《電力》〈電気材料〉[R4下:問14]電気機器に使用される絶縁油に求められる特性に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,絶縁油の性質に関する記述である。

絶縁油は変圧器や\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルなどに使用されており,一般に絶縁破壊電圧は同じ圧力の空気と比べて高く,誘電正接が\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)絶縁油を用いることで絶縁油中の\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)を抑えることができる。電力用機器の絶縁油として古くから\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)が一般的に用いられてきたが,より優れた低損失性や信頼性が求められる場合には\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)が採用されている。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  大きい  &  部分放電  &  植物油  &  鉱油  \\
\hline
(2) &  小さい  &  発熱  &  鉱油  &  合成油  \\
\hline
(3) &  大きい  &  発熱  &  植物油  &  鉱油  \\
\hline
(4) &  小さい  &  部分放電  &  鉱油  &  合成油  \\
\hline
(5) &  小さい  &  発熱  &  植物油  &  合成油  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

絶縁油の性質や求められる特性に関する問題です。
内容はそれほど難しくはありませんが,(イ)の空欄が受験生を惑わす問題です。
誘電正接とは何かをしっかりと理解しているかどうかが問われている問題と言えるでしょう。

1.絶縁油に求められる特性
絶縁油は変圧器やコンデンサ等の電気機器に多用途に使用されるため,高い信頼性と安全性が求められます。石油を精製して作られる鉱物油が主に利用されていますが,近年では可燃性であることや水分や空気等に触れることで経年劣化すること,環境負荷が大きいこと等から,難燃性でより劣化しにくい合成絶縁油や,環境負荷の少ない植物油等も採用されてきています。
 ① 絶縁耐力が大きいこと
 ② 耐熱性に優れていること
 ③ 経年劣化しにくいこと
 ④ 粘度が低く,流動性が良いこと
 ⑤ 放熱性が良いこと
 ⑥ 化学的に安定であること
 ⑦ 引火点や発火点の温度が高いこと
 ⑧ 誘電損(誘電正接)が小さいこと

2.誘電正接\( \ \tan \delta \ \)
誘電体の等価回路は図1のように抵抗\( \ R \ \)と静電容量\( \ C \ \)の並列回路となり,図2に示すようなベクトル図の電流が流れます。この時の\( \ \displaystyle \frac {I_{\mathrm {R}}}{I_{\mathrm {C}}}=\tan \delta \ \)を誘電正接と呼びます。

【解答】

解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「1.絶縁油に求められる特性」の通り,絶縁油は誘電正接が小さい絶縁油を用います。

(イ)
ワンポイント解説「2.誘電正接\( \ \tan \delta \ \)」の通り,誘電正接が小さい絶縁油の方が抵抗成分が小さくなり発熱を抑えることができます。部分放電は絶縁油が劣化した際に発生する現象です。

(ウ)
ワンポイント解説「1.絶縁油に求められる特性」の通り,電力用機器の絶縁油として古くから一般的に用いられているのは鉱油となります。

(エ)
ワンポイント解説「1.絶縁油に求められる特性」の通り,より優れた低損失性や信頼性が求められる場合には合成油が採用されます。