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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
高圧受電設備の保護について,次の問に答えよ。
(1) 高圧受電設備の主遮断装置と保護の方式について,受電設備容量 300 kV⋅A 以下とそれ以上に分けて,それぞれ 130 字程度以内で記載せよ。
(2) 地絡方向リレー (DGR) と地絡リレー (GR) の地絡事故に対する動作原理の違いを, 150 字程度以内で記載せよ。
【ワンポイント解説】
高圧受電設備の保護方式と受電設備に使用される地絡方向リレーと地絡リレーの違いに関する問題です。
(1)は高圧受電設備における基本知識となりますので,覚えるようにしておいて下さい。(2)の知識があれば,積極的に選択しても良い問題ですが,リレーの細かな動作原理や構内事故や構外事故の電流位相の違い等はやや専門性の強い分野となりますので,電験対策としては概要を知っておけば十分かと思います。
1.主遮断装置の CB 形と PF⋅S 形
① CB 形
主遮断装置に高圧交流遮断器(Circuit Breaker)を用いる方式で,容量が大きくとれますが, PF⋅S 形と比べ,コストとスペースが必要となります。
② PF⋅S 形
主遮断装置に高圧限流ヒューズと高圧交流負荷開閉器(Power Fuse combination Switches)を用いる方式で, 300 kV⋅A 未満の比較的容量の小さい場合に使用されます。
2.地絡リレー (GR) と地絡方向リレー (DGR)
①地絡リレー
零相変流器 (ZCT) により,地絡を検出する方式です。
通常運転時は三相交流の電流のベクトル和は零であるため,零相電流は零となり零相変流器は動作しませんが,地絡事故等により三相不平衡が発生した際に動作し,遮断器に遮断信号を送ります。
需要家構内の事故のみならず,需要家構外の事故に対しても動作してしまう可能性があります。
②地絡方向リレー
零相変流器 (ZCT) に加え,零相電圧検出器 (ZPD) で零相電圧も検出する方式です。
零相電圧を検出することで,零相電流の位相を検出することができるため,需要家構内と構外の事故の事故電流の位相の違いを利用して,誤作動を防止しています。
【解答】
(1)高圧受電設備の主遮断装置と保護の方式の違い
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.主遮断装置の CB 形と PF⋅S 形」の通りです。
・試験センターの模範解答が少し長めなので, CB 形と PF⋅S 形に触れて,事故電流の取扱いに触れていれば十分高得点を取得可能かと思います。
(試験センター解答)
受電設備容量 300 kV⋅A 以下の主遮断装置には,高圧限流ヒューズ (PF) と負荷開閉器 (LBS 又は S) を組み合わせた方式が主に用いられる。
地絡事故が発生したときは地絡リレー (GR) 又は地絡方向リレー (DGR) で検出し開閉器をトリップ(※)させ,短絡事故のときは,短絡電流が大電流であるため PF で遮断する。
300 kV⋅A 以上の主遮断装置には,真空遮断器 (VCB) などの遮断器 (CB) と地絡・短絡などのリレーを組み合わせた方式が主に用いられる。
地絡,短絡などの事故,あるいは過負荷が発生したときは, GR 又は DGR ,過電流リレー (OCR) などで検出(※)し CB を遮断させ設備を保護する。
※地絡事故時の保護は, PAS の取り付けに言及した場合, PAS を遮断も可
(・地絡リレーは,地絡過電流リレーでも可)
(・負荷開閉器は,高圧交流負荷開閉器でも)
(2)地絡方向リレー (DGR) と地絡リレー (GR) の地絡事故に対する動作原理の違い
(ポイント)
・ワンポイント解説「2.地絡リレー (GR) と地絡方向リレー (DGR) 」の通りです。
・リレーの動作原理となっていますが,零相電圧の検出と需要家構外の事故による誤作動の内容が書いてあれば十分かと思います。
(試験センター解答)
DGR は,零相電圧検出器 (ZPD) で零相電圧 (V0) ,零相変流器 (ZCT) で零相電流 (I0) を同時に検出する。また, V0 と I0 の位相から地絡電流の方向を判別することで,地絡事故が自家用構内側か構外側かを区別している。
GR は, ZCT のみしか使用していないため,一定以上の I0 が流れた場合に地絡事故の判定をする。零相電流の値のみのため,誤作動の可能性がある。