《機械》〈電気機器〉[R02:問2]直流遮断器で採用される方式とその原理に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,直流遮断器に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

交流遮断器では交流の周期的な電流の零点を利用して遮断するが,直流電流は零点を持たないので,直流を遮断する場合には意図的に電流に零点を作る必要がある。直流電気鉄道で一般に用いられている定格電圧が\( \ 3 \ \mathrm {kV} \ \)以下の気中直流遮断器は,電圧が低いので\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を採用している。本方式では,直流遮断時の電極間の直流アークをアークシュート内で伸ばし,この直流アーク電圧を\( \ \fbox {  (2)  } \ \)以上とすることにより電流を零まで限流して遮断する。ただし,直流短絡故障時等の大電流を遮断する場合に短絡電流が数十\( \ \mathrm {ms} \ \)継続するため,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)やアークシュートの損耗が激しく大電流遮断後の点検・保守を必要とする。

\( \ 1990 \ \)年代末ごろからは交流遮断器で実績のある\( \ \fbox {  (4)  } \ \)バルブを遮断部に用いて他励発振と組み合わせた直流遮断器が実用化されている。この場合の遮断は,あらかじめ充電されたコンデンサを遮断部と並列に設け,遮断部の開極に合わせて充電しておいたコンデンサ電荷をリアクトルを通して放電させ,これにより発生する\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を重畳することで,強制的に電流零点を作って遮断部のアークを消弧して遮断する。本方式の遮断器は,動作後の点検・保守が大きく軽減される特徴を持っている。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& バッファシリンダ     &(ロ)& 真空     &(ハ)& 逆電圧発生方式 \\[ 5pt ] &(ニ)& 振動電流     &(ホ)& 接続端子     &(ヘ)& 補償電圧 \\[ 5pt ] &(ト)& 保持電流     &(チ)& 保持電圧     &(リ)& 操作機構 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 定格遮断電流     &(ル)& 転流方式     &(ヲ)& 電源電圧 \\[ 5pt ] &(ワ)& 電極接点部     &(カ)& \mathrm {SF_{6}} \ ガス     &(ヨ)& サイリスタ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

直流遮断器に関する問題です。
直流遮断器は鉄道や製鉄等の産業において必要な遮断器ですが,直流の場合は電圧電流の零点がないため交流と比較して遮断しにくく,何らかの形で零点を作る必要があります。
\( \ 2 \ \)種や\( \ 3 \ \)種の問題ではまず出題されない内容と言えるでしょう。

1.アーク長とアーク電圧の関係
アーク長とアーク電圧の関係はアークによる電圧降下がアーク長に比例し,電極の電圧降下が一定であるとするとおおよそ下図のような線形の関係を示します。
したがって,アーク長を強制的に長くし,アーク電圧が供給している電圧以上になれば,電流を遮断することができるようになります。

2.直流真空遮断器の構成と原理
直流真空遮断器の基本構成図を下図に示します。
真空バルブと並列にコンデンサを設け,予めコンデンサに電荷を蓄えておきます。過電流を検知し遮断器の開放指令が出されアークが発生した際にコンデンサを投入して,コンデンサの放電電流(振動電流)を流し主回路電流に重畳することで電流零点を作り,アークを消弧し遮断することができます。


出典:富士電機株式会社 富士時報 Vol.72

【解答】

(1)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)逆電圧発生方式,(ル)転流方式,等になると思います。
直流遮断時の電極間の直流アークをアークシュート内で伸ばす方法を逆電圧発生方式といいます。
イメージとしてはアーク長を無理やり伸ばすことによりアークの電圧降下が大きくなるので,逆電圧が発生させることと等価関係にあるからと考えれば良いと思います。

(2)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)補償電圧,(チ)保持電圧,(ヲ)電源電圧,になると思います。
(2)の選択肢においては通常運転状態での遮断となっているので電源電圧が適当となります。この気中直流遮断器による遮断は,アークを強制的に大きく発生させるようなものなので,アーク発生部の損傷は正常動作時でも発生することになります。

(3)解答:ワ
題意より解答候補は,(イ)バッファシリンダ,(ホ)接続端子,(リ)操作機構,(ワ)電極接点部,(ヨ)サイリスタ,になると思います。
短絡故障時の大電流により損耗が激しくなるのは,アークの発生する電極接点部となります。操作機構部は直接アークに接触するわけではないので,損傷は発生しません。

(4)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)真空,(カ)\(\mathrm {SF_{6}} \ \)ガス,になると思います。
\( \ 1990 \ \)年代末ごろから直流遮断器で実用化されているのは真空バルブを使用した真空遮断器となります。

(5)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)振動電流,(ト)保持電流,(ヌ)定格遮断電流,になると思います。
ワンポイント解説「2.直流真空遮断器の構成と原理」の通り,コンデンサから供給する電流として最も適当なのは振動電流です。パワーエレクトロニクスの勉強をしていると出てくると思いますが,保持電流とはサイリスタ等でオン状態を維持することができる電流の最低値をいいます。



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