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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
架空送電線は,電線のたるみを適切にとる必要がある。電線のたるみに及ぼす要因や考慮すべき事項について,(1)から(3)の文章をカッコ内の語句をすべて利用し,解答例にならって簡潔に完成させなさい。
なお,文中で利用したカッコ内の語句には下線を引くこと。また,語句は複数回利用してもよい。
(1) 電線のたるみ
電線のたるみは近似的には,・・・
(張力,径間長,荷重,反比例,二乗)
(2) 電線荷重
電線にかかる荷重は,・・・
(夏季,冬季,自重,風圧荷重,氷雪)
(3) 電線の伸び
電線は温度によって伸びるため,・・・
(夏季,冬季,たるみ,最低地上高,断線)
解答例
(問題例)電線の実長が・・・(たるみ,張力,変化)
(解答例)電線の実長がわずかに変化すると,たるみと張力は大きく変化する。
【ワンポイント解説】
電線のたるみ,荷重,伸びに関する問題です。
\( \ 3 \ \)種の頃から一般に計算問題の多い分野ですが,本問ではその内容を説明できるかが問われています。
いずれも重要な公式や数値が含まれていますので,必ず覚えておいて下さい。
1.電線のたるみの公式
図1の通り,径間を\( \ S \ [ \mathrm {m} ] \ \),水平張力\( \ T \ [ \mathrm {N} ] \ \),電線\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)あたりの質量荷重\( \ w \ [ \mathrm {N/m} ] \ \)とすると,電線のたるみ\( \ D \ [\mathrm {m} ] \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
D&=&\frac {wS^{2}}{8T} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。

2.電線の長さ\( \ L \ \)とたるみ\( \ D \ \)の関係
送電線の支持点間の距離\( \ S \ [ \mathrm {m} ] \ \)とたるみ\( \ D \ [ \mathrm {m} ] \ \)が与えられている時,電線の長さ\( \ L \ [ \mathrm {m} ] \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
L&=&S+\frac {8D^{2}}{3S} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められます。
3.電線の長さと温度変化の関係
電線の温度が\( \ t_{1} \ \mathrm {[℃]} \ \)の時,長さが\( \ L_{1} \ \mathrm {[m]} \ \)であった場合,\( \ t_{2} \ \mathrm {[℃]} \ \)の時の長さ\( \ L_{2} \ \mathrm {[m]} \ \)は,線膨張係数を\( \ \alpha \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
L_{2}&=&L_{1}\left \{ 1+\alpha \left( t_{2}-t_{1}\right) \right\} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
<電気設備の技術基準の解釈第58条(抜粋)>
架空電線路の強度検討に用いる荷重は、次の各号によること。
一 風圧荷重 架空電線路の構成材に加わる風圧による荷重であって、次の規定によるもの
イ 風圧荷重の種類は、次によること。
(イ) 甲種風圧荷重
58-1表に規定する構成材の垂直投影面に加わる圧力を基礎として計算したもの、又は風速\( \ 40 \ \mathrm { m / s} \ \)以上を想定した風洞実験に基づく値より計算したもの
(ロ) 乙種風圧荷重
架渉線の周囲に厚さ\( \ 6 \ \mathrm {mm} \ \)、比重\( \ 0.9 \ \)の氷雪が付着した状態に対し、甲種風圧荷重の\( \ 0.5 \ \)倍を基礎として計算したもの
(ハ) 丙種風圧荷重
甲種風圧荷重の\( \ 0.5 \ \)倍を基礎として計算したもの
(ニ) 着雪時風圧荷重
架渉線の周囲に比重\( \ 0.6 \ \)の雪が同心円状に付着した状態に対し、甲種風圧荷重の\( \ 0.3 \ \)倍を基礎として計算したもの

ロ 風圧荷重の適用区分は、58-2表によること。ただし、異常着雪時想定荷重の計算においては、同表にかかわらず着雪時風圧荷重を適用すること。

【解答】
(1)電線のたるみ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.電線のたるみの公式」の通りです。
・たるみの公式\( \ \displaystyle D=\frac {wS^{2}}{8T} \ \)を覚えていれば難なく解けるかと思います。
(試験センター解答例)
電線のたるみは近似的には,電線の単位長さ当たりの荷重に比例し,径間長の二乗に比例する。また,張力に反比例する。
(2)電線荷重
(ポイント)
・電気設備の技術基準の解釈第58条の通りです。
・試験センター解答はかなり抽象的な内容ですが,58-2表に沿ってもう少し詳しく記載しても良いかと思います。
(試験センター解答例)
電線にかかる荷重は,夏季においては電線の自重によるものと風圧荷重を考慮する。冬季においてはこれらに加えて氷雪荷重,氷雪が付着したときの風圧荷重を考慮する。
(3)電線荷重
(ポイント)
・ワンポイント解説「3.電線の長さと温度変化の関係」の通りです。
・たるみの公式\( \ \displaystyle D=\frac {wS^{2}}{8T} \ \)より,たるみと張力は反比例の関係があるので,夏季にたるみすぎず冬季に引っ張りすぎない適切な張力にする必要がります。
(試験センター解答例)
電線は温度によって伸びるため,たるみが大きくなる夏季において最低地上高を確保する必要がある。夏季にたるみを小さく選びすぎると冬季の張力が大きくなって断線の恐れが生じる。