《電力》〈送電〉[R07上:問10]架空送電線路の構成部品に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

地中送電線路に使用される各種電力ケーブルに関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) \( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルは,絶縁体として絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙絶縁ケーブルである。\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルには油通路が設けられており,絶縁油の加圧によりボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保するための給油設備が必要である。

(2) \( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルは,絶縁体として架橋ポリエチレンを使用したケーブルである。架橋ポリエチレンは,ポリエチレンの分子構造を架橋反応により立体網目状分子構造とすることで,熱可塑性を大幅に向上させた絶縁材料である。

(3) \( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルは,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルと比較して給油設備が不要であり,保守性に優れている。一方で,水トリーの発生による絶縁劣化があるため,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルには金属シースや遮水層を設ける場合がある。

(4) \( \ \mathrm {CVT} \ \)ケーブルは,単心\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブル\( \ 3 \ \)条をより合わせたトリプレックス形\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルであり,\( \ 3 \ \)心共通シース形\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルと比較してケーブルの熱抵抗が小さいため電流容量を大きくできるとともに,ケーブルの接続作業性がよい。

(5) \( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルは,油圧の常時監視によって金属シースや鋼管の欠陥,外傷などに起因する漏油を検知することで,油圧の異常低下による絶縁破壊事故の未然防止を図ることができる。

【ワンポイント解説】

地中送電線路に採用されるケーブルの特徴に関する問題です。
問題文が長く,ワンポイント解説の知識があってもなかなか正答が見つからない問題です。このような問題は一旦飛ばし最後に解きなおす等の戦略もありかと思います。
また,本問の類題が平成30年問11に出題されていますので,合わせて学習してみて下さい。

1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの特徴
\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの特徴のうち,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルと比較した特徴は以下の通りとなります。

①絶縁体に架橋ポリエチレンを使用し,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルのように絶縁油を使用しないため,給油設備を必要とせず,火災のリスクも少ない。

②連続使用時の最高許容温度が\( \ 90 \ \)℃と高いので,許容電流が大きくなり,送電容量が大きくなる。

③誘電正接\( \ \mathrm {tan} \delta \ \)(誘電正接)や比誘電率が小さいため誘電体損失や充電電流が小さくなる。

④絶縁体自体を薄くでき軽量であるため,取り回しが良い。

⑤耐薬品性,耐摩耗性,耐衝撃性に優れる。

⑥水分が含まれると水トリーと呼ばれる樹枝状に絶縁劣化する現象が発生する。

2.\( \ \mathrm {CVT} \ \)ケーブルの特徴
\( \ \mathrm {CVT} \ \)ケーブルは図2に示すように\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルをより合わせたような構造をなっており,図3に示すような\( \ 3 \ \)心共通シース型の\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルと比較し,以下のような特徴があります。
・介在物がなくより合わせた構造であることから,熱放散が良い
・熱放散が良いので,許容電流が\( \ 10 \ \mathrm {%} \ \)程大きくなる
・より合わせた構造であることから,熱伸縮による応力を吸収しやすい
・介在物がないため,軽量で曲げやすい


【解答】

解答:(2)
(1):正しい
\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルは,絶縁体として絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙絶縁ケーブルであり,油通路が設けられ,給油設備が必要となります。

(2):誤り
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの特徴」の通り,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルは,絶縁体として架橋ポリエチレンを使用したケーブルで,架橋ポリエチレンは,ポリエチレンの分子構造を架橋反応により立体網目状分子構造とすることで,耐熱性を向上させた絶縁材料となります。熱可塑性とは熱を加えると軟らかくなる性質のことをいいます。

(3):正しい
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルの特徴」の通り,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルは,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルと比較して給油設備が不要であり,保守性に優れている一方,水トリーの発生による絶縁劣化があるため,\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルには金属シースや遮水層を設ける場合があります。

(4):正しい
ワンポイント解説「2.\( \ \mathrm {CVT} \ \)ケーブルの特徴」の通り,\( \ \mathrm {CVT} \ \)ケーブルは,単心\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブル\( \ 3 \ \)条をより合わせたトリプレックス形\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルで,\( \ 3 \ \)心共通シース形\( \ \mathrm {CV} \ \)ケーブルより電流容量を大きくでき,ケーブルの接続作業性もよいという特徴があります。

(5):正しい
問題文の通り,\( \ \mathrm {OF} \ \)ケーブルは,油圧の常時監視によって金属シースや鋼管の欠陥,外傷などに起因する漏油を検知することで,油圧の異常低下による絶縁破壊事故の未然防止を図ることが可能です。