【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
変電機器の耐震設計については,現在,「\( \ \mathrm {JESC \ E001 \ (1999) } \ / \)\( \ \mathrm {JEAG \ 5003-1999} \ \)変電所等における電気設備の耐震設計指針」が標準的に採用されている。本指針に基づく変電機器の耐震設計(標準地盤)について,次の問に答えよ。
(1) 耐震設計手法には動的設計手法と静的設計手法の二つがある。従来広く用いられてきた静的設計手法に加えて,動的設計手法が採用されている理由を説明せよ。
(2) 屋外用がいし形機器(屋外に設置される開閉装置,計器用変成器及び電力用ケーブルヘッド)の耐震設計に関して,設計手法,設計地震力を説明せよ。
(3) \( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以上の屋外変圧器の耐震設計に関して,変圧器本体とブッシングについて,それぞれ設計手法,設計地震力を説明せよ。
【ワンポイント解説】
変電機器の耐震設計に関する問題です。
耐震設計指針に関する問題なので覚えるしかない内容ですが,電験でも何度か取り扱われたことがある内容です。再出題も考慮し,内容を覚えておくようにして下さい。
1.変電機器の耐震設計
耐震設計手法には静的設計手法と動的設計手法があります。
元々変電機器に対しては静的設計手法が用いられてきましたが,地震波の卓越振動数が\( \ 0.5 ~ 10 \ \mathrm {Hz} \ \)程度で,変電機器におけるがいし形機器やブッシングの固有振動数もこの範囲にあることが多く,共振する可能性があり,従来の静的設計よりも動的応答が大きくなってしまう可能性があることがわかったため,これらの機器に対しては静的設計手法よりも動的設計手法を用いるようになりました。これを擬共振法といいます。
具体的には,変圧器本体は剛体とみなせるため,加速度\( \ 5 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)の静的耐震設計が採用されますが,がいし形機器は水平加速度\( \ 3 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)で共振の正弦\( \ 3 \ \)波,変圧器のブッシングはブッシングポケット下端に水平加速度\( \ 5 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)で共振の正弦\( \ 3 \ \)波,の動的設計が採用されます。ただし,機器の共振周波数が\( \ 0.5 \ \mathrm {Hz} \ \)未満の場合は\( \ 0.5 \ \mathrm {Hz} \ \),\( \ 10 \ \mathrm {Hz} \ \)以上の場合には\( \ 10 \ \mathrm {Hz} \ \)を用います。
さらに,\( \ 2011 \ \)年に発生した東日本大震災では,がいし形機器やブッシング以外の部位においても被害が発生したため,多くの周波数成分を含む波形に対して耐震強度の確認を行う応答スペクトル法へ耐震設計が見直されてきています。
【解答】
(1)動的設計手法が採用されている理由
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通りです。
(試験センター解答例)
がいし類を多く使用するがいし形機器や変圧器ブッシングは地震に共振する可能性があり,地震に対する動的応答の方が静的水平加速度\( \ 5 \ \mathrm {[m / s^{2}]} \ \left( \mathrm {0.5G}\right) \ \)よりも厳しい場合が多く,また,過去の地震による被害も静的設計手法により設計されたがいし形機器及び変圧器ブッシングに集中している。したがって,これらの機器を対象に動的設計手法が採用されている。
(2)屋外用がいし形機器の耐震設計
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通りです。
(試験センター解答)
屋外用がいし形機器(屋外に設置される開閉装置,計器用変成器及び電力用ケーブルヘッド)の耐震設計に関して,設計手法,設計地震力は次のとおりである。
① 設計手法:動的設計手法を適用する。
② 設計地震力:
・加速度は,水平加速度\( \ 3 \ \mathrm {[m / s^{2}]} \ \left( \mathrm {0.3G}\right) \ \)とする。
・波形は,共振正弦\( \ 3 \ \)波とする。なお,機器の固有周波数が\( \ 0.5 \ \mathrm {[Hz]} \ \)を下回るとき又は\( \ 10 \ \mathrm {[Hz]} \ \)を上回るときは,設計波形の振動数をそれぞれ\( \ 0.5 \ \mathrm {[Hz]} \ \)又は\( \ 10 \ \mathrm {[Hz]} \ \)とする。
・印加箇所は,架台下端とする。
(3)\( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以上の屋外変圧器の変圧器本体とブッシングの耐震設計
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通りです。
(試験センター解答)
屋外変圧器(\( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以上)の耐震設計に関して,設計手法,設計地震力は次のとおりである。
(3-1)ブッシング
① 設計手法:動的設計手法を適用する。
② 設計地震力:
・加速度は,水平加速度\( \ 5 \ \mathrm {[m / s^{2}]} \ \left( \mathrm {0.5G}\right) \ \)とする。
・波形は,共振正弦\( \ 3 \ \)波とする。
・印加箇所は,ブッシングポケット下端とする。
(3-2)変圧器本体(ブッシングを除く部分)
① 設計手法:静的設計手法を適用する。
② 設計地震力:
・静的水平加速度\( \ 5 \ \mathrm {[m / s^{2}]} \ \left( \mathrm {0.5G}\right) \ \)とする。