《機械》〈電熱〉[H27:問4]ヒートポンプのメカニズムに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,ヒートポンプに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

エアコン,冷凍機,給湯器などにヒートポンプが広く用いられている。ヒートポンプは,低温側の熱交換器と高温側の熱交換器との間に冷媒を循環させることで,低温側の熱を高温側へくみ上げている。

まず,低温側の熱交換器において,冷媒が低温側から熱を吸収して蒸発する。その後,冷媒は\( \ \fbox {  (1)  } \ \)によって高温,高圧となり,高温側の熱交換器に送られる。そこで冷媒は高温側に熱を放出して凝縮する。続いて,冷媒は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を通ることによって低温,低圧となって再び低温側の熱交換器に送られる。このような熱サイクルの基本サイクルは\( \ \fbox {  (3)  } \ \)と呼ばれる。

ヒートポンプの性能を示す指標の一つとして\( \ \mathrm {COP} \ \)(成績係数)がある。低温側の熱交換器で吸収した熱量を\( \ Q_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[J]} \ \),ヒートポンプを動かすために使ったエネルギーを\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)として,熱損失などを無視すると,低温側の熱を高温側へくみ上げるときの\( \ \mathrm {COP} \ \)は\( \ \fbox {  (4)  } \ \)で与えられる。

また,近年,冷媒には,オゾン層破壊の心配がない\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が使われるようになっている。しかし,地球温暖化係数が高いことが課題である。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ランキンサイクル      &(ロ)& 過熱器 \\[ 5pt ] &(ハ)& 逆カルノーサイクル      &(ニ)& 圧縮機 \\[ 5pt ] &(ホ)& 復水器     &(ヘ)& カルノーサイクル \\[ 5pt ] &(ト)& 1+\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W}     &(チ)& 膨張弁 \\[ 5pt ] &(リ)& 四方弁     &(ヌ)& 加減弁 \\[ 5pt ] &(ル)& \frac {Q_{\mathrm {L}}}{W}   &(ヲ)& 1-\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \\[ 5pt ] &(ワ)& \mathrm {HCFC}(ハイドロクロロフルオロカーボン) \\[ 5pt ] &(カ)& \mathrm {HFC}(ハイドロフルオロカーボン) \\[ 5pt ] &(ヨ)& \mathrm {CFC}(クロロフルオロカーボン) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

ヒートポンプに関する問題で,電熱の中では誘電加熱や誘導加熱に続いて出題されやすい内容です。概要を理解しておけば問題ないと思います。

1.ヒートポンプの構成機器
ヒートポンプのフローを図1に示します。冷房時が青線,暖房時は赤線の流れとなります。冷房時を例に示します。
 蒸発器:膨張弁からの低温低圧の液を蒸発させ気化させます。
 四方弁:暖房冷房時に圧縮機に流れる媒体の向きを同じにするために向きを変えるものです。
 圧縮機:蒸発器から出た低圧の蒸気を高圧蒸気にします。
 凝縮器:圧縮機で高温高圧となった蒸気を凝縮し,液化させます。
 膨張弁:凝縮器から出た液を膨張し,低温低圧の液にします。

 ※図1において,暖房時には熱交換器である蒸発器と凝縮器の役割が逆となります。

2.ヒートポンプの成績係数(COP)
図1において,蒸発器の吸熱量\( \ Q_{\mathrm {L}} \ \)及び圧縮機にかける仕事量\( \ W \ \)と凝縮器の放熱量\( \ Q_{\mathrm {H}} \ \)は等しいので,
\[
Q_{\mathrm {H}}=Q_{\mathrm {L}}+W
\] という関係であり,冷房時と暖房時の成績係数\( \ \mathrm {{COP}_{L}} \ \),\( \ \mathrm {{COP}_{H}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {{COP}_{L}}&=&\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \\[ 5pt ] \mathrm {{COP}_{H}}&=&\frac {Q_{\mathrm {H}}}{W} \\[ 5pt ] &=&\frac {Q_{\mathrm {L}}+W}{W} \\[ 5pt ] &=&1+\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

(1)解答:ニ
ワンポイント解説「1.ヒートポンプの構成機器」の通り,蒸発器から出た蒸気は圧縮機によって高温,高圧の蒸気になります。

(2)解答:チ
ワンポイント解説「1.ヒートポンプの構成機器」の通り,凝縮器から出た冷媒は膨張弁で低温,低圧の液体になります。

(3)解答:ハ
ヒートポンプの熱サイクルを逆カルノーサイクルと言います。

(4)解答:ト
ワンポイント解説「2.ヒートポンプの成績係数(COP)」の通り,低温側の熱を高温側へくみ上げるときの成績係数は,\( \ \displaystyle 1+\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \ \)となります。

(5)解答:カ
題意より解答候補は(ワ)\( \ \mathrm {HCFC} \ \)(ハイドロクロロフルオロカーボン) ,(カ)\( \ \mathrm {HFC} \ \)(ハイドロフルオロカーボン),(ヨ)\( \ \mathrm {CFC} \ \)(クロロフルオロカーボン),となりますが,塩素を含む\( \ \mathrm {HCFC} \ \)(ハイドロクロロフルオロカーボン) ,\( \ \mathrm {CFC} \ \)(クロロフルオロカーボン)はオゾン層破壊の懸念があります。一方,\( \ \mathrm {HFC} \ \)(ハイドロフルオロカーボン)は地球温暖化係数が高く,管理が必要な媒体となります。



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