《電力》〈送電〉[H24:問6]架空送電線の振動に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,送電線の振動に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

毎秒数メートルの微風が,電線と直角に当たると電線の背後にカルマン渦ができて電線に\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の周期的な力が働き,これが電線の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と一致すると微風振動が発生する。全振幅は\( \ 3 \ \mathrm {[cm]} \ \)程度以下と小さいが,電線が長い間繰り返し応力を受けて電線を構成する素線が切れたり断線のおそれが生じる。微風振動は径間が長い場合や,直径が大きい割に重量の軽い電線の場合,電線の張力が大きい場合に発生しやすい。

雨で電線の下面に水滴が付き,しずくが落ちる状態では,コロナ放電が最も激しくなる。電線から帯電した水の粒子が射出するためその反作用で電線の振動を誘発する。これをコロナ振動といい\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の場合に発生しやすい。

電線に氷雪が付着して強風が当たると,氷雪の付き方が非対称であるため\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が発生し,自励振動を生じて電線が上下に大きく振動する。これをギャロッピングという。

多導体に特有の振動で,風上にある素導体によって乱された気流により風下の素導体が振動を起こす。素導体の間隔を数十メートル毎に保持している金具を支点とした振動である。この振動を\( \ \fbox {  (5)  } \ \)振動という。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& サブシンクロナス     &(ロ)& 無 風     &(ハ)& 張 力 \\[ 5pt ] &(ニ)& 揚 力     &(ホ)& 水平方向     &(ヘ)& 鉛直方向 \\[ 5pt ] &(ト)& スペーサ     &(チ)& 系統周波数     &(リ)& 風の方向 \\[ 5pt ] &(ヌ)& サブスパン     &(ル)& 抗 力     &(ヲ)& 固有振動数 \\[ 5pt ] &(ワ)& 台 風     &(カ)& 強 風     &(ヨ)& 強制振動周波数 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

送電線の振動に関する問題は,3種の時から定番の問題であったと思います。二次試験の論説問題にもよく出題される問題なので,確実に完答できるぐらいに習熟していきましょう。スリートジャンプも合わせて覚えておきましょう。

1.微風振動
風速\( \ 5 \ \mathrm {m/s} \ \)以下の比較的緩やかな風が電線と垂直方向に吹くと電線の風下側にカルマン渦が生じ,上下に振動する現象です。繰り返し疲労が蓄積すると,素線切れや断線を引き起こす可能性があります。
特徴
 ①電線の固有振動数と一致すると発生するため,径間の長い場合や,重量の軽い場合に発生しやすい。
 ②風速が緩やかでかつ一定の時発生しやすいため,山間部よりも平野部に発生しやすい。
 ③気流が安定している早朝あるいは日没に発生しやすい。
対策
 ①ダンパを取付け振動のエネルギーを吸収し,減衰を早める。
 ②アーマロッドを使用して,電線を補強し振動のエネルギーを吸収する。

2.ギャロッピング
電線に非対称な氷雪が付着し肥大化すると,微風振動と同様に電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象です。
特徴
 ①スペーサのために電線が回転できない多導体方式の方が発生しやすい。
 ②風圧を受けるエネルギーが大きいため,径間によって振幅が\( \ 10 \ \mathrm {m} \ \)以上になる場合もあり,相間短絡を起こしやすい。
対策
 ①難着雪リングを取り付け,着雪を防止する。
 ②相間スペーサを取り付け,短絡事故を防止する。
 ③ルート選定で風の主方向と直角に当たりやすくなるところ,冬季風が直接さらされる尾根上などを避けるようにする。

3.サブスパン振動
電線のスペーサとスペーサの間(サブスパン)で生じる振動。原理はギャロッピングと同じく電線の風下側にカルマン渦が生じ振動する現象です。
特徴
 ①振動周波数が\( \ 1~2 \ \mathrm {Hz} \ \)で,振幅が最大\( \ 50 \ \mathrm {cm} \ \)程度となる。
対策
 ①スペーサの間隔を適正に配置する。
 ②防振装置を採用する。
 ③ルート選定で風の主方向と直角に当たりやすくなるところを避けるようにする。

4.コロナ振動
電線下面にある水滴が滴下する際,コロナ放電により電線を蹴るとその反動で揚力を生じ,電線の固有振動数と一致するとコロナ振動を生じます。
特徴
 ①降雨量が多く(\( \ 5 \ \mathrm {mm/h} \ \)以上)で,無風の時発生しやすい。
 ②振幅は\( \ 10 \ \mathrm {cm} \ \)程度である。
対策
 ①多導体方式を採用する。
 ②がいし連結数を見直す等で重量を調整し,電線の固有振動数を調整する。

5.スリートジャンプ
氷雪が着氷し落下した際の跳ね上がりによる振動。一時的なもので,減衰性があるが,相間短絡を引き起こす可能性がある。
特徴
 ①跳ね上がりが大きいと相間短絡を引き起こす。
 ②風の影響ではないため,持続性はない。
対策
 ①難着雪リングを取り付け,着雪を防止する。
 ②相間スペーサを取り付け,短絡事故を防止する。
 ③電線同士の水平方向に間隔を設け(オフセット),電線の真上に電線がないようにする。

【解答】

(1)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ホ)水平方向,(ヘ)鉛直方向,(リ)風の方向,になると思います。冒頭の文で「毎秒数メートルの微風」となっているので,微風振動の内容であることがわかります。ワンポイント解説「1.微風振動」の通り,微風振動は電線の風下側にカルマン渦が生じ上下に振動する現象で,力のかかる方向は鉛直方向となります。

(2)解答:ヲ
題意より解答候補は,(チ)系統周波数,(ヲ)固有振動数,(ヨ)強制振動周波数,になると思います。周期的な力が電線の持つ固有振動数と一致すると振動が収束せず,振動し続けることになります。

(3)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)無風,(ワ)台風,(カ)強風,になると思います。ワンポイント解説「4.コロナ振動」の通り,コロナ振動は無風の時に発生しやすい現象です。

(4)解答:ニ
題意より解答候補は,(ハ)張力,(ニ)揚力,(ル)抗力,になると思います。ワンポイント解説「2.ギャロッピング」の通り,ギャロッピングは電線の風下側にカルマン渦が生じ上下に振動する現象で,揚力が最も適当となります。

(5)解答:ヌ
題意より解答候補は,(イ)サブシンクロナス,(ト)スペーサ,(ヌ)サブスパン,になると思います。ワンポイント解説「3.サブスパン振動」の通り,多導体のスペーサ間で生じる振動はサブスパン振動といいます。サブシンクロナスは回転機での振動の一種ですが,あまり重要ではありません。



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