《機械》〈電気化学〉[H25:問6]食塩電解のメカニズムに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,食塩電解に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

食塩電解は,水溶液を利用する電解工業として,世界的に最も大きな産業である。最近では水銀法及び隔膜法に代わりイオン交換膜法が用いられており,この技術では我が国が世界をリードしている。この電解では次の反応が利用される。
\[
\begin{eqnarray}
2\mathrm {NaCl} \ +2 \ \mathrm {H_{2}O} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ \mathrm {H_{2}} \ + \ 2\mathrm {NaOH} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ここでイオン交換膜は,アノード室とカソード室との分離とともにイオンが選択的に移動する機能をもっている。食塩電解においてはイオン交換膜中を\( \ \fbox {  (1)  } \ \)イオンがアノード室からカソード室に選択的に移動することによって反応が進む。また,アノードでは\( \ \fbox {  (2)  } \ \)反応が起こり,生成するものは化学式で書くと\( \ \fbox {  (3)  } \ \)となる。このアノードで生成する物質\( \ 1 \ \)分子が生成するのに関与する電子数は\( \ \fbox {  (4)  } \ \)電子である。また,両極で気体が生成する。生成する気体の単位電気量当たりに得られる体積を比べると\( \ \fbox {  (5)  } \ \)なる。

この生産方法のエネルギー原単位は水銀法をしのいでおり,省エネルギー技術としても普及が進んでいる。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 中 和     &(ロ)& \mathrm {NaOH}     &(ハ)& 3 \\[ 5pt ] &(ニ)& \mathrm {Cl_{2}}     &(ホ)& ナトリウム     &(ヘ)& アノードで大きく \\[ 5pt ] &(ト)& \mathrm {H_{2}}     &(チ)& 塩化物     &(リ)& 還 元 \\[ 5pt ] &(ヌ)& カソードで大きく     &(ル)& 酸 化     &(ヲ)& 1 \\[ 5pt ] &(ワ)& 両極で同じに     &(カ)& 水酸化物     &(ヨ)& 2 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

食塩電解のフローと反応式を理解しているかを問う問題となっています。分からない場合も分からないなりに問題文に与えられている反応式から想像できるようになると相当実力が身に付いたと言えると思います。

1.イオン交換膜法による食塩電解
イオン交換膜法は最もポピュラーに使用されている方法で,図1のようなフローとなります。イオン交換膜はナトリウムイオン\( \ \mathrm {Na}^{+} \ \)のみが通過する構造となっています。また陽極と陰極の反応式は以下の通りとなります。
\[
\begin{eqnarray}
陽極&:&2\mathrm {Cl}^{-} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ 2\mathrm {e}^{-} \\[ 5pt ] 陰極&:&2\mathrm {Na}^{+} \ + \ 2\mathrm {H}^{+} \ + \ 2\mathrm {OH}^{-} \ + \ 2\mathrm {e}^{-} \ → \ \mathrm {H_{2}} \ + \ 2\mathrm {NaOH} \\[ 5pt ] 全体&:&2\mathrm {NaCl} \ + \ 2\mathrm {H_{2}O} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ \mathrm {H_{2}} \ + \ 2\mathrm {NaOH} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【解答】

(1)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)ナトリウム,(チ)塩化物,(カ)水酸化物,となると思います。ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,イオン交換膜を移動するのはナトリウムイオンとなります。

(2)解答:ル
題意より,解答候補は(イ)中和,(リ)還元,(ル)酸化,となると思います。ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,陽極(アノード)では電子を放出する酸化反応が起こります。

(3)解答:ニ
題意より,解答候補は(ロ)\( \ \mathrm {NaOH} \ \),(ニ)\( \ \mathrm {Cl_{2}} \ \),(ト)\( \ \mathrm {H_{2}} \ \),となると思います。ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,陽極(アノード)では\( \ \mathrm {Cl_{2}} \ \)が発生します。

(4)解答:ヨ
題意より,解答候補は(ハ)\( \ 3 \ \),(ヲ)\( \ 1 \ \),(ヨ)\( \ 2 \ \),となると思います。ワンポイント解説「1.イオン交換膜法による食塩電解」の通り,陽極(アノード)では,
\[
\begin{eqnarray}
&&2\mathrm {Cl}^{-} \ → \ \mathrm {Cl_{2}} \ + \ 2\mathrm {e}^{-} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の反応が起こり,\( \ 1 \ \)分子あたり\( \ 2 \ \)個の電子が関与します。

(5)解答:ワ
題意より,解答候補は(ヘ)アノードで大きく,(ヌ)カソードで大きく,(ワ)両極で同じに,となると思います。気体の体積は\( \ 1 \ \mathrm {kmol} \ \)あたり\( \ 22.4 \ \mathrm {m^{3}} \ \)なので,水素でも塩素でも体積は両極で同じになります。



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