《電力・管理》〈変電〉[H26:問2] GISの異常診断手法に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

超高圧などの重要変電所に使用される大容量\(\mathrm {GIS}\)において,下記の異常を診断する手法について,その概要を説明せよ。

(1) \(\mathrm {GIS}\)母線の絶縁異常

(2) \(\mathrm {GIS}\)母線のシール異常

(3) \(\mathrm {GIS}\)母線及び\(\mathrm {SF_{6}}\)ガス遮断器の通電異常

(4) \(\mathrm {SF_{6}}\)ガス遮断器の機械的異常

【ワンポイント解説】

\(\mathrm {GIS}\)に関する論説問題は非常によく類題が出題されていますので本問は重要度が非常に高いと思って取り組んで下さい。\(\mathrm {GIS}\)は遮断器や断路器,母線等を\(\mathrm {SF_{6}}\)ガスで充填し密閉された容器の中で取り扱う設備で,信頼度が非常に高く,保守が容易であるという特徴があります。

【解答】

(1)\(\mathrm {GIS}\)母線の絶縁異常
(ポイント)
・絶縁異常で発生する事象は部分放電である。
・部分放電の検出方法としては,電気的に部分放電によるパルスを検出する方法,化学的に分解ガスを検出する方法,部分放電時に発生する振動や音響を検出する方法等がある。

(試験センター解答例)
絶縁異常の兆候をとらえる主な診断技術は部分放電の検出である。部分放電に伴ってタンク内部に発生する各種現象を電気的(電磁波),機械的(\(\mathrm {AE:Acoustic Emission}\))に検出する方法が使われている。また,分解ガスを検出する化学的方法,\(\mathrm {UHF}\)帯域の電磁波を検出することで部分放電を \(\mathrm {pC}\)感度で管理する方法も採用されている。
特に絶縁異常の主な要因である金属異物については,異物が交流電界内を振動中に,タンク表面に衝突して発生する音波や異物の存在により発生する部分放電を\(\mathrm {AE}\)センサ(超音波センサ)や加速度センサにより検出する方法が使われている。

(2)\(\mathrm {GIS}\)母線のシール異常
(ポイント)
・シール異常で発生するのはガス漏れとそれに伴うガス圧力の低下である。
・ガス漏れやガス圧力の低下を検出する方法としてはガス密度スイッチ,ガス圧力センサ等がある。

(試験センター解答例)
ガス配管,フランジ部などでシール異常があると,ガス漏れが生じ,ガス圧力低下に至る。ガス漏れに対する診断技術としては,ガス圧力の変化を測定する方法とタンクからのガス漏れがないことを直接的に検出する方法があり,それぞれガス圧力センサやガス密度スイッチを用いた測定,ガスリークディテクタによる検出が採用されている。

(3)\(\mathrm {GIS}\)母線及び\(\mathrm {SF_{6}}\)ガス遮断器の通電異常
(ポイント)
・通電異常で最も可能性が高いのは主回路導体の接触不良である。
・接触不良を検出する方法としては,導体の接触抵抗を測定する方法,不良箇所の局部過熱を赤外線カメラで測定する方法や局部過熱による分解ガスを測定する方法等がある。

(試験センター解答例)
\(\mathrm {GIS}\)母線の通電異常の要因として,主回路導体の接触不良がある。この接触不良を検出する診断技術としては,導体の接触抵抗を測定する方法,局部加熱に起因するタンク温度上昇を温度センサ,赤外線カメラで検出する方法,局部過熱により発生する\(\mathrm {SF_{6}}\)分解ガスを測定する方法,また通電異常箇所から発生する部分放電を検出する方法などが採用されている。
\(\mathrm {SF_{6}}\)ガス遮断器の通電異常においては,コンタクト損耗異常の検知がある。このコンタクト損耗異常の主な要因としては,大電流遮断時のコンタクトの損耗がある。コンタクトの損耗は開閉特性(ワイプ量の測定など)を確認する方法があるが,電流遮断によるコンタクトの損耗は,一様に発生しないため,開閉特性では確認できない場合もあり,累積遮断回数により管理する場合もある。

(4)\(\mathrm {SF_{6}}\)ガス遮断器の機械的異常
(ポイント)
・機械的異常とは駆動部の固着による不動作であり,原因としてはグリスの劣化や機器のゆるみ,電装品の不具合等がある。
・機械的異常を診断する技術としては,開閉動作特性を測定したり,動作速度をセンサで検出する方法等がある。

(試験センター解答例)
\(\mathrm {SF_{6}}\)ガス遮断器の操作機構部の固渋や不動作の要因として,グリスの劣化や電装品の不具合などが挙げられる。
機械的異常の診断技術としては,開閉動作特性を測定し,動作特性不良を判定する方法がある。開閉動作特性を測定する方法としては,制御電流や補助スイッチの動作を測定する方式,機構部の動作速度をセンサにて検出する方式がある。また,油圧操作用油圧系統の異常を油圧ポンプの動作頻度で検出する方法などがある。



記事下のシェアタイトル