《電力》〈水力〉[H20:問1]水力発電所で使用される水車の種類と特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,水力発電に関する記述である。

水力発電は,水の持つ位置エネルギーを水車により機械エネルギーに変換し,発電機を回す。水車には衝動水車と反動水車がある。\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)には\( \ \fbox {  (イ)  } \ \),プロペラ水車などがあり,揚水式のポンプ水車としても用いられる。これに対し,\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)の主要な方式である\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)は高落差で流量が比較的少ない場所で用いられる。

水車の回転速度は構造上比較的低いため,水車発電機は一般的に極数を\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)するよう設計されている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{cccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  反動水車  &  ペルトン水車   &  衝動水車  &  カプラン水車   &  多 く  \\
\hline
(2) &  衝動水車  &  フランシス水車  &  反動水車  &  ペルトン水車   &  少なく  \\
\hline
(3) &  反動水車  &  ペルトン水車   &  衝動水車  &  フランシス水車  &  多 く  \\
\hline
(4) &  衝動水車  &  フランシス水車  &  反動水車  &  斜流水車     &  少なく  \\
\hline
(5) &  反動水車  &  フランシス水車  &  衝動水車  &  ペルトン水車   &  多 く  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

水力発電所で使用される水車に関する問題です。
水車の分類は過去何度も出題されている内容なので,必ず特徴と名称は理解しておくようにして下さい。

1.衝動水車
水のもつ位置エネルギー(位置水頭)を運動エネルギー(速度水頭)に変え,流水をランナに作用させる水車を衝動水車と言います。
代表的なものにペルトン水車があり,下図に示すように主にノズル,ニードル,ランナ等から構成され,ノズルから水を噴射し,ランナを回転させます。水量は主にニードルで調整します。


出典:長野県HP

2.反動水車
水のもつ位置エネルギー(位置水頭)を圧力エネルギー(圧力水頭)に変換し,ランナに作用させる水車を反動水車と言います。
代表的なものにフランシス水車があり,下図のようにガイドベーンとランナの羽根の開度で出力を調整します。他にもランナを通過する流水の方向が斜めのものを斜流水車(ランナを可動式としたものをデリア水車),流水がランナの軸方向に通過するものをプロペラ水車(ランナを可動式としたものをカプラン水車)と言います。高落差のものからフランシス水車→斜流水車→プロペラ水車となります。
また,出口部に吸出し管というラッパ状の管を設け,ランナ出口から放水面までの位置エネルギーを有効利用します。


出典:長野県HP

3.水車発電機とタービン発電機の比較
水車発電機は回転速度を大きくしすぎるとキャビテーションの発生等により振動が発生したり,エロ―ジョンが発生したりするため,回転速度を大きくするには限界があります。一方,タービン発電機は発電機をできるだけ軽量かつコンパクトにして経済的にするため,回転速度を大きくします。この特徴の違いにより,以下の表のような違いがあります。

\[
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& 水車発電機 & タービン発電機 \\
\hline
回転速度(\mathrm {min}^{-1}) &  100~1200  &  1500~3600  \\
\hline
極数 & 6~32 & 2~4 \\
\hline
回転子 & 突極形 & 円筒形 \\
\hline
軸方向 & 縦 & 横 \\
\hline
短絡比 & 大きい & 小さい \\
\hline
同期インピーダンス & 小さい & 大きい \\
\hline
電圧変動率 & 小さい & 大きい \\
\hline
安定度 & 高 い & 低 い \\
\hline
線路充電容量 & 大きい & 小さい \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

解答:(5)
(ア)
ワンポイント解説「2.反動水車」の通り,プロペラ水車は反動水車に分類されます。

(イ)
ワンポイント解説「2.反動水車」の通り,反動水車にはフランシス水車があります。(ア)と(イ)の空欄の組合せは「衝動水車-ペルトン水車」もしくは「反動水車-フランシス水車」しかないため,この時点で(5)以外は誤りと判断できます。

(ウ)
ワンポイント解説「1.衝動水車」の通り,(ア)の空欄が反動水車であったため,こちらは衝動水車です。

(エ)
ワンポイント解説「1.衝動水車」の通り,衝動水車の主要な方式はペルトン水車となります。

(オ)
ワンポイント解説「3.水車発電機とタービン発電機の比較」の通り,水車発電機は回転速度が大きくなりすぎないように,一般に極数を多くするように設計されます。