【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
電力系統では部分的事故が系統の異常現象(不安定現象を含む)によって拡大・波及し,大規模な停電となることを防止するために,事故波及防止リレーシステムが導入されている。この事故波及防止リレーシステムについて,次の問に答えよ。
(1) 事故波及防止リレーシステムが適用対象とする系統の異常現象(不安定現象を含む)のうち3種類を挙げよ。
(2) 上記(1)で答えた3種類の異常現象に対し事故波及防止リレーシステムはそれぞれどのような動作をするか簡潔に述べよ。
(3) 事故波及防止リレーシステムにおいて制御量を決定する方式には,動作原理からみていくつかの方式が存在するが,どのような方式であるか簡潔に述べよ。
【ワンポイント解説】
一種では毎年のようにリレーに関する計算問題もしくは論説問題が出題されています。なかなか的が絞りにくいですが,日頃から文献等をよく見て勉強しておくことが必要です。
【解答】
(1)事故波及防止リレーシステムが適用対象とする系統の異常現象(不安定現象を含む)のうち3種類
(ポイント)
・有効電力のアンバランス→周波数の異常,無効電力のアンバランス→電圧不安定になる。
(試験センター解答例)
①系統周波数の異常,②安定度の喪失,③過負荷の連鎖,④電圧不安定現象がある。
(2)3種類の異常現象に対し事故波及防止リレーシステムはそれぞれどのような動作をするか
(ポイント)
・基本的には有効電力の調整は負荷の調整,無効電力の調整は調相設備による調整もしくは負荷遮断となる。
・過負荷に関しては他の異常現象と比較して時間的猶予があるので,負荷調整や系統切替等で対応することも可能な場合がある。
(試験センター解答例)
①では,周波数の異常低下に対しては,揚水発電所が揚水している場合は揚水遮断し,次には必要量の負荷遮断を適切に行う。
②では,該当する電源系統の発電制限,発電遮断などにより電力動揺を抑制する。
③では,該当する系統の発電制限,発電遮断,負荷遮断などを適切に選択あるいは組み合わせて実施し,過負荷を抑制する。
④では,該当する負荷系統において調相設備の投入,負荷遮断を適切に行い電圧低下を抑制する。
(3)事故波及防止リレーシステムにおいて制御量を決定する方式
(ポイント)
・事前に制御量や制御対象を決定しておく事前演算方式,事故中もしくは事故後の情報から異常現象を予測して制御量を決定する事後演算方式とリレー形の方式がある。
(試験センター解答例)
事故波及防止リレーシステムにおいて制御量を決定する方式には,以下の3 種類がある。
① 系統擾乱(じょうらん)に発展し得る事故を想定して,事前情報からあらかじめ制御量を設定しておく事前演算方式。
② 事故中及び事故後の情報をもとに演算を行い,制御量を決定する事後演算方式。
③ 特に演算を伴わない設備事故除去リレーと同様な構成のリレー形の方式。