択リレー方式」の通り,問題図の構成は回線選択リレー方式となります。

(2)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ヘ)大きくなる,(ル)小さくなる,(カ)等しくなる になると思います。事故が発生すると,事故点の電圧降下が発生し,事故側に大きな電流が流れます。

(3)解答:ト
\(\mathrm {A}\)端の電源のみを考慮した等価回路を図1に示す。
図1において,\({I_{\mathrm {A1}}}^{\prime }\),\({I_{\mathrm {A2}}}^{\prime }\)の大きさは分流の法則より,
\[
\begin{eqnarray}
{I_{\mathrm {A1}}}^{\prime }&=& \frac {Z+\left( 1-a\right) Z}{aZ+\left[ Z+\left( 1-a\right) Z\right] } I_{\mathrm {A}} \\[ 5pt ] &=& \frac {2-a}{2}I_{\mathrm {A}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
{I_{\mathrm {A2}}}^{\prime }&=& \frac {aZ}{aZ+\left[ Z+\left( 1-a\right) Z\right] } I_{\mathrm {A}} \\[ 5pt ] &=& \frac {a}{2}I_{\mathrm {A}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。

次に\(\mathrm {B}\)端の電源のみを考慮した等価回路を図2に示す。\(\mathrm {A}\)端の時と同様に,\({I_{\mathrm {B1}}}^{\prime }\),\({I_{\mathrm {B2}}}^{\prime }\)の大きさは分流の法則より,
\[
\begin{eqnarray}
{I_{\mathrm {B1}}}^{\prime }&=& \frac {Z+aZ}{\left( 1-a\right) Z+\left( Z+aZ\right) } I_{\mathrm {B}} \\[ 5pt ] &=& \frac {1+a}{2}I_{\mathrm {B}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
{I_{\mathrm {B2}}}^{\prime }&=& \frac {\left( 1-a\right) Z}{\left( 1-a\right) Z+\left( Z+aZ\right) } I_{\mathrm {B}} \\[ 5pt ] &=& \frac {1-a}{2}I_{\mathrm {B}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。

重ね合わせの理より,\(\mathrm {A}\)端の事故相及び健全相を流れる電流\(I_{\mathrm {A1}}\),\(I_{\mathrm {A2}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {A1}}&=& {I_{\mathrm {A1}}}^{\prime }+{I_{\mathrm {B2}}}^{\prime } \\[ 5pt ] &=& \frac {2-a}{2}I_{\mathrm {A}}+ \frac {1-a}{2}I_{\mathrm {B}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {A2}}&=& {I_{\mathrm {A2}}}^{\prime }-{I_{\mathrm {B2}}}^{\prime } \\[ 5pt ] &=& \frac {a}{2}I_{\mathrm {A}}-\frac {1-a}{2}I_{\mathrm {B}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,\(\mathrm {A}\)端のリレーに流れる\(i_{\mathrm {AR}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
i_{\mathrm {AR}}&=& i_{\mathrm {A1}}-i_{\mathrm {A2}} \\[ 5pt ] &=& \left( \frac {2-a}{2}i_{\mathrm {A}}+ \frac {1-a}{2}i_{\mathrm {B}}\right) -\left( \frac {a}{2}i_{\mathrm {A}}-\frac {1-a}{2}i_{\mathrm {B}}\right) \\[ 5pt ] &=& \left( 1-a\right) i_{\mathrm {A}}+\left( 1-a\right) i_{\mathrm {B}} \\[ 5pt ] &=& \left( 1-a\right) \left( i_{\mathrm {A}}+i_{\mathrm {B}}\right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:イ
(3)より,\(i_{\mathrm {AR}}\)が最も小さくなるのは,\(a≃1\)の時であるため,\(\mathrm {B}\)端近傍が最も小さくなります。

(5)解答:ホ
電流値が小さくなると,リレーは動作しなくなります。



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