《電力》〈原子力〉[R02:問2]原子力発電用のタービンとタービン発電機の特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,原子力発電用のタービンとタービン発電機の特徴に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

原子力用タービンでは,原子炉から取り出す蒸気条件が火力用ボイラとは異なるため,同一出力の火力用タービンに比べて,蒸気消費量が\( \ \fbox {  (1)  } \ \)なる。また,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を使用するため,タービン翼の侵食防止対策と併せて,高圧タービンと低圧タービンの連絡管の途中に\( \ \fbox {  (3)  } \ \)が設けられている。

我が国では商用の原子炉として二つの炉形が使われており,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の炉形では発生した蒸気を直接タービンで使用し,もう一方の炉形では蒸気発生器からの蒸気をタービンに使用する。

原子力用タービン発電機は回転速度が\( \ 1500 \ \)又は\( \ 1800 \ \mathrm {rpm} \ \)の\( \ 4 \ \)極機を採用しており,同一容量の火力用\( \ 2 \ \)極機に比べ電機子巻線漏れリアクタンスや界磁巻線漏れリアクタンスが大きくなるため,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が増加する。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 過熱蒸気     &(ロ)& 過渡リアクタンス     &(ハ)& 抽気加熱器 \\[ 5pt ] &(ニ)& 給水加熱器      &(ホ)& 励磁電力     &(ヘ)& 少なく \\[ 5pt ] &(ト)& 飽和蒸気     &(チ)& 加圧水形     &(リ)& 多く \\[ 5pt ] &(ヌ)& 漂遊負荷損     &(ル)& 湿分分離器     &(ヲ)& 界磁銅損 \\[ 5pt ] &(ワ)& エコノマイザー     &(カ)& 沸騰水形     &(ヨ)& 高速増殖形 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

1種としては非常に珍しい原子力発電からの出題です。
内容は3種でよく出題される内容のレベルなので,わからない場合は\( \ 3 \ \)種受験時に使用したテキスト等で復習しておくようにしましょう。

1.原子力発電所のタービン発電機の特徴
原子力発電所の蒸気タービンは,高圧タービンと低圧タービンで構成され,以下のような特徴があります。
・原子炉(BWR)又は蒸気発生器(PWR)で発生した蒸気が飽和蒸気であるため,過熱蒸気を使用する火力発電所のタービンに比べ,蒸気温度・圧力ともに低い。
・火力発電所より低温低圧蒸気を使用するため,タービンから復水器での熱落差が小さくなり,タービン室効率が低くなるので,熱効率は一般に低くなる。
・低温低圧蒸気である分,同じ出力の火力発電所のタービンと比べ,タービンに送られる蒸気量を多くする必要がある。
・高圧タービンと低圧タービンの間に湿分分離器を設け,湿分を除去する必要がある。
・低圧タービンの最終段翼の最も回転半径が大きい翼の侵食を防ぐため\( \ 4 \ \)極機として回転数を\( \ 1500 ~ 1800 \ \mathrm {{min}^{-1}} \ \)に下げて運転する。

2.原子炉の型式
①沸騰水型(BWR)
蒸気発生器を持たないので,放射性物質がタービンに直接持ち込まれるのが大きな特徴で,他には以下の特徴があります。
・炉心圧力が低く蒸気発生器や加圧器がないので,構造が加圧水型(PWR)と比較して簡単
・再循環ポンプを持ち,ポンプでの流量によって出力を調整する。
・制御棒でも出力を調整するが,汽水分離器があるので,下から上に向かって挿入される。
・何らかの原因で出力が上昇すると気泡が発生し,反応が抑制されるため,自動で出力が調整される。

②加圧水型(PWR)
蒸気発生器で蒸気を発生させるので,通常運転時放射性物質がタービンに持ち込まれないという特徴があり,他にも以下のような特徴があります。
・タービン系統に放射性物質が持ち込まれないので,タービンや復水器のメンテナンス時に放射能対策が不要。
・加圧器を持ち,原子炉内の圧力が高い。軽水の沸点が上がるので,沸騰しない。
・ホウ素濃度で出力調整を行う。
・制御棒の抜き差しでも出力調整するが,上から下に向かって挿入されるため,安全性に有利である。
・蒸気発生器等の過程を経る分,若干熱効率は劣る。


引用:資源エネルギー庁原子力白書2013

【解答】

(1)解答:リ
題意より解答候補は,(ヘ)少なく,(リ)多く,になると思います。
ワンポイント解説「1.原子力発電所のタービン発電機の特徴」の通り,原子力発電所で使用する蒸気は火力発電所に比べ低温低圧の蒸気であるため,蒸気の持つ保有エネルギーやタービンでの熱落差も小さくなるため,同一出力では蒸気は多く使用します。

(2)解答:ト
題意より解答候補は,(イ)過熱蒸気,(ト)飽和蒸気,になると思います。
ワンポイント解説「1.原子力発電所のタービン発電機の特徴」の通り,原子力発電所で使用するのは飽和蒸気となります。

(3)解答:ル
題意より解答候補は,(ハ)抽気加熱器,(ニ)給水加熱器,(ル)湿分分離器,(ワ)エコノマイザー,になると思います。
原子力発電所の高圧タービンと低圧タービンの間に設けられるのは湿分分離器で,低圧タービンでの侵食を防止する役割があります。
給水加熱器とエコノマイザーは火力発電所で使用される機器であり,給水加熱器はタービンの抽気でボイラー給水を温めるもの,エコノマイザーは節炭器とも呼ばれ,ボイラの排気で給水を温めるものとなります。

(4)解答:カ
題意より解答候補は,(チ)加圧水形,(カ)沸騰水形,(ヨ)高速増殖形,になると思います。
ワンポイント解説「2.原子炉の型式」の通り,発生した蒸気を直接タービンで使用するのは沸騰水形となります。

※ 「形」及び「型」はどちらも使用します。

(5)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)過渡リアクタンス,(ホ)励磁電力,(ヲ)界磁銅損,になると思います。
平成27年機械問2に過渡リアクタンスに関する内容が出題されていますが,電機子漏れリアクタンスと界磁巻線漏れリアクタンスが大きくなると,過渡リアクタンスが増加します。



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