《電力》〈原子力〉[R07上:問4]原子力発電における核燃料サイクルに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,原子力発電における核燃料サイクルに関する記述である。

天然ウランには主に質量数\( \ 235 \ \)と\( \ 238 \ \)の同位体があるが,原子力発電所の燃料として有用な核分裂性物質のウラン\( \ 235 \ \)の割合は,全体の\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)程度にすぎない。そこで,採鉱されたウラン鉱石は精錬,転換されたのち,遠心分離法などによって,ウラン\( \ 235 \ \)の濃度が軽水炉での利用に適した値になるように濃縮される。その濃度は,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)\( \ \mathrm {%} \ \)程度である。さらに,その後,再転換,加工され,原子力発電所の燃料となる。

原子力発電所から取り出された使用済燃料からは,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)によってウラン,プルトニウムが分離抽出され,これらは再び燃料として使用することができる。プルトニウムはウラン\( \ 238 \ \)から派生する核分裂性物質であり,ウランとプルトニウムとを混合した\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)を軽水炉の燃料として用いることをプルサーマルという。

また,軽水炉の転換比は\( \ 0.6 \ \)程度であるが,高速中性子によるウラン\( \ 238 \ \)のプルトニウムへの変換を利用した\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)では,消費される核分裂性物質よりも多くの量の新たな核分裂性物質を得ることができる。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  3~5  &  再処理  &  \mathrm {MOX} \ 燃料  &  高速増殖炉  \\
\hline
(2) &  3~5  &  再処理  &  イエローケーキ  &  高速増殖炉  \\
\hline
(3) &  3~5  &  再加工  &  イエローケーキ  &  新型転換炉  \\
\hline
(4) &  10~20  &  再処理  &  イエローケーキ  &  高速増殖炉  \\
\hline
(5) &  10~20  &  再加工  &  \mathrm {MOX} \ 燃料  &  新型転換炉  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

原子燃料サイクルに関する問題です。
出題割合や問題数を考えると細かい箇所まで暗記するのは効率が悪いですが,\( \ 3 ~ 5 \ \mathrm {%} \ \)の低濃縮ウランにすることや使用済み燃料が再処理工場に向かうこと等は出題されやすい印象ですので,優先的に覚えておいて下さい。
本問は平成28年問4からの再出題となります。

1.原子燃料サイクル
天然ウランには主にウラン\( \ 235 \ \)とウラン\( \ 238 \ \)がありますが,その\( \ 99 \ \mathrm {%} \ \)以上がウラン\( \ 238 \ \)であり原子力発電の燃料として利用可能なウラン\( \ 235 \ \)の割合は\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)程度しかありません。これでは連鎖反応が続かないので,原子力発電では連鎖反応が継続可能な\( \ 3 ~ 5 \ \mathrm {%} \ \)程度にウラン\( \ 235 \ \)を濃縮(低濃縮ウラン)して使用します。
この濃縮過程や再利用する過程を原子燃料サイクルといい,以下のような工程があります。

①精錬
ウラン鉱石を粉砕し精錬しウラン精鉱(イエローケーキ)にします。

②転換
ウラン精鉱(イエローケーキ)を六フッ化ウラン\( \ \left( \mathrm {UF}_{6}\right) \ \)にします。

③濃縮
遠心分離法等によりウラン\( \ 235 \ \)の濃度が\( \ 3 ~ 5 \ \mathrm {%} \ \)程度になるように濃縮します。

④再転換
加工しやすいように粉末状の二酸化ウラン\( \ \left( \mathrm {UO}_{2}\right) \ \)にします。

⑤加工
ペレット状にして燃料集合体に加工します。

⑥再処理
\( \ 3~5 \ \)年程度発電に利用した使用済み燃料からウランとプルトニウムを分離します。

⑦\( \ \mathrm {MOX} \ \)加工
ウランとプルトニウムを混ぜ合わせ\( \ \mathrm {MOX} \ \)燃料にします。これをさらに原子力発電で利用(プルサーマル)します。


出典:電験戦士教本「原子力・その他発電」 P.30
URL:https://denkenia-archives.stores.jp/

【解答】

解答:(1)
(ア)
ワンポイント解説「1.原子燃料サイクル」の通り,原子力発電所で用いられるウランの濃度は\( \ 3~5 \ \mathrm {%} \ \)程度で低濃縮ウランと言います。

(イ)
ワンポイント解説「1.原子燃料サイクル」の通り,原子力発電所の使用済み燃料は再処理工場に送られ,ウランとプルトニウムが分離抽出されます。

(ウ)
ワンポイント解説「1.原子燃料サイクル」の通り,ウランとプルトニウムを混合した燃料を\( \ \mathrm {MOX} \ \)燃料と言います。

(エ)
原子炉内で消費された核分裂性物質の量に対する生成される核分裂性物質の量の比を転換比といい,軽水炉においては\( \ 0.6 \ \)程度ですが,高速増殖炉においては\( \ 1.2 \ \)程度と\( \ 1 \ \)より大きくなります。