《電力》〈原子力〉[R01:問4]ウランと石炭の燃料消費量の違いに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

\( \ 1 \ \mathrm {g} \ \)のウラン\( \ 235 \ \)が核分裂し,\( \ 0.09 \ % \ \)の質量欠損が生じたとき,これにより発生するエネルギーと同じだけの熱量を得るのに必要な石炭の質量の値\( \ \mathrm {[kg]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし,石炭の発熱量は\( \ 2.51\times 10^{4} \ \mathrm {kJ/kg} \ \)とし,光速は\( \ 3.0\times 10^{8} \ \mathrm {m/s} \ \)とする。

 (1) \( 16\)  (2) \( 80\)  (3) \( 160\)  (4) \(3200\)  (5) \(48000\)    

【ワンポイント解説】

ウランの質量欠損から同等のエネルギーを得るのに必要な石炭燃料の量を導出する問題で,計算問題が得意な人ならば簡単,苦手な人には難しいと思われる問題です。原子力発電も石炭発電も電力運用のベース負荷を担い,昼夜問わず一定運転をするため,比較する際には最も一般的な比較となります。燃料消費量の違いがどれくらい違うのかを理解して下さい。

1.エネルギーと質量の関係式
アインシュタインの特殊相対性理論の中でも最もポピュラーな公式の一つで,ある物質に\( \ \Delta m \ \mathrm {[kg]} \ \)の質量欠損があった場合,その物質から発生するエネルギーを\( \ E \ \mathrm {[J]} \ \),光の速度を\( \ c \ \mathrm {[m/s]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&\Delta m c^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。

【解答】

解答:(4)
ウラン\( \ 235 \ \)の質量欠損\( \ \Delta m \ \mathrm {[kg]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\Delta m &=&\frac {1}{1000}\times \frac {0.09}{100} \\[ 5pt ] &=&9\times 10^{-7} \ \mathrm {[kg]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,ワンポイント解説「1.エネルギーと質量の関係式」より,ウラン\( \ 235 \ \)が発生するエネルギー\( \ E \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&\Delta m c^{2} \\[ 5pt ] &=&9\times 10^{-7}\times \left( 3.0\times 10^{8}\right) ^{2} \\[ 5pt ] &=&8.1\times 10^{10} \ \mathrm {[J]} → 8.1\times 10^{7} \ \mathrm {[kJ]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。
一方,石炭火力で発生するエネルギー\( \ E \ \)は,使用する石炭の量を\( \ M_{\mathrm {c}} \ \mathrm {[kg]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&2.51\times 10^{4} M_{\mathrm {c}} \ \mathrm {[kJ]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるため,ウラン\( \ 235 \ \)が質量欠損し発生するエネルギーと同じだけの熱量を得るのに必要な石炭の質量は,
\[
\begin{eqnarray}
8.1\times 10^{7} &=&2.51\times 10^{4} M_{\mathrm {c}} \\[ 5pt ] M_{\mathrm {c}} &=&\frac {8.1\times 10^{7} }{2.51\times 10^{4}} \\[ 5pt ] &≒&3227 → 3200 \ \mathrm {[kg]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。