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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,パワーエレクトロニクス技術を応用した送変電設備に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。
\( \ 1950 \ \)年代のダイオード開発に続く逆阻止三端子\( \ \fbox { (1) } \ \)の出現とそれ以降の各種デバイスの高電圧化・大電流化・高速化は大きな進歩を遂げ,これらを応用した半導体電力変換装置の技術分野はパワーエレクトロニクスと呼ばれ,様々な用途で利用されている。これらの機器を送電系統に使用して安定度向上方策を施し,電力系統を柔軟に制御することが考えられているが,これらのパワーエレクトロニクス機器を総称して\( \ \fbox { (2) } \ \)機器と呼んでおり,その代表的な応用例としては,次のようなものがある。
① 系統安定化等を目的とした,交流と直流の電力変換機能を用いた直流送電及び送電線のない直流送電である\( \ \fbox { (3) } \ \)装置がある。
② 系統電圧を調整して電圧の安定化や系統安定度の向上を図る目的とした,静止形\( \ \fbox { (4) } \ \)装置がある。特に\( \ \fbox { (5) } \ \)を用いた装置は,\( \ \mathrm {SVG} \ \)又は\( \ \mathrm {STATCOM} \ \)と呼ばれている。
〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& チョッパ &(ロ)& \mathrm {FACTS} &(ハ)& 無効電力補償 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 電圧フリッカ補償 &(ホ)& 自励式変換器 &(ヘ)& \mathrm {BTB} \\[ 5pt ]
&(ト)& トランジスタ &(チ)& \mathrm {SSR} &(リ)& サイリスタ \\[ 5pt ]
&(ヌ)& ガス遮断器 &(ル)& 有効電力補償 &(ヲ)& \mathrm {AVR} \\[ 5pt ]
&(ワ)& 他励式変換器 &(カ)& \mathrm {UPS} &(ヨ)& 蓄電池 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
(注)英語の略語は次のとおり
\( \ \mathrm {FACTS} : \mathrm {Flexible \ AC \ Transmission \ System} \ \)
\( \ \mathrm {BTB} \ \ :\mathrm {Back \ to \ Back} \ \)
\( \ \mathrm {SSR} \ \ \ :\mathrm {Solid \ State \ Relay} \ \)
\( \ \mathrm {AVR} \ :\mathrm {Automatic \ Voltage \ Regulator} \ \)
\( \ \mathrm {UPS} \ \ :\mathrm {Uninterruptible \ Power \ Supply} \ \)
【ワンポイント解説】
パワーエレクトロニクス技術の発展とそれを利用した設備に関する問題です。
電力科目や機械科目の知識を合わせたような総合力を問われているような問題です。法規科目のテキストにはほぼ掲載されていない内容と思いますので,一次試験の段階から二次試験を見据え幅広く勉強を進めることをお勧めします。
1.静止形無効電力補償装置
サイリスタによる高速制御で,無効電力を遅れから進みまで調整し,電圧の調整や系統の安定度向上を図ることができる装置です。
①サイリスタ制御リアクトル方式\( \ \left( \mathrm {TCR} \right) \ \)
固定コンデンサとリアクトルを並列接続し,サイリスタの位相制御を用いてリアクトル電流の制御をして,電力を進みから遅れまで連続的に変化させることができる方式です。

②サイリスタ開閉コンデンサ方式\( \ \left( \mathrm {TSC} \right) \ \)
固定リアクトルとコンデンサを並列接続し,サイリスタにより並列コンデンサを開閉させて無効電力の補償する方式です。段階的な調整を行うことになります。

③\( \ \mathrm {STATCOM} \ \)(自励式\( \ \mathrm {SVC} \ \))
自励式インバータとコンデンサを用いることにより,進みから遅れまで連続的に制御する方式で,\( \ \mathrm {PWM} \ \)制御により低次高調波の抑制を図ることができます。

2.日本での直流送電の現状
直流送電は安定度の問題がなく,無効電流による損失もなく,電線も\( \ 2 \ \)条で良い等の理由から,主に長距離・大容量の送電に利用されています。
日本では以下の直流連系されている場所があります。
①北海道ー本州直流連系
北海道と本州を結ぶ直流送電で,送電距離も\( \ 167 \ \mathrm {km} \ \)と非常に長く,直流送電のメリットが享受できると考えられます。完成も\( \ 1979 \ \)年と最も古いです。
②紀伊水道直流連系
本州と四国を結ぶ直流送電で,送電距離は\( \ 100 \ \mathrm {km} \ \),完成が\( \ 2000 \ \)年とどちらも覚えやすい数字となっています。
③南福光連系所
北陸電力と中部電力を繋ぐ直流連系で,関西電力との三者間の潮流制御をしやすくするために設置された直流送電を伴わない交直変換のみを行う送電で,\( \ \mathrm {BTB}\left( \mathrm {Back \ to \ Back}\right) \ \)と呼ばれています。ただし,\( \ 2026 \ \)年度に廃止される計画となっています。
出典:Power Academy 電気の施設訪問レポート vol.17
【解答】
(1)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)チョッパ,(ト)トランジスタ,(リ)サイリスタ,になると思います。
ワンポイント解説「1.静止形無効電力補償装置」の通り,このうち三端子の素子はトランジスタとサイリスタですが,パワーエレクトロニクス技術の発展は特にサイリスタの出現による効果が大きいと考えられます。
(2)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)\( \ \mathrm {FACTS} \ \),(ヘ)\( \ \mathrm {BTB} \ \),(チ)\( \ \mathrm {SSR} \ \),(ヲ)\( \ \mathrm {AVR} \ \),(カ)\( \ \mathrm {UPS} \ \),等になると思います。
送電系統に使用して安定度向上方策を施し,電力系統を柔軟に制御することができるパワーエレクトロニクス機器は総称して\( \ \mathrm {FACTS} \ \)(フレキシブル交流送電システム)機器と呼ばれています。
(3)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ヘ)\( \ \mathrm {BTB} \ \),(チ)\( \ \mathrm {SSR} \ \),(ヲ)\( \ \mathrm {AVR} \ \),(カ)\( \ \mathrm {UPS} \ \),(ヨ)蓄電池,等になると思います。
ワンポイント解説「2.日本での直流送電の現状」の通り,交流と直流の電力変換機能を用いた直流送電及び送電線のない直流送電を\( \ \mathrm {BTB} \ \)装置といいます。
(4)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)無効電力補償,(ニ)電圧フリッカ補償,(ル)有効電力補償,になると思います。
ワンポイント解説「1.静止形無効電力補償装置」の通り,系統電圧を調整して電圧の安定化や系統安定度の向上を図るために無効電力を調整する装置を静止形無効電力補償装置といいます。
(5)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)自励式変換器,(ヌ)ガス遮断器,(ワ)他励式変換器,等になると思います。
ワンポイント解説「1.静止形無効電力補償装置」の通り,\( \ \mathrm {SVG} \ \)又は\( \ \mathrm {STATCOM} \ \)は自励式変換器を用いた装置です。